S級冒険者の子どもが進む道

干支猫

文字の大きさ
457 / 724
学年末試験 二学年編

第四百五十六話 飛来する砲撃

しおりを挟む

「ふむ。これは避けきれない」

キリュウが上げたのは最低限の戦果。しかしそれが最大の戦果でもある。
シーサーペントの魔力解放の要を的確に見抜いただけでなくそれを成し遂げただけでも十分な功労。

「仕方ない」

凄まじい勢いでキリュウの眼前へと迫る尾。空中では身を捻ることができず、出来ることといえば防御姿勢を取るのみ。

「がっ!」
「姉さんっ!」

テレーゼが大きく声を上げる中、尾によって激しく叩きつけられたキリュウは水面へと身体を打ち付ける。

「間に、合った!」

水面に向け大きく手をかざしているサナ。

「ぐぅ……」

モニカが攻撃を受けた時と同様、サナの魔力によって水面は綿のように柔らかくなっていた。ここまで連続した魔法使用にはまだ不慣れだったのだが、それでもサナはなんとかキリュウを受け止めることに成功している。

「くぅ、これは効いた」

小さく頭を振り、混迷しそうになる意識を振り払った。

「まったく」

抱く感情は我ながら情けないの一言。決死の一撃とは程遠いながらもこれだけしかできない。ここに至る迄あの怪物とこれだけの死闘を演じてきている学生達の実力の高さには素直に称賛せざるを得ない。
ただしそれよりも、アーサー・ランスレイ、旧知の間柄の彼がこの場を目にしていれば心配するだろうか。それとも――。

「いや」

恐らく笑うだろうなと、どこか確信的に断定できる。

「ようやく慌てだしたか」
「キシャアア」

そうしてキリュウが視線の先に捉えるのは、これまで淡々と殲滅せしめようと攻撃を繰り出していたシーサーペントが初めて見せる怒りの感情。

「キシュウウウッ」

長い舌をシュルリと回しながら即座に反応を示すのは、その場に於いてキリュウを守った存在、サナをジロリと見る。それどころか、先程までの戦闘に於いて、要所要所で補助魔法を使っているサナがここに於いて最も邪魔な存在なのだと認識した。

「え?」

不意にシーサーペントと目が合うサナは悪寒が走る。

「しまったっ!」

これからシーサーペントが繰り出す攻撃を悟ったキリュウはすぐに起き上がりサナの下に舞い戻る様にして駆け出した。シーサーペントの狙いがサナへと代わったのだと。

「テレーゼッ!」

ガパッと大きく口を開くと、直後に放たれるのは高出力の魔力弾。

「ぐうっ!」

姉の声に応えるかのようにして再びテレーゼがサナの前に立ち、受け止めるようにして槍を構える。ドンっと激しい音を響かせながらその魔力弾が衝突した。

「がはっ!」

後方、サナの後ろまで吹き飛ばされる。

「キシャアアア!」

しかしテレーゼが防ぎきった中、連続して魔力弾が放たれようとしていた。

「うぐっ……」

必死に立ち上がろうとするのだが、次の一撃を防ぎきる体力はもう残されていない。エレナ達もその攻撃を阻止しようと動き始めるのだが、それよりもシーサーペントが魔力弾を放つ方が早い。

「【与えるべき寵愛アフェクション】」

直後、その場に響く小さな声。

「な、なんだこれは……――」

テレーゼは突如として湧き上がって来る力がまるで信じられない。自分の力でありながらも自分の力ではない様に感じられるどこか浮遊感が漂う妙な感覚。

「――……だがッ!」

これであれば間違いなく耐えきれる。
ガパッと口を大きく開けるシーサーペントから放たれるのは巨大な砲弾と化した二度目の魔力砲。

「う、おおおおおおおおッ!」

すぐさま立ち上がるなり駆け出し、背後にサナとユーリを背負いながら、両腕を大きく広げて立ち塞がった。

「こ、こ、ここでやらねばいつやるというのだっ!」

ガシッと抱き込み、その魔力砲を防ぎきるために渾身の力を込める。

「は……はぁ、はあああああああっ!」

両腕を交差させる刹那の瞬間、パンッと鋭い破裂音を辺り一帯に響かせた。

「はぁ、はぁ、や、やった…………」

確実に以前の自分では魔力砲をかき消すどころか背後のサナ達を守ることも適わずもろともに消滅して死していただろう。

「あ、とは、頼んだ」

満足気な笑みを浮かべ、バタンと前のめりにテレーゼは倒れる。

「テレーゼさんっ!?」

慌ててしゃがみ込むサナがテレーゼの身体を揺するのだが、すぐさま苦悶の表情を浮かべるテレーゼ。

「し、しんぱいするな。だいじょうぶだ。いきている」

細かく息を吐きながら小さく笑みを浮かべた。

「よかった」

ホッと安堵の息を吐くサナ。

「だ、だが、もう何も出来はしない。だからあとは、たのむ…………――」

そこで意識を手放すテレーゼ。スッと目を瞑ると気を失う。

「……任せて」

これまで何度となく守ってもらったサナ。これだけの力を得ながらも未だに守ってもらってしまっている。

「あいつは私が倒すわ」

だがこれまでと明らかに違う感覚に襲われていた。絶対的な意志を持ち目の前の怪物を倒すのだという決意を宿す。

「テレーゼさん。この試験が終わればいっぱいお話ししましょうね」

ニコッと笑みを向け、サナはすくっと立ち上がった。


「――……まったく。無茶をする人達ばかりですわね」

その様子を遠くから見るマリン。カニエスが倒れてくれていたおかげで与えるべき寵愛をテレーゼに向けて行使することができた。

「ですが、これで今のところは全滅を免れたようね」

不意の乱入者によるものとはいえ、マリンがこれから成そうとしていたこと、シーサーペントの背びれを破壊するということを見事にやり遂げてくれている。感謝すると同時に、もはやもう広範囲攻撃がないのであればこれから先の展望に対して思考を巡らせる負担は大きく軽減した。

「キシャアアアアアアッ!」
「え?」

直後、目を疑う光景が起きる。
立て続けに受ける攻撃と邪魔な小虫達。結果、怒り狂ったシーサーペントが取った行動。

「あいつ、どこ狙ってやがんだ?」

レインの言葉の通り、それは狙いを定めず、無作為に繰り出された破壊行動であり、シーサーペントの正面、半円側に向けて繰り出された細い線状の攻撃だった。

精度が不十分であったのだが、運悪くもその細い魔力弾がマリンの下へと飛来する。
明らかにこれまでよりは威力は落ちており、闘技場全体を巻き込んだ魔力解放程ではない。距離があったことで通常であればなんとか避けきれる速度のはずだったのだが、【与えるべき寵愛】の使用による反動で身動きが取れないでいた。

「あっ……――」

避けきれない。
本能が理解している。例え殺傷能力がこれまでより低い攻撃であったとしても、自分の防御力であれば当たり所が悪ければ死んでしまう。動きたくとも動けない。不意に訪れた事態に思わず頭の中が真っ白になってしまった。

「ぐはっ!」

ゆっくりと流れる刻の中で、視界を遮る人影。
ドンっと付き押された。その影の中に見える慌てた表情。

「レインッ!?」

ドサッと倒れながらも目線だけは逸らさない。自分の不甲斐なさによって目の前で倒れてしまっている人間がいる。

しおりを挟む
感想 35

あなたにおすすめの小説

転落貴族〜千年に1人の逸材と言われた男が最底辺から成り上がる〜

ぽいづん
ファンタジー
ガレオン帝国の名門貴族ノーベル家の長男にして、容姿端麗、眉目秀麗、剣術は向かうところ敵なし。 アレクシア・ノーベル、人は彼のことを千年に1人の逸材と評し、第3皇女クレアとの婚約も決まり、順風満帆な日々だった 騎士学校の最後の剣術大会、彼は賭けに負け、1年間の期限付きで、辺境の国、ザナビル王国の最底辺ギルドのヘブンズワークスに入らざるおえなくなる。 今までの貴族の生活と正反対の日々を過ごし1年が経った。 しかし、この賭けは罠であった。 アレクシアは、生涯をこのギルドで過ごさなければいけないということを知る。 賭けが罠であり、仕組まれたものと知ったアレクシアは黒幕が誰か確信を得る。 アレクシアは最底辺からの成り上がりを決意し、復讐を誓うのであった。 小説家になろうにも投稿しています。 なろう版改稿中です。改稿終了後こちらも改稿します。

うっかり女神さまからもらった『レベル9999』は使い切れないので、『譲渡』スキルで仲間を強化して最強パーティーを作ることにしました

akairo
ファンタジー
「ごめんなさい!貴方が死んだのは私のクシャミのせいなんです!」 帰宅途中に工事現場の足台が直撃して死んだ、早良 悠月(さわら ゆずき)が目覚めた目の前には女神さまが土下座待機をして待っていた。 謝る女神さまの手によって『ユズキ』として転生することになったが、その直後またもや女神さまの手違いによって、『レベル9999』と職業『譲渡士』という謎の職業を付与されてしまう。 しかし、女神さまの世界の最大レベルは99。 勇者や魔王よりも強いレベルのまま転生することになったユズキの、使い切ることもできないレベルの使い道は仲間に譲渡することだった──!? 転生先で出会ったエルフと魔族の少女。スローライフを掲げるユズキだったが、二人と共に世界を回ることで国を巻き込む争いへと巻き込まれていく。 ※9月16日  タイトル変更致しました。 前タイトルは『レベル9999は転生した世界で使い切れないので、仲間にあげることにしました』になります。 仲間を強くして無双していく話です。 『小説家になろう』様でも公開しています。

~唯一王の成り上がり~ 外れスキル「精霊王」の俺、パーティーを首になった瞬間スキルが開花、Sランク冒険者へと成り上がり、英雄となる

静内燕
ファンタジー
【カクヨムコン最終選考進出】 【複数サイトでランキング入り】 追放された主人公フライがその能力を覚醒させ、成り上がりっていく物語 主人公フライ。 仲間たちがスキルを開花させ、パーティーがSランクまで昇華していく中、彼が与えられたスキルは「精霊王」という伝説上の生き物にしか対象にできない使用用途が限られた外れスキルだった。 フライはダンジョンの案内役や、料理、周囲の加護、荷物持ちなど、あらゆる雑用を喜んでこなしていた。 外れスキルの自分でも、仲間達の役に立てるからと。 しかしその奮闘ぶりは、恵まれたスキルを持つ仲間たちからは認められず、毎日のように不当な扱いを受ける日々。 そしてとうとうダンジョンの中でパーティーからの追放を宣告されてしまう。 「お前みたいなゴミの変わりはいくらでもいる」 最後のクエストのダンジョンの主は、今までと比較にならないほど強く、歯が立たない敵だった。 仲間たちは我先に逃亡、残ったのはフライ一人だけ。 そこでダンジョンの主は告げる、あなたのスキルを待っていた。と──。 そして不遇だったスキルがようやく開花し、最強の冒険者へとのし上がっていく。 一方、裏方で支えていたフライがいなくなったパーティーたちが没落していく物語。 イラスト 卯月凪沙様より

神様に与えられたのは≪ゴミ≫スキル。家の恥だと勘当されたけど、ゴミなら何でも再生出来て自由に使えて……ゴミ扱いされてた古代兵器に懐かれました

向原 行人
ファンタジー
 僕、カーティスは由緒正しき賢者の家系に生まれたんだけど、十六歳のスキル授与の儀で授かったスキルは、まさかのゴミスキルだった。  実の父から家の恥だと言われて勘当され、行く当ても無く、着いた先はゴミだらけの古代遺跡。  そこで打ち捨てられていたゴミが話し掛けてきて、自分は古代兵器で、助けて欲しいと言ってきた。  なるほど。僕が得たのはゴミと意思疎通が出来るスキルなんだ……って、嬉しくないっ!  そんな事を思いながらも、話し込んでしまったし、連れて行ってあげる事に。  だけど、僕はただゴミに協力しているだけなのに、どこかの国の騎士に襲われたり、変な魔法使いに絡まれたり、僕を家から追い出した父や弟が現れたり。  どうして皆、ゴミが欲しいの!? ……って、あれ? いつの間にかゴミスキルが成長して、ゴミの修理が出来る様になっていた。  一先ず、いつも一緒に居るゴミを修理してあげたら、見知らぬ銀髪美少女が居て……って、どういう事!? え、こっちが本当の姿なの!? ……とりあえず服を着てっ!  僕を命の恩人だって言うのはさておき、ご奉仕するっていうのはどういう事……え!? ちょっと待って! それくらい自分で出来るからっ!  それから、銀髪美少女の元仲間だという古代兵器と呼ばれる美少女たちに狙われ、返り討ちにして、可哀想だから修理してあげたら……僕についてくるって!?  待って! 僕に奉仕する順番でケンカするとか、訳が分かんないよっ! ※第○話:主人公視点  挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点  となります。

老衰で死んだ僕は異世界に転生して仲間を探す旅に出ます。最初の武器は木の棒ですか!? 絶対にあきらめない心で剣と魔法を使いこなします!

菊池 快晴
ファンタジー
10代という若さで老衰により病気で死んでしまった主人公アイレは 「まだ、死にたくない」という願いの通り異世界転生に成功する。  同じ病気で亡くなった親友のヴェルネルとレムリもこの世界いるはずだと アイレは二人を探す旅に出るが、すぐに魔物に襲われてしまう  最初の武器は木の棒!?  そして謎の人物によって明かされるヴェネルとレムリの転生の真実。  何度も心が折れそうになりながらも、アイレは剣と魔法を使いこなしながら 困難に立ち向かっていく。  チート、ハーレムなしの王道ファンタジー物語!  異世界転生は2話目です! キャラクタ―の魅力を味わってもらえると嬉しいです。  話の終わりのヒキを重要視しているので、そこを注目して下さい! ****** 完結まで必ず続けます ***** ****** 毎日更新もします *****  他サイトへ重複投稿しています!

レベルが上がらない【無駄骨】スキルのせいで両親に殺されかけたむっつりスケベがスキルを奪って世界を救う話。

玉ねぎサーモン
ファンタジー
絶望スキル× 害悪スキル=限界突破のユニークスキル…!? 成長できない主人公と存在するだけで周りを傷つける美少女が出会ったら、激レアユニークスキルに! 故郷を魔王に滅ぼされたむっつりスケベな主人公。 この世界ではおよそ1000人に1人がスキルを覚醒する。 持てるスキルは人によって決まっており、1つから最大5つまで。 主人公のロックは世界最高5つのスキルを持てるため将来を期待されたが、覚醒したのはハズレスキルばかり。レベルアップ時のステータス上昇値が半減する「成長抑制」を覚えたかと思えば、その次には経験値が一切入らなくなる「無駄骨」…。 期待を裏切ったため育ての親に殺されかける。 その後最高レア度のユニークスキル「スキルスナッチ」スキルを覚醒。 仲間と出会いさらに強力なユニークスキルを手に入れて世界最強へ…!? 美少女たちと冒険する主人公は、仇をとり、故郷を取り戻すことができるのか。 この作品はカクヨム・小説家になろう・Youtubeにも掲載しています。

攻撃魔法を使えないヒーラーの俺が、回復魔法で最強でした。 -俺は何度でも救うとそう決めた-【[完]】

水無月いい人(minazuki)
ファンタジー
【HOTランキング一位獲得作品】 【一次選考通過作品】 ---  とある剣と魔法の世界で、  ある男女の間に赤ん坊が生まれた。  名をアスフィ・シーネット。  才能が無ければ魔法が使えない、そんな世界で彼は運良く魔法の才能を持って産まれた。  だが、使用できるのは攻撃魔法ではなく回復魔法のみだった。  攻撃魔法を一切使えない彼は、冒険者達からも距離を置かれていた。 彼は誓う、俺は回復魔法で最強になると。  --------- もし気に入っていただけたら、ブクマや評価、感想をいただけると大変励みになります! #ヒラ俺 この度ついに完結しました。 1年以上書き続けた作品です。 途中迷走してました……。 今までありがとうございました! --- 追記:2025/09/20 再編、あるいは続編を書くか迷ってます。 もし気になる方は、 コメント頂けるとするかもしれないです。

外れスキル?だが最強だ ~不人気な土属性でも地球の知識で無双する~

海道一人
ファンタジー
俺は地球という異世界に転移し、六年後に元の世界へと戻ってきた。 地球は魔法が使えないかわりに科学という知識が発展していた。 俺が元の世界に戻ってきた時に身につけた特殊スキルはよりにもよって一番不人気の土属性だった。 だけど悔しくはない。 何故なら地球にいた六年間の間に身につけた知識がある。 そしてあらゆる物質を操れる土属性こそが最強だと知っているからだ。 ひょんなことから小さな村を襲ってきた山賊を土属性の力と地球の知識で討伐した俺はフィルド王国の調査隊長をしているアマーリアという女騎士と知り合うことになった。 アマーリアの協力もあってフィルド王国の首都ゴルドで暮らせるようになった俺は王国の陰で蠢く陰謀に巻き込まれていく。 フィルド王国を守るための俺の戦いが始まろうとしていた。 ※この小説は小説家になろうとカクヨムにも投稿しています

処理中です...