6 / 91
第一章 太陽の国
1-3
しおりを挟む
上等な革張りのソファに大きな一枚板のテーブル。そこに並ぶ紅茶がふたつ。結慧のものと、もうひとつ。彼女、大日向陽菜のもの。ルイに連れられてやって来たここは教会の応接間のようだ。
陽菜からは相変わらずピンク色の触手が出ていて、結慧に絡みつこうとしているのが眼鏡の隙間から見える。
ただ、その度にぱちん、と小さく音を立てて弾かれるのでとりあえず問題なしと無視することにした。だいぶ不快だけれど。
今はそれよりも問題がある。先程からどうも、ルイの態度がおかしいのだ。おかしいというか、冷たい。ルイだけではない。あそこにいたすべての人が結慧に対して冷たい態度をとってくる。
この応接間に来るのだって、彼らは陽菜だけを連れて行こうとしていた。置いていかれるのは流石に、と思い声を上げれば「まだいたのか」と言われる始末。陽菜が一緒が良いと言っていなければ本当に置いてけぼりを食らっていただろう。
原因は、わかる。たぶん。
陽菜から出ているアレ。陽菜が目覚める前、あのピンク色の触手が巻き付く前のルイは丁寧で、結慧を気遣う様子もあった。きちんと会話、意思の疎通もできていた。それが今では。
「私達がお呼びしたのは聖女様だけ。貴女に説明することなどありません」
こう。
原因は分かるが理由が分からない。対処方法も分からない。現状、あれが巻き付くと態度がおかしくなるということだけ。彼ら同士は普通に接しているから、これは結慧に対してだけ。
「私だってここにいたくているわけではないわ。けれどこの状況を作ったのはそちらでしょう?」
「勝手に来ておいて何を言っているのやら」
「あたしにも説明してよぉ」
「ええ、もちろんです。では貴女は退席を」
「結慧さんも一緒じゃだめ?あたし馬鹿だからぁ…一人じゃ不安だよぉ」
「聖女様がそこまでおっしゃるなら」
反射で出そうになった溜息をどうにか飲み込んで口を閉じる。陽菜の間延びした喋り方もルイの聖職者らしからぬデレデレした顔ももはや茶番劇のようだけれど、聞きたいことがきけるならそれでいい。
「まず、ここは太陽の国にあります太陽教会。その中心機関の中央協会です。我々は聖女…陽菜様を異世界からお呼びいたしました。この世界を救っていただくために」
結慧は爪先を踏んでみた。
痛い。
「三年前、太陽が突然昇らなくなりました」
この国だけではない、世界中から太陽が消えてしまった。それ以降、世界は徐々に荒れはじめた。
まず植物が枯れ、農作物も家畜の餌も育たない。まだ何とかもっているものの、食糧難はすぐそこ。失業者も増え、治安の悪化も止まらない。
病気の流行、育たない子供。人口減の兆し。
「原因は月神。あの悪神が太陽神様から大切な宝珠を奪い、太陽を消してしまったのです」
「……何故そう言い切れるんです?」
「そんなの、太陽神様がそう仰っていたからに決まっているでしょう」
「え?」
思わず口を挟まずにはいられなかった。そうして帰ってきた答えもまた耳を疑うものだったけれど。それを心底馬鹿にしたような顔で言われても困る。
「えっとぉ、こっちの世界では神様とお話できるの?」
「ええ、もちろん。聖女様の世界では違うのですか?」
「そうなんだ!すごぉい!あたし達の世界じゃそんなことできないもん!」
頭が痛い。これが異世界ギャップというやつだろうか。変な新興宗教だったらどうしよう。
「神の声は我々のように修行を積んだ聖職者にしか聞こえませんが……そうですね、聖女様の世界では違うというのなら私の話は俄に信じがたいかもしれません」
そう言うとルイは立ち上がって窓辺に寄る。薄明かりのさす窓に。
「今は午前九時ですが……太陽がないのがお分かりになりますか?」
促され、立ち上がる。陽菜と二人で覗き込んだ空は雲一つない薄紫色の空。夜明け直前の色だ。
空の端は光り、太陽がすぐそこにあるのは分かるのに。
「こういうの外国にありますよね~白夜だっけぇ?」
「陽が昇らないのなら極夜よ」
「そうなんだぁ!結慧さんって物知り~」
結慧は陽菜の言葉を流して腕時計を確認する。針はきちんと動いている。九時。時差はないらしい。
ルイの「信じていただけましたでしょうか」という言葉でソファに戻る。
「聖女様をお呼びするようにと言われたのも太陽神様です。あの御方はこの状況を憂い、聖女様であればと」
「聖女ってなにするの?」
「はい、聖女様には太陽神様の使いとして月神を探していただきたいのです。そして宝珠を取り返し太陽神様に届け、世界に再び太陽を蘇らせる使命があるのです」
どうか、とルイが陽菜の手を取る。陽菜は「えっとぉ…」と困った顔でちらりと結慧をうかがってくる。ああ、ここで分かりましたぁ!なんて即決するような子ではないのね。だけど、
「……彼女の代わりにいくつか質問をしても?」
「何故貴女が?」
ほらね、断られるでしょう。けれど陽菜の「お願いします」という言葉に渋々ルイが頷いた。
「まず、聖女であればできるという根拠は?」
「太陽神様がそう仰られたので」
「その太陽神はご自分でなんとかしようと思わなかったのですか?」
「もちろんされました。けれど月神は姿すら見せないのです」
「では月神を探すというのは、具体的にはどこを?」
「わかりません。各国を巡って手がかりを探さなければ」
陽菜の代理ということならばルイはまともに答える。もっとも、その回答の殆どは具体性にかけるけれど。他にも諸々質問をしてみても、すべて「太陽神様が仰っていたので」に終始する。
「では最後に、彼女が聖女だという証拠は?」
「まさか聖女様を疑ってらっしゃる?」
「そうではないわ。何をもって聖女と判断したのかを教えてくださる?」
「彼女の金色に輝く髪、青空色の瞳。これらは太陽神様の神子である証拠です」
「こちらでこの色は珍しいのかしら」
「ええ、まず目にしません」
そういえば結慧たちを囲んでいた男の中には金髪碧眼はいなかった気がする。
「陽菜ちゃん、髪と目は自前?」
「うん、おばあちゃんががフランス人でぇ」
「そう」
これで髪染めとカラコンだったらどうしようかと思った。けれどまぁ、天然物ならばルイの主張も通るといえば通る。地球基準だと通らないが。
「私達の世界ではこの色は普通にいますよ」
「……聖女様、それは本当ですか?」
「うん。あたしのいた国では珍しいけどぉ」
そう告げればルイはふむ、と一瞬考えて。
「わかりました。では魔力を測る装置がありますのでそちらをお持ちします。聖女様であれば類稀なるお力をお持ちでしょうからすぐに分かると思いますよ」
陽菜からは相変わらずピンク色の触手が出ていて、結慧に絡みつこうとしているのが眼鏡の隙間から見える。
ただ、その度にぱちん、と小さく音を立てて弾かれるのでとりあえず問題なしと無視することにした。だいぶ不快だけれど。
今はそれよりも問題がある。先程からどうも、ルイの態度がおかしいのだ。おかしいというか、冷たい。ルイだけではない。あそこにいたすべての人が結慧に対して冷たい態度をとってくる。
この応接間に来るのだって、彼らは陽菜だけを連れて行こうとしていた。置いていかれるのは流石に、と思い声を上げれば「まだいたのか」と言われる始末。陽菜が一緒が良いと言っていなければ本当に置いてけぼりを食らっていただろう。
原因は、わかる。たぶん。
陽菜から出ているアレ。陽菜が目覚める前、あのピンク色の触手が巻き付く前のルイは丁寧で、結慧を気遣う様子もあった。きちんと会話、意思の疎通もできていた。それが今では。
「私達がお呼びしたのは聖女様だけ。貴女に説明することなどありません」
こう。
原因は分かるが理由が分からない。対処方法も分からない。現状、あれが巻き付くと態度がおかしくなるということだけ。彼ら同士は普通に接しているから、これは結慧に対してだけ。
「私だってここにいたくているわけではないわ。けれどこの状況を作ったのはそちらでしょう?」
「勝手に来ておいて何を言っているのやら」
「あたしにも説明してよぉ」
「ええ、もちろんです。では貴女は退席を」
「結慧さんも一緒じゃだめ?あたし馬鹿だからぁ…一人じゃ不安だよぉ」
「聖女様がそこまでおっしゃるなら」
反射で出そうになった溜息をどうにか飲み込んで口を閉じる。陽菜の間延びした喋り方もルイの聖職者らしからぬデレデレした顔ももはや茶番劇のようだけれど、聞きたいことがきけるならそれでいい。
「まず、ここは太陽の国にあります太陽教会。その中心機関の中央協会です。我々は聖女…陽菜様を異世界からお呼びいたしました。この世界を救っていただくために」
結慧は爪先を踏んでみた。
痛い。
「三年前、太陽が突然昇らなくなりました」
この国だけではない、世界中から太陽が消えてしまった。それ以降、世界は徐々に荒れはじめた。
まず植物が枯れ、農作物も家畜の餌も育たない。まだ何とかもっているものの、食糧難はすぐそこ。失業者も増え、治安の悪化も止まらない。
病気の流行、育たない子供。人口減の兆し。
「原因は月神。あの悪神が太陽神様から大切な宝珠を奪い、太陽を消してしまったのです」
「……何故そう言い切れるんです?」
「そんなの、太陽神様がそう仰っていたからに決まっているでしょう」
「え?」
思わず口を挟まずにはいられなかった。そうして帰ってきた答えもまた耳を疑うものだったけれど。それを心底馬鹿にしたような顔で言われても困る。
「えっとぉ、こっちの世界では神様とお話できるの?」
「ええ、もちろん。聖女様の世界では違うのですか?」
「そうなんだ!すごぉい!あたし達の世界じゃそんなことできないもん!」
頭が痛い。これが異世界ギャップというやつだろうか。変な新興宗教だったらどうしよう。
「神の声は我々のように修行を積んだ聖職者にしか聞こえませんが……そうですね、聖女様の世界では違うというのなら私の話は俄に信じがたいかもしれません」
そう言うとルイは立ち上がって窓辺に寄る。薄明かりのさす窓に。
「今は午前九時ですが……太陽がないのがお分かりになりますか?」
促され、立ち上がる。陽菜と二人で覗き込んだ空は雲一つない薄紫色の空。夜明け直前の色だ。
空の端は光り、太陽がすぐそこにあるのは分かるのに。
「こういうの外国にありますよね~白夜だっけぇ?」
「陽が昇らないのなら極夜よ」
「そうなんだぁ!結慧さんって物知り~」
結慧は陽菜の言葉を流して腕時計を確認する。針はきちんと動いている。九時。時差はないらしい。
ルイの「信じていただけましたでしょうか」という言葉でソファに戻る。
「聖女様をお呼びするようにと言われたのも太陽神様です。あの御方はこの状況を憂い、聖女様であればと」
「聖女ってなにするの?」
「はい、聖女様には太陽神様の使いとして月神を探していただきたいのです。そして宝珠を取り返し太陽神様に届け、世界に再び太陽を蘇らせる使命があるのです」
どうか、とルイが陽菜の手を取る。陽菜は「えっとぉ…」と困った顔でちらりと結慧をうかがってくる。ああ、ここで分かりましたぁ!なんて即決するような子ではないのね。だけど、
「……彼女の代わりにいくつか質問をしても?」
「何故貴女が?」
ほらね、断られるでしょう。けれど陽菜の「お願いします」という言葉に渋々ルイが頷いた。
「まず、聖女であればできるという根拠は?」
「太陽神様がそう仰られたので」
「その太陽神はご自分でなんとかしようと思わなかったのですか?」
「もちろんされました。けれど月神は姿すら見せないのです」
「では月神を探すというのは、具体的にはどこを?」
「わかりません。各国を巡って手がかりを探さなければ」
陽菜の代理ということならばルイはまともに答える。もっとも、その回答の殆どは具体性にかけるけれど。他にも諸々質問をしてみても、すべて「太陽神様が仰っていたので」に終始する。
「では最後に、彼女が聖女だという証拠は?」
「まさか聖女様を疑ってらっしゃる?」
「そうではないわ。何をもって聖女と判断したのかを教えてくださる?」
「彼女の金色に輝く髪、青空色の瞳。これらは太陽神様の神子である証拠です」
「こちらでこの色は珍しいのかしら」
「ええ、まず目にしません」
そういえば結慧たちを囲んでいた男の中には金髪碧眼はいなかった気がする。
「陽菜ちゃん、髪と目は自前?」
「うん、おばあちゃんががフランス人でぇ」
「そう」
これで髪染めとカラコンだったらどうしようかと思った。けれどまぁ、天然物ならばルイの主張も通るといえば通る。地球基準だと通らないが。
「私達の世界ではこの色は普通にいますよ」
「……聖女様、それは本当ですか?」
「うん。あたしのいた国では珍しいけどぉ」
そう告げればルイはふむ、と一瞬考えて。
「わかりました。では魔力を測る装置がありますのでそちらをお持ちします。聖女様であれば類稀なるお力をお持ちでしょうからすぐに分かると思いますよ」
5
あなたにおすすめの小説
相続した畑で拾ったエルフがいつの間にか嫁になっていた件 ~魔法で快適!田舎で農業スローライフ~
ちくでん
ファンタジー
山科啓介28歳。祖父の畑を相続した彼は、脱サラして農業者になるためにとある田舎町にやってきた。
休耕地を畑に戻そうとして草刈りをしていたところで発見したのは、倒れた美少女エルフ。
啓介はそのエルフを家に連れ帰ったのだった。
異世界からこちらの世界に迷い込んだエルフの魔法使いと初心者農業者の主人公は、畑をおこして田舎に馴染んでいく。
これは生活を共にする二人が、やがて好き合うことになり、付き合ったり結婚したり作物を育てたり、日々を生活していくお話です。
【完結】異世界に召喚されたので、好き勝手に無双しようと思います。〜人や精霊を救う?いいえ、ついでに女神様も助けちゃおうと思います!〜
月城 蓮桜音
ファンタジー
仕事に日々全力を注ぎ、モフモフのぬいぐるみ達に癒されつつ、趣味の読書を生き甲斐にしていたハードワーカーの神木莉央は、過労死寸前に女神に頼まれて異世界へ。魔法のある世界に召喚された莉央は、魔力量の少なさから無能扱いされるが、持ち前のマイペースさと素直さで、王子と王子の幼馴染達に愛され無双して行く物語です。
※この作品は、カクヨムでも掲載しています。
ゲームちっくな異世界でゆるふわ箱庭スローライフを満喫します 〜私の作るアイテムはぜーんぶ特別らしいけどなんで?〜
ことりとりとん
ファンタジー
ゲームっぽいシステム満載の異世界に突然呼ばれたので、のんびり生産ライフを送るつもりが……
この世界の文明レベル、低すぎじゃない!?
私はそんなに凄い人じゃないんですけど!
スキルに頼りすぎて上手くいってない世界で、いつの間にか英雄扱いされてますが、気にせず自分のペースで生きようと思います!
異世界で家をつくります~異世界転移したサラリーマン、念動力で街をつくってスローライフ~
ヘッドホン侍
ファンタジー
◆異世界転移したサラリーマンがサンドボックスゲームのような魔法を使って、家をつくったり街をつくったりしながら、マイペースなスローライフを送っていたらいつの間にか世界を救います◆
ーーブラック企業戦士のマコトは気が付くと異世界の森にいた。しかし、使える魔法といえば念動力のような魔法だけ。戦うことにはめっぽう向いてない。なんとか森でサバイバルしているうちに第一異世界人と出会う。それもちょうどモンスターに襲われているときに、女の子に助けられて。普通逆じゃないのー!と凹むマコトであったが、彼は知らない。守るにはめっぽう強い能力であったことを。
※「カクヨム」「小説家になろう」にも掲載しています。
「キヅイセ。」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~
あめの みかな
ファンタジー
秋月レンジ。高校2年生。
彼は気づいたら異世界にいた。
その世界は、彼が元いた世界とのゲート開通から100周年を迎え、彼は通算一万人目の冒険者だった。
科学ではなく魔法が発達した、もうひとつの地球を舞台に、秋月レンジとふたりの巫女ステラ・リヴァイアサンとピノア・カーバンクルの冒険が今始まる。
【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる
三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。
こんなはずじゃなかった!
異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。
珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に!
やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活!
右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり!
アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。
中身は80歳のおばあちゃんですが、異世界でイケオジ伯爵に溺愛されています
浅水シマ
ファンタジー
【完結しました】
ーー人生まさかの二週目。しかもお相手は年下イケオジ伯爵!?
激動の時代を生き、八十歳でその生涯を終えた早川百合子。
目を覚ますと、そこは異世界。しかも、彼女は公爵家令嬢“エマ”として新たな人生を歩むことに。
もう恋愛なんて……と思っていた矢先、彼女の前に現れたのは、渋くて穏やかなイケオジ伯爵・セイルだった。
セイルはエマに心から優しく、どこまでも真摯。
戸惑いながらも、エマは少しずつ彼に惹かれていく。
けれど、中身は人生80年分の知識と経験を持つ元おばあちゃん。
「乙女のときめき」にはとっくに卒業したはずなのに――どうしてこの人といると、胸がこんなに苦しいの?
これは、中身おばあちゃん×イケオジ伯爵の、
ちょっと不思議で切ない、恋と家族の物語。
※小説家になろうにも掲載中です。
辺境ぐうたら日記 〜気づいたら村の守り神になってた〜
自ら
ファンタジー
異世界に転移したアキト。 彼に壮大な野望も、世界を救う使命感もない。 望むのはただ、 美味しいものを食べて、気持ちよく寝て、静かに過ごすこと。 ところが―― 彼が焚き火をすれば、枯れていた森が息を吹き返す。 井戸を掘れば、地下水脈が活性化して村が潤う。 昼寝をすれば、周囲の魔物たちまで眠りにつく。 村人は彼を「奇跡を呼ぶ聖人」と崇め、 教会は「神の化身」として祀り上げ、 王都では「伝説の男」として語り継がれる。 だが、本人はまったく気づいていない。 今日も木陰で、心地よい風を感じながら昼寝をしている。 これは、欲望に忠実に生きた男が、 無自覚に世界を変えてしまう、 ゆるやかで温かな異世界スローライフ。 幸せは、案外すぐ隣にある。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる