セフレから恋人になる方法

ゆもたに

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1章

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 翌朝。隣で気持ち良さそうに素っ裸で眠るイジュンを叩き起こし、床に散らばった服を片付けさせた。もちろん俺の服も。
 自分はというと歯も磨かず、まずは冷蔵庫を開けた。冷やしておいたウェルカムフルーツの葡萄を取り出す。三日経った今では心なしか皮が乾いてるように見える。
 昨日はお尻には挿れなかったものの、あちこち触られてキスされてお互いの性器に触れ合って、三回も出した。コンサートでクタクタになるまで踊って歌ったあとにその回数は中々きつい。挿れてないのに、腰あたりが痛い気がする。
 手際よくベッドメイキングしてから散らばった服を綺麗に畳んでいる几帳面な男を眺めつつ、葡萄を一粒ちぎって口に放り込む。
 乾いた喉に葡萄はやや相性が悪い。皮が喉の奥のほうに張り付いて噎せかけた。
(うわ、その服今日も着るんだ……貸して欲しかったのに)
 俺の服は綺麗に畳んでベッドの上に置き、自分のは皺を伸ばしてからまた着たのを見て、今さら貸してとは言えずに諦める。

 端からみた俺たちの関係は、恋人と呼ばれるものに近いと思う。でも実際はそうじゃない。
 そもそも、俺たちがこんな乱れた関係になったのはこいつが原因だった。練習生の頃、限られた空間で毎日練習室と宿舎を往復するだけの生活を送っていて、とにかく欲が溜まっていたのだろう。
 当時ルームメイトだったイジュンは、いきなり俺のベッドのそばに立ち、「ウジナ、オナニーってしてる? いつした? セックスは?」と質問責めしてきた。
 それにノリで答えて、なぜかオナニーを見せることになって、そうやっているうちにいつの間にかこんな関係になっていた。
 自分で言うのも何だが、どうやら俺の顔がたまたまイジュンのタイプで、周りに女子がいない環境で、欲を発散するのにちょうどいい相手だったのだろう。
 男だし一番仲良いメンバーだからこそ俺は何も言えず、結局デビューしてからもずっとセフレのような曖昧な関係が続いている。

「今日は出かけんの?」

「うん」

「どこ行く」

 俺たち二人で出掛けるというのを前提とした言い方に、俺は首を掻いた。

「あー……っと、ゴルフしてくる」

「ゴルフ? 誰と」

「……ソジュナ」

「は? なんでアメリカに」

「番組の撮影で昨日からいるよ。ほら、俺らも前に出た番組」

「あっそ」

「ソジュナはこの前シングル出したばっかりだから、ちょうどタイミングが重なったんだ」

 気まずい空気を察知して誤魔化そうとした俺の言葉に、イジュンは返事をしなかった。相槌すら打たなかった。
 朝日が差し込む爽やかなホテルの部屋の空気が、途端に重くなった気がする。
 俺はこれが苦手だった。恋人じゃないのに、好きだと言われたこともないのに、なぜかこいつは俺が誰かと遊ぶと不機嫌になる。そしてその度に独占欲みたいなものをチラつかせてくる。
かといって「行くな」とは絶対に言わない。ただ機嫌が悪くなるだけ。
 所詮イジュンが一時的に抱いてる感情は、俺のことが好きだからとかではなく、セフレを取られたくない所有物欲のようなものなのだ。

「……お前は?」

「じゃあ、ソヌと飯でも行こうかな」

 出された名前に思わず口に含んだ葡萄を噛み潰す。ぶちり、ぎちり。皮の苦味と果実の甘みが舌の上に広がる。
 イジュンはいつもそうだ。俺とこんなにも淫らなことをしてるくせに、何かにつけてソヌの名前を出す。
(じゃあ……ってなんだよ)
 こうやって俺が誰かと遊ぶと知ったときは特に、他のメンバーとの仲の良さを見せつけてくる。相手はほとんどがソヌ。で、悔しいことに、まんまと嫉妬させられる。

「別にいいんじゃん。俺も行くしソジュナのとこ」

 昨日は俺にあんなことをしてきたくせに、何なんだ?
 機嫌が悪くなるくらいなら、その理由を言ってみろ。
 喉元まで出かかった文句を葡萄と一緒に噛み砕き、無理やり飲み込む。とにかく悔しい。
 イジュンが畳んでくれた服をひっ掴み洗面所に籠もった。
 鏡に映った、笑えないほど不貞腐れた顔。
 あいつはこんな顔でも「寝起きでも綺麗だ」といつも褒めてくれるけど、浮腫んでいて嫉妬にまみれた顔は到底いいものだとは思えない。
 ──こんなんじゃセフレ失格だ。

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