S級冒険者の子どもが進む道

干支猫

文字の大きさ
178 / 724
帝都訪問編

第百七十七話 木箱

しおりを挟む

「あっ、これかわいー」
「ほんとだね」

ニーナが手に持ったのは手の平に納まる程度の小さな木箱。
木箱の外には手彫りで掘った様子の模様が描かれていた。

ラウルの帰りを待つ間、ヨハンとニーナは街の外に並んでいる雑貨屋を見て回っている。
ロブレンは、せっかく時間ができたのなら帝国の特産物を自分の目で視察してくると意気込んでどこかへ行っていた。

「あれ?これなに?」

ニーナは木箱を横から見ながら不思議そうにする。

「もしかして、開くんじゃないかな?」

その木箱は簡易な作りの木箱。
しかし、中に物を入れるにしては容量が小さ過ぎる。

「それはメトーゼから流れてきた」

店主が話すのは南方の国、メトーゼ共和国。
獣人と人間が共存しているという一風変わった国と聞いていた。

「へぇ。開けてみてもいいですか?」
「かまわないよ」
「何が入ってるのかなぁ」

ニヤニヤとしている雑貨屋の店主に疑問を抱くが、ニーナが覗き込むようにそっと木箱を開けてみる。

「あれ?これって……」

中には緑色の小さな石が入っていた。
未だにニヤニヤとしている店主

「これは……魔石ですよね?」
「ああ」

中に入っていたのだが魔石だということはわかる。
ただ、どんな効果を発揮するのかがわからない。

「あんた魔法は使えるかい?」
「まぁ、一応」
「ならその魔石に魔力を流してみな」

店主は魔石を指差した。

「(魔力を流すと何が起きるんだろう?)」

店主の言葉の意味がわからないのだが、ニーナが持っている木箱に手をかざし、言われるがままに魔石に魔力を流し込んでみる。

途端に魔石が仄かに輝きを放った。
同時に、小さな音色が響く。

「へぇ」
「きれーい」

魔石から発せられる音色は綺麗な音。
それほど複雑な音階ではなく、そして小さな音の割にどこか透き通る音。

数秒の時間をおいて魔石が輝きを失い始めると同時に音も同じように消えていった。

「これ、なんていう魔石なんですか?」
「それはメロディストーンといってな。詳しいことは知らないが、細工ができる魔導士によって特殊な加工がされているんだとよ」

魔石の用途は様々。
ヨハンが飛竜討伐に用いた様に魔力増強させるものから自発的に発光する魔灯石にこういった音を響かせる魔石があるのだと。他にも魔物を寄せ付けない結界石のような魔石などもある。

「とは言ってもそれは大きさからしても所詮娯楽程度のものだし、魔力を流し込まなければ使えねぇ。まぁつまるところ要は玩具だな」
「そうなんですね」
「お兄ちゃん、あたしこれ欲しいっ!」

ニーナはキラキラとした眼差しで見て来た。

「別にそれぐらいなら買ってもそんなに荷物にならないからいいよ」

旅を暇そうにしているニーナの暇潰しにでもなるのならと考える。

「いくらですか?」
「銅貨三枚だな」

一食程度の金額なら高くもない。

「わかりました」
「やった!ありがと!」

小銭袋から店主に銅貨を支払うと、ニーナが腕に抱き着いて来た。

「まいどあり。良い兄ちゃんだな。じゃあせっかくだ。こんなのもどうだ?」
「えっ?」

店主は後ろ向いてガサゴソと触り出して、手の平に乗せたのは赤と青で蝶の羽を象った髪飾り。

「これも可愛いっ!」
「なら優しいお兄ちゃんに買ってもらいな」

ニヤッとした表情の店主と目が合う。

「……商売上手ですね」

これだけニーナに顔を寄せられ目を輝かせて無言の圧力を掛けられると買わざるを得ない。
小さく溜め息を吐きながら追加で銅貨を二枚店主に支払った。

「フンフフーン」

街中を歩くニーナはすこぶる上機嫌。
早速髪飾りを着けて鼻唄混じりに歩いている。

「それ、似合ってるね」
「えへへ」

買って良かったと素直に思えるぐらい髪飾りはニーナにしっかりと似合っていた。

「(それにしても、ニーナって歌が上手いな)」

褒めたことでさらに上機嫌になるニーナ。
横を歩くニーナが口ずさむ音域が妙に心地良い。

「こんなところにいたのか」
「あっ、ラウルさんにロブレンさん」

歩き続けていると、前方からラウルが姿を見せる。隣にはロブレンもいた。

「もういいんですか?」
「ああ。大体のことはわかった。というか何もわからなかった、という方がより正確だがな」

ラウルのその様子からして、領主のところからは良い話が聞けなかった様子。

「そっちはどうだ?」
「僕たちも一通り見て楽しませてもらえました」

雑貨店の後は、肉巻き棒などを口にしているニーナは既に満足感に満たされている。

「ならそろそろ行くぞ」
「では早速出発しますね。この時間だと今から出発すれば次の町までいけますので」

そうして関所街ドルイドを後にした。


「それで、さっきの話ですけど、あんまり良い話が聞けなかったみたいですけど」
「そうだな。正直なところ領主もだいぶ困っていた」

わざわざ領主のところに話を聞きに行ったにも関わらず、聞けた話はロブレンが関所で衛兵から聞いた話と大差ない。

村の壊滅の原因については帝国を挙げて捜査中なのだという。

「……そうですか」
「ただ、ただの野盗とも魔物とも思えないというのが俺の見解だ」

思案気に口を開くラウル。

「つまり、何かしらの特異な状況がそれを起こしているってことですね?」
「ああ」

神妙な面持ちを見せるのだが、現状持ち得る情報では回答を導き出せない。

「(小規模な村を壊滅させる特異な状況? 一体何が起きているんだろう?)」

考えてみるのだが、皆目見当もつかない。

「どうやら天気が悪くなってきましたね」

手綱を引くロブレンの声に同調する様に遠くの空を見た。

「ほんとですね」

いつの間にかどんよりとした曇り空になっている。

「あれ?」

曇り空の中に違和感を覚えた。

「どうした?」
「いえ、あれって……」

曇り空の中に黒煙が見える。
黒煙を指差すと、ラウルも目を見開いた。

「おいロブレン!」
「へっ?」

突然大きな声を出されたことに驚き困惑したロブレンは慌てて馬の手綱を引いて馬車を停める。

「どうしたんすか、いきなり大声出して」
「あの煙の方に向かってくれ!」
「そんなことすれば今日中に次の町に着かなくなりますよ?」
「かまわない!いいから急げッ!」
「は、はいっ!」

有無を言わせないラウルの言葉にロブレンは進行方向を黒煙の方に切り替えた。

「あれ?依頼人は俺だよな?」

手綱を引きながらどちらが主導権を握っているのかわからなくなる。

「……あそこは確か小さいが村があったはずだが?」
「小さな村って……もしかして」
「ああ。嫌な予感がする」

その言葉の差す意味。

「(…………そんなまさか)」

それが予想通りの結果になっていないことを祈った。

しおりを挟む
感想 35

あなたにおすすめの小説

転落貴族〜千年に1人の逸材と言われた男が最底辺から成り上がる〜

ぽいづん
ファンタジー
ガレオン帝国の名門貴族ノーベル家の長男にして、容姿端麗、眉目秀麗、剣術は向かうところ敵なし。 アレクシア・ノーベル、人は彼のことを千年に1人の逸材と評し、第3皇女クレアとの婚約も決まり、順風満帆な日々だった 騎士学校の最後の剣術大会、彼は賭けに負け、1年間の期限付きで、辺境の国、ザナビル王国の最底辺ギルドのヘブンズワークスに入らざるおえなくなる。 今までの貴族の生活と正反対の日々を過ごし1年が経った。 しかし、この賭けは罠であった。 アレクシアは、生涯をこのギルドで過ごさなければいけないということを知る。 賭けが罠であり、仕組まれたものと知ったアレクシアは黒幕が誰か確信を得る。 アレクシアは最底辺からの成り上がりを決意し、復讐を誓うのであった。 小説家になろうにも投稿しています。 なろう版改稿中です。改稿終了後こちらも改稿します。

うっかり女神さまからもらった『レベル9999』は使い切れないので、『譲渡』スキルで仲間を強化して最強パーティーを作ることにしました

akairo
ファンタジー
「ごめんなさい!貴方が死んだのは私のクシャミのせいなんです!」 帰宅途中に工事現場の足台が直撃して死んだ、早良 悠月(さわら ゆずき)が目覚めた目の前には女神さまが土下座待機をして待っていた。 謝る女神さまの手によって『ユズキ』として転生することになったが、その直後またもや女神さまの手違いによって、『レベル9999』と職業『譲渡士』という謎の職業を付与されてしまう。 しかし、女神さまの世界の最大レベルは99。 勇者や魔王よりも強いレベルのまま転生することになったユズキの、使い切ることもできないレベルの使い道は仲間に譲渡することだった──!? 転生先で出会ったエルフと魔族の少女。スローライフを掲げるユズキだったが、二人と共に世界を回ることで国を巻き込む争いへと巻き込まれていく。 ※9月16日  タイトル変更致しました。 前タイトルは『レベル9999は転生した世界で使い切れないので、仲間にあげることにしました』になります。 仲間を強くして無双していく話です。 『小説家になろう』様でも公開しています。

~唯一王の成り上がり~ 外れスキル「精霊王」の俺、パーティーを首になった瞬間スキルが開花、Sランク冒険者へと成り上がり、英雄となる

静内燕
ファンタジー
【カクヨムコン最終選考進出】 【複数サイトでランキング入り】 追放された主人公フライがその能力を覚醒させ、成り上がりっていく物語 主人公フライ。 仲間たちがスキルを開花させ、パーティーがSランクまで昇華していく中、彼が与えられたスキルは「精霊王」という伝説上の生き物にしか対象にできない使用用途が限られた外れスキルだった。 フライはダンジョンの案内役や、料理、周囲の加護、荷物持ちなど、あらゆる雑用を喜んでこなしていた。 外れスキルの自分でも、仲間達の役に立てるからと。 しかしその奮闘ぶりは、恵まれたスキルを持つ仲間たちからは認められず、毎日のように不当な扱いを受ける日々。 そしてとうとうダンジョンの中でパーティーからの追放を宣告されてしまう。 「お前みたいなゴミの変わりはいくらでもいる」 最後のクエストのダンジョンの主は、今までと比較にならないほど強く、歯が立たない敵だった。 仲間たちは我先に逃亡、残ったのはフライ一人だけ。 そこでダンジョンの主は告げる、あなたのスキルを待っていた。と──。 そして不遇だったスキルがようやく開花し、最強の冒険者へとのし上がっていく。 一方、裏方で支えていたフライがいなくなったパーティーたちが没落していく物語。 イラスト 卯月凪沙様より

神様に与えられたのは≪ゴミ≫スキル。家の恥だと勘当されたけど、ゴミなら何でも再生出来て自由に使えて……ゴミ扱いされてた古代兵器に懐かれました

向原 行人
ファンタジー
 僕、カーティスは由緒正しき賢者の家系に生まれたんだけど、十六歳のスキル授与の儀で授かったスキルは、まさかのゴミスキルだった。  実の父から家の恥だと言われて勘当され、行く当ても無く、着いた先はゴミだらけの古代遺跡。  そこで打ち捨てられていたゴミが話し掛けてきて、自分は古代兵器で、助けて欲しいと言ってきた。  なるほど。僕が得たのはゴミと意思疎通が出来るスキルなんだ……って、嬉しくないっ!  そんな事を思いながらも、話し込んでしまったし、連れて行ってあげる事に。  だけど、僕はただゴミに協力しているだけなのに、どこかの国の騎士に襲われたり、変な魔法使いに絡まれたり、僕を家から追い出した父や弟が現れたり。  どうして皆、ゴミが欲しいの!? ……って、あれ? いつの間にかゴミスキルが成長して、ゴミの修理が出来る様になっていた。  一先ず、いつも一緒に居るゴミを修理してあげたら、見知らぬ銀髪美少女が居て……って、どういう事!? え、こっちが本当の姿なの!? ……とりあえず服を着てっ!  僕を命の恩人だって言うのはさておき、ご奉仕するっていうのはどういう事……え!? ちょっと待って! それくらい自分で出来るからっ!  それから、銀髪美少女の元仲間だという古代兵器と呼ばれる美少女たちに狙われ、返り討ちにして、可哀想だから修理してあげたら……僕についてくるって!?  待って! 僕に奉仕する順番でケンカするとか、訳が分かんないよっ! ※第○話:主人公視点  挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点  となります。

老衰で死んだ僕は異世界に転生して仲間を探す旅に出ます。最初の武器は木の棒ですか!? 絶対にあきらめない心で剣と魔法を使いこなします!

菊池 快晴
ファンタジー
10代という若さで老衰により病気で死んでしまった主人公アイレは 「まだ、死にたくない」という願いの通り異世界転生に成功する。  同じ病気で亡くなった親友のヴェルネルとレムリもこの世界いるはずだと アイレは二人を探す旅に出るが、すぐに魔物に襲われてしまう  最初の武器は木の棒!?  そして謎の人物によって明かされるヴェネルとレムリの転生の真実。  何度も心が折れそうになりながらも、アイレは剣と魔法を使いこなしながら 困難に立ち向かっていく。  チート、ハーレムなしの王道ファンタジー物語!  異世界転生は2話目です! キャラクタ―の魅力を味わってもらえると嬉しいです。  話の終わりのヒキを重要視しているので、そこを注目して下さい! ****** 完結まで必ず続けます ***** ****** 毎日更新もします *****  他サイトへ重複投稿しています!

レベルが上がらない【無駄骨】スキルのせいで両親に殺されかけたむっつりスケベがスキルを奪って世界を救う話。

玉ねぎサーモン
ファンタジー
絶望スキル× 害悪スキル=限界突破のユニークスキル…!? 成長できない主人公と存在するだけで周りを傷つける美少女が出会ったら、激レアユニークスキルに! 故郷を魔王に滅ぼされたむっつりスケベな主人公。 この世界ではおよそ1000人に1人がスキルを覚醒する。 持てるスキルは人によって決まっており、1つから最大5つまで。 主人公のロックは世界最高5つのスキルを持てるため将来を期待されたが、覚醒したのはハズレスキルばかり。レベルアップ時のステータス上昇値が半減する「成長抑制」を覚えたかと思えば、その次には経験値が一切入らなくなる「無駄骨」…。 期待を裏切ったため育ての親に殺されかける。 その後最高レア度のユニークスキル「スキルスナッチ」スキルを覚醒。 仲間と出会いさらに強力なユニークスキルを手に入れて世界最強へ…!? 美少女たちと冒険する主人公は、仇をとり、故郷を取り戻すことができるのか。 この作品はカクヨム・小説家になろう・Youtubeにも掲載しています。

攻撃魔法を使えないヒーラーの俺が、回復魔法で最強でした。 -俺は何度でも救うとそう決めた-【[完]】

水無月いい人(minazuki)
ファンタジー
【HOTランキング一位獲得作品】 【一次選考通過作品】 ---  とある剣と魔法の世界で、  ある男女の間に赤ん坊が生まれた。  名をアスフィ・シーネット。  才能が無ければ魔法が使えない、そんな世界で彼は運良く魔法の才能を持って産まれた。  だが、使用できるのは攻撃魔法ではなく回復魔法のみだった。  攻撃魔法を一切使えない彼は、冒険者達からも距離を置かれていた。 彼は誓う、俺は回復魔法で最強になると。  --------- もし気に入っていただけたら、ブクマや評価、感想をいただけると大変励みになります! #ヒラ俺 この度ついに完結しました。 1年以上書き続けた作品です。 途中迷走してました……。 今までありがとうございました! --- 追記:2025/09/20 再編、あるいは続編を書くか迷ってます。 もし気になる方は、 コメント頂けるとするかもしれないです。

外れスキル?だが最強だ ~不人気な土属性でも地球の知識で無双する~

海道一人
ファンタジー
俺は地球という異世界に転移し、六年後に元の世界へと戻ってきた。 地球は魔法が使えないかわりに科学という知識が発展していた。 俺が元の世界に戻ってきた時に身につけた特殊スキルはよりにもよって一番不人気の土属性だった。 だけど悔しくはない。 何故なら地球にいた六年間の間に身につけた知識がある。 そしてあらゆる物質を操れる土属性こそが最強だと知っているからだ。 ひょんなことから小さな村を襲ってきた山賊を土属性の力と地球の知識で討伐した俺はフィルド王国の調査隊長をしているアマーリアという女騎士と知り合うことになった。 アマーリアの協力もあってフィルド王国の首都ゴルドで暮らせるようになった俺は王国の陰で蠢く陰謀に巻き込まれていく。 フィルド王国を守るための俺の戦いが始まろうとしていた。 ※この小説は小説家になろうとカクヨムにも投稿しています

処理中です...