セフレから恋人になる方法

ゆもたに

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1章

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 ロサンゼルス公演の最終日、メンバー全員で反省会の意味も含めて飲むことになった。
 明日は帰国だからとホテルに近い個室の焼肉屋が選ばれ、二つのテーブルに分かれて座った。そこまではいい。通常通りだ。
 問題は──隣がイジュンであること。

「イジュナ、その皿取って」

 顔を見てお願いするも、まるで聞こえてないかのようにスルーされる。
 朝からずっとこの調子だった。公演中も全く絡みに来ないし、挨拶しても不機嫌丸出し。まるで子どもみたいな態度に釣られてこっちの気分も下がる。
 ソジュンが考えた作戦を実行する時が思いの外すぐにやってきたというのに、こんな状態ではあまり気乗りしない。

「おい……」

「ん? これ?」

 隣の男に言ったのに、向かいに座っているユンヒョンが笑顔でこちらに皿を渡してくれた。
 
「あ~、ヒョンありがとう」

「お前らまた喧嘩したの?」

「いや……勝手にイジュンが怒ってるだけです」

「は? 違うし」

「じゃあ何でさっきから無視するんだよ」

「ウジンが連絡返してくれてないからじゃん。昨日からずっと」

 ぶすっとした顔で睨まれる。
 昨日は結局、夜遅くまでソジュンと一緒にいて、帰ったのはみんなが寝静まった頃だった。
 イジュンから何度も電話やメッセージが来ていたが全て無視し、ホテルの部屋にはチェーンをかけて籠もった。
 そこまで徹底して避けた理由はただ一つ。また調子の良い言葉で丸め込まれて雰囲気に流されてしまうから。

「ソジュナと遊んでて」

「それでも連絡くらい返せるだろ? 帰ってくるの待ってたのに」

「別に、待ってほしいとか言ってない」
 
 ──なんで俺の連絡や帰りを待ってるんだよ?
 お前は俺のなんなんだ。彼氏か?
 ついイラッときたが、ここは我慢だ。ソジュンと立てた計画を実行できなくなる。

「はいはい、痴話喧嘩はもうやめような。それよりイジュナ~今日の反省点は?」

 ユンヒョンがイジュンに鋭い目を向けた。それに姿勢が伸びたのは、隣にいる俺も例外ではない。

「あ……」

「振り付け。心当たりあるよな?」 

「しかも三回もミスってた。俺見たよ」

 イジュンを責めるチャンスだと思って横から口を挟んだのが悪かったのか、今度はこちらに鋭い目が向けられた。

「ウジナも移動のとき間違えたよな?」

「……間違えました」

「お前ら喧嘩じゃなくてさ、二人で仲良く練習でもしたらいいじゃん」

「はーい……」

 怒ったユンヒョンは誰よりも怖い。
 反省している姿を見せるために俯くと、テーブルの下で横から足を蹴られた。たまだスニーカーだったからよかったものの、かなり強い力で蹴られた気がする。
(こいつ、加減せずにやったな)
 やり返すために太腿をぎゅううっと抓った。俯いたまま横目で顔を見る。これでどうだ。

「いっ!」

 イジュンの眉間に思いきり皺が寄ったのが面白くて、笑いがこみ上げてくる。指先で抓ったから、かなり痛かったらしい。

「イジュナ、話聞いてる?」

「き、聞いてる。練習します」

「俺も頑張るね、ユンヒョン」

「ウジンは偉いなあ。もっと肉焼いてあげよう。向こうから取ってくるよ」

「ありがとうございます!」

 隣から恨めしそうに睨まれているのが、見なくても分かった。また吹き出しそうになる。
 イジュンを誂うのは楽しい。エッチの時だと立場が逆転して好き放題やられてばっかりだから、こういう時くらいはやり返さないと。

「お前な……」

「イジュナ、ちょっと耳貸して」

 ユンヒョンがテーブルから離れた今、ソジュンが考えてくれた例の脱セフレ計画を実行するチャンスだと思った。やるしかない。

「は?なに」

 さっきまで喧嘩していたのにいきなり俺が体に触れたせいか、イジュンは驚いた顔で固まった。

「いいから」

 肩を強引に抱き寄せて耳に唇を近づける。
 焼き肉の煙で充満した部屋だというのに、シャンプーと香水のいい香りがして、不覚にも心臓のあたりが痛くなる。
 こんなことでドキドキするなんて悔しい。イジュンのくせに、妙に色っぽくなりやがって。

「俺の今日の下着の色、当ててみて」

「……は?」

「実は新しく買ったパンツ履いてるんだけど」

「パ、パンツ……?」

「そう。で、何色だと思う」

 ソジュンが言っていた誘い文句がこれで合ってるか分からない。が、できる限り誘惑とやらを頑張るしかない。
 唇は耳の近くに固定したまま、テーブルの下でそっと手を握ってみる。
 途端にイジュンが耳を赤く染めて俯いた。
 太腿を抓った時と反応が違うのが面白いなあと呑気に思いつつ、もっと誘惑しなくてはいけないので、「早く言って」と囁いてみる。

「あ、っと……あ、青とか」

「ハズレ」

「じゃあ、黒?」

「違う」

「わかるわけないじゃん」

「確認してみる?」

「えっ」

「気にならないなら、いいけど」

 あえて冷たい言い方をすると、イジュンが慌てたような声で「気になる。見たい」と言って手を握り返してきた。
(さっきの不機嫌はどこへ行ったんだ?)
 上手く誘惑出来たはずなのに、なぜか苛つく。仕掛けておいて何だが、余計に体しか求められてないように感じてしまった。
 こんなの俺じゃなくてもいいと言われているような気がしてならない。
 イジュンは他の人に──、ソヌに、もしこうやって迫られたら体の関係を持つのだろうか。
 ふと、昨日二人きりで食事してきたという事実を思い出して奥歯を噛みしめる。
 もし俺の知らないところで、同じように彼らが体の関係を持っているとしたら、どうしよう?
 告白以前の問題だ。まずは自分以外の誰かと関係があるのかどうか、聞く必要がある。

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