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プロローグ
プロローグ 1
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落ちる、落ちる、落ちる。
相馬結慧は真っ逆さまに落ちていった。
どこに?
横断歩道に突然開いた穴に。
なんの変哲もない朝だった。世間様的には休日であろうとも、会社に行くために家を出た。休日出勤の朝くらいはちょっとばかりの贅沢をしないとやってられない。そう思って駅前の喫茶店でモーニングでも食べてから行こうと少し早めに家を出た。
いつもと同じ道、いつもと同じ鞄とパンプス。よく会社に着ていく紺色のカットソーに黒のスカート、ストッキング。休日出勤だから髪はおろして、けれどいつでもまとめられるようにシュシュを手首につけて。
いつもと同じ。ほんとうに、いつもどおりの休日出勤の朝だったのに。
駅前の交差点。渡るのは結慧と向かいから来た女子大生だけ。信号が青に変わって、横断歩道の真ん中で二人がちょうどすれ違う。
そのとき、
コンクリートが光った。二人の足元を起点になにかの紋様を描くように伸びてゆく光。驚いて足を止め、ただそれを目で追っていれば真下から風が吹いた。
なぜ、も、なにが、もなかった。
信号待ちをしている車の運転手が口と目をめいっぱい開いている。
今から行くはずだった喫茶店の客がコーヒーを片手に固まっている。それに気付いた店員が此方をみて何事かを叫ぶ。
掲示板のポスターが風を受けて剥がれかける。
横断信号が点滅している。
それが全部、ゆっくりゆっくりと見えなくなっていく。
結慧の頭上、ぽっかり開いた穴から見えるは残すところ空と信号機だけ。それもどんどん狭まっていく。穴が塞がってきているのだ。
ぱちりぱちり、瞬きでもするかのように点滅していた横断信号が赤に変わったのを見届けてから、結慧の視界は真っ暗で何も見えなくなってしまった。
相馬結慧は真っ逆さまに落ちていった。
どこに?
横断歩道に突然開いた穴に。
なんの変哲もない朝だった。世間様的には休日であろうとも、会社に行くために家を出た。休日出勤の朝くらいはちょっとばかりの贅沢をしないとやってられない。そう思って駅前の喫茶店でモーニングでも食べてから行こうと少し早めに家を出た。
いつもと同じ道、いつもと同じ鞄とパンプス。よく会社に着ていく紺色のカットソーに黒のスカート、ストッキング。休日出勤だから髪はおろして、けれどいつでもまとめられるようにシュシュを手首につけて。
いつもと同じ。ほんとうに、いつもどおりの休日出勤の朝だったのに。
駅前の交差点。渡るのは結慧と向かいから来た女子大生だけ。信号が青に変わって、横断歩道の真ん中で二人がちょうどすれ違う。
そのとき、
コンクリートが光った。二人の足元を起点になにかの紋様を描くように伸びてゆく光。驚いて足を止め、ただそれを目で追っていれば真下から風が吹いた。
なぜ、も、なにが、もなかった。
信号待ちをしている車の運転手が口と目をめいっぱい開いている。
今から行くはずだった喫茶店の客がコーヒーを片手に固まっている。それに気付いた店員が此方をみて何事かを叫ぶ。
掲示板のポスターが風を受けて剥がれかける。
横断信号が点滅している。
それが全部、ゆっくりゆっくりと見えなくなっていく。
結慧の頭上、ぽっかり開いた穴から見えるは残すところ空と信号機だけ。それもどんどん狭まっていく。穴が塞がってきているのだ。
ぱちりぱちり、瞬きでもするかのように点滅していた横断信号が赤に変わったのを見届けてから、結慧の視界は真っ暗で何も見えなくなってしまった。
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