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後編
「式で誓いの口吻を交わした時、少女は元の美しい姿に戻った。呪いを感じなくなった身代わりの魔石を留めていた装具も消え、王子が苦しむことも二度と無かった。二人が愛し合ったと女神の神通力が認めた結果、その代の呪いは完全に抑え込まれたのだ」
「…そんな話っ…!知って…ぐっ!痛……」
国王陛下が語った昔話はこの国で知らない人はいない。
当然ケンシーも知っていた。
150年ほど昔の話でお伽噺にもなっている。
ただ、彼はルアが見つかるまで呪いで苦しんでいたのを完全に忘れてしまっていた。
当然、腕輪を着けられる前の可憐だったルアの容姿も。
ケンシーは呪いは物語のものだと思い込み、ルアの両親が平凡な容姿だったことからルアは産まれついての醜女だと決めつけていた。
「お前とルアもこの物語と同じだと…ルアを大切にしろと何度も何度も聞かせたというのに…何故こんな仕打ちを…」
ガックリと力なく膝をついたままの国王に周りの貴族たちもかける言葉が浮かばない。
呪いのことも物語の事も知っていたがルアの容姿がここまで美しかったとは他の者たちも想像していなかったからだ。
醜い子爵令嬢が銀髪だったお陰で王子の婚約者になれた、呪いの身代わりで醜くなると伝わっているがせいぜい両親と似ていない腫れぼったい目が身代わりの影響なのだろう、と、その程度に考えていた。
「ルアを、返して頂きますね」
静かに声を発し、人垣の間から呪いの苦しさにうずくまるケンシーと国王陛下の前に現れたのは辺境伯家の子息フィリン・ジャルナクだ。
「フィン兄様!」
嬉しそうに彼の名前を呼び駆け寄るルア。
二人は父方の従兄妹同士で、ルアが聖女に選ばれなければ婚約する予定だった。
ケンシーにぞんざいに扱われるルアの哀しさを癒やしてくれていたのはいつも彼からの手紙。
城に来てから会うことは年に一度、あるか無いかだったが手紙は頻繁にやり取りしていた。
3つ年上のフィリンは婚約者になる予定だと紹介された赤ん坊のルアをそれはそれは可愛がっていた。
当時、妹が欲しかったのもある。
子爵家の仕事は辺境伯家と連携したものが大半なのでルアが産まれた頃、辺境伯領に特に長く滞在していた。
その為二人は婚約予定同士であり、幼馴染であり、兄妹のような関係だった。
仕事の山場を越え、完遂する為に王都で長く滞在することになる仕事はジャルナク辺境伯の弟であるレイナ子爵が請け負う。
子爵一家揃って久々に王都に戻った時にはルアは5歳となっていた。
そして王都に戻ったことで王家はやっと女神の力を継いだ聖女を見つけられたのだ。
ケンシー王子が呪いに苦しんで5年目を迎えた秋だった。
寄り添うルアとフィリン、二人の肩に手を置き、レイナ子爵は静かに話し始める。
「私は…レイナ子爵家はルアとケンシー王子の間に芽生える愛は『友愛』でも良いという説明を受け王家にルアを預けました。しかし城で暮らしても友愛は芽生えなかった。なので愛を誓って呪いを抑える為にルアはケンシー王子と婚約させると告げられてしまった。私は、本当はこの二人を婚約させる予定だったが了承しました。…全て王家への忠誠あってのことです」
気まずそうに国王は俯いていた顔を更に背ける。
「たった5歳の娘に、身代わりの…外せない呪いの魔石を身につける事も受け入れました。その時、1つだけ娘の幸せを願って条件を付けて貰いました。万が一、ケンシー王子が代わりに呪いを受けるルアへの感謝や思いやりを抱くこと無く…関係を破綻させるような宣言をした時には外すことが出来るようにしてくれ、と」
大勢いる貴族たちは一様にシンと静まり耳を傾け続けた。
「そ、れは…王家を、信用してない…不忠もいいとこだろう!私を、こんな目に…合わせて…くそっ…!」
恨めしそうなケンシー王子の声に応えたのはフィリンだ。
「魔石を身に付ければルアは呪いで醜くなります。しかし王子の苦痛はルアが死なない限りなくなるのです。生贄に差し出せというのでなければ当然の条件です。実際、貴方はルアを貶めた!」
「あんな…みにく、か、たのに…ぅぅ…当然、だろが…」
カッとなったフィリンを我に返させたのは「やめよ!」という国王の叫びだった。
「やめよ、ケンシー。5歳まで苦しんだのだから辛さを覚えていると思い込んでいた私も悪かった。だが!呪いを身代わりに受ける彼女への感謝も無くこのような愚行に走るとは思いもせなんだ。醜い容姿を恐ろしがって友愛を築けなんだ時に気付くべきであった…。レイナ子爵、ルア嬢、そしてジャルナク家子息フィリン、すまなかった」
こうして楽しいハズのパーティはとんでもないスキャンダルと
「皆の者、すまぬ。来年は今年の分も皆を楽しませるパーティとなるよう企画しよう」
という国王陛下と王妃殿下の謝罪で幕を閉じてしまった。
「…そんな話っ…!知って…ぐっ!痛……」
国王陛下が語った昔話はこの国で知らない人はいない。
当然ケンシーも知っていた。
150年ほど昔の話でお伽噺にもなっている。
ただ、彼はルアが見つかるまで呪いで苦しんでいたのを完全に忘れてしまっていた。
当然、腕輪を着けられる前の可憐だったルアの容姿も。
ケンシーは呪いは物語のものだと思い込み、ルアの両親が平凡な容姿だったことからルアは産まれついての醜女だと決めつけていた。
「お前とルアもこの物語と同じだと…ルアを大切にしろと何度も何度も聞かせたというのに…何故こんな仕打ちを…」
ガックリと力なく膝をついたままの国王に周りの貴族たちもかける言葉が浮かばない。
呪いのことも物語の事も知っていたがルアの容姿がここまで美しかったとは他の者たちも想像していなかったからだ。
醜い子爵令嬢が銀髪だったお陰で王子の婚約者になれた、呪いの身代わりで醜くなると伝わっているがせいぜい両親と似ていない腫れぼったい目が身代わりの影響なのだろう、と、その程度に考えていた。
「ルアを、返して頂きますね」
静かに声を発し、人垣の間から呪いの苦しさにうずくまるケンシーと国王陛下の前に現れたのは辺境伯家の子息フィリン・ジャルナクだ。
「フィン兄様!」
嬉しそうに彼の名前を呼び駆け寄るルア。
二人は父方の従兄妹同士で、ルアが聖女に選ばれなければ婚約する予定だった。
ケンシーにぞんざいに扱われるルアの哀しさを癒やしてくれていたのはいつも彼からの手紙。
城に来てから会うことは年に一度、あるか無いかだったが手紙は頻繁にやり取りしていた。
3つ年上のフィリンは婚約者になる予定だと紹介された赤ん坊のルアをそれはそれは可愛がっていた。
当時、妹が欲しかったのもある。
子爵家の仕事は辺境伯家と連携したものが大半なのでルアが産まれた頃、辺境伯領に特に長く滞在していた。
その為二人は婚約予定同士であり、幼馴染であり、兄妹のような関係だった。
仕事の山場を越え、完遂する為に王都で長く滞在することになる仕事はジャルナク辺境伯の弟であるレイナ子爵が請け負う。
子爵一家揃って久々に王都に戻った時にはルアは5歳となっていた。
そして王都に戻ったことで王家はやっと女神の力を継いだ聖女を見つけられたのだ。
ケンシー王子が呪いに苦しんで5年目を迎えた秋だった。
寄り添うルアとフィリン、二人の肩に手を置き、レイナ子爵は静かに話し始める。
「私は…レイナ子爵家はルアとケンシー王子の間に芽生える愛は『友愛』でも良いという説明を受け王家にルアを預けました。しかし城で暮らしても友愛は芽生えなかった。なので愛を誓って呪いを抑える為にルアはケンシー王子と婚約させると告げられてしまった。私は、本当はこの二人を婚約させる予定だったが了承しました。…全て王家への忠誠あってのことです」
気まずそうに国王は俯いていた顔を更に背ける。
「たった5歳の娘に、身代わりの…外せない呪いの魔石を身につける事も受け入れました。その時、1つだけ娘の幸せを願って条件を付けて貰いました。万が一、ケンシー王子が代わりに呪いを受けるルアへの感謝や思いやりを抱くこと無く…関係を破綻させるような宣言をした時には外すことが出来るようにしてくれ、と」
大勢いる貴族たちは一様にシンと静まり耳を傾け続けた。
「そ、れは…王家を、信用してない…不忠もいいとこだろう!私を、こんな目に…合わせて…くそっ…!」
恨めしそうなケンシー王子の声に応えたのはフィリンだ。
「魔石を身に付ければルアは呪いで醜くなります。しかし王子の苦痛はルアが死なない限りなくなるのです。生贄に差し出せというのでなければ当然の条件です。実際、貴方はルアを貶めた!」
「あんな…みにく、か、たのに…ぅぅ…当然、だろが…」
カッとなったフィリンを我に返させたのは「やめよ!」という国王の叫びだった。
「やめよ、ケンシー。5歳まで苦しんだのだから辛さを覚えていると思い込んでいた私も悪かった。だが!呪いを身代わりに受ける彼女への感謝も無くこのような愚行に走るとは思いもせなんだ。醜い容姿を恐ろしがって友愛を築けなんだ時に気付くべきであった…。レイナ子爵、ルア嬢、そしてジャルナク家子息フィリン、すまなかった」
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