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1 追放
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「悪く思わないでくれな」
そういって森にポイッと捨てられた。
私、侯爵家のご令嬢15歳。
ただし、庶子。
そしてその母、平民35歳。
何故捨てられたかというと弟が3歳になったから。
私は爵位を継いだばかりのある若い侯爵がどこぞのパーティーの余興で来ていた踊り子を気に入り囲い込んだ末に出来た娘だった。
侯爵には奥さんがいたが長年子供に恵まれなかったらしい。
そんな中で産まれたのが私。
侯爵の珍しい桃色の目と赤い髪を持って産まれた上、お母様は軟禁状態だったので直ぐに侯爵の子として認知されたという。
男児で無くとも長子であれば後継者に選ばれても珍しくないお国柄。
私はお母様と別宅住まいで半分軟禁生活ではあったが侯爵家唯一の直系の子として5歳から後継者教育を受けた。
そして令嬢としても恥ずかしくないよう庶子と思えぬほどしっかりと育てられた。
なんせ平民のお母様が人質に捕られているようなものだもの。
勉強も、作法も、護身術も、魔法も、教えられたものは何でも必死に頑張った。
その結果どこへ出しても恥ずかしくないと先生たちに褒められ続けるほど淑女として立派に育ったと自負してる。
容姿も他国出身の美人であるお母様とお父様の良いとこ取りをした。
しかも貴族の子供も参加するよう呼びかけられるお茶会などがない限り別宅に住む私は滅多に王都に姿を現すことがなかったのもあって『傾国の美女だから侯爵は隠しているのだ』何だと私の美貌に尾ヒレ背ヒレが付いた噂が回った。
そんなだから既にすっかり有名人。
16歳の社交デビューを目前に本家にそれはそれは大量の釣書が届いていたという。
で、話は変わる。
実は3年前、本宅で奥様が男の子を出産していたらしい。
そしてこの度、無事にその嫡男が3歳まで育ったし万が一後継の事で揉めるのは面倒だから社交デビュー前に娘はポイしようぜ、となったらしい。
馬に乗って森へ散策に行くと聞いていた私達。
お出かけできる事は本当に稀だったから心から楽しみに準備をした。
動きやすい服装。
汚れた時の着替え。
ブランケットや必要そうな物をリュック型のカバンに詰めて、お母様と二人本当に楽しみにしてたのだ。
まさかそのまま追放の準備になるとは…。
今の私達の持ち物はそのリュックに使用人が持たせてくれたお弁当とティーセットが入っているという覆いを被せられたカゴ2つ、そして布袋に丈夫そうな縄2本と狩猟ナイフが入っている。
この縄とナイフは私を森の奥へと連れてきた従者がせめてと言って渡してきたものだった。
「このまま太陽の出てくる方へ進めば隣の国ジャリメアに着ける。道に逸れても右側なら侯爵家と対立派閥の伯爵領に出るはずだ。ただこの森は魔物もいるし広い。女の足じゃ辿り着けたら奇跡だ…。だからコレを渡しておくな…」
そう言って布袋を渡してきた。
「シャナファ様は良い人だったしシェリーお嬢様もずっと頑張ってきたのになぁ…。シャナファ様なんて半分無理やり囲われたってのに…」
私のために涙まで流してくれた従者の言葉に涙ぐみながら首をふるお母様。
「私の事はいいの。でもせめてこの子だけはと…思ってしまうわね…」
その言葉を私が遮る。
「奥様が処分したかったのはむしろ私でしょう?むしろ私がお母様を巻き込んでしまったのよね」
私の問いに従者は一瞬ハッとした表情を浮かべ苦しそうに答えてくれた。
「さすがお嬢様です…。なのでシェリー様を匿うことは出来ません…。既にお嬢様の美しさは社交界でも有名です。しかも旦那様の特徴を受け継いでいらっしゃる。奥様はそれ故に後継で揉める可能性があると御子息リセト様がお生まれになった時からお嬢様の暗殺も狙われていました…」
しかし完全に別に住む私達を狙うのは難しく、3年かけてお父様の説得に成功したらしい。
ついでに憎い愛人のお母様を排除することにも成功したようだ。
従者はそんな侯爵家の身勝手に翻弄された私達母娘を不憫に思ったらしい。
森で刺して戻れと言われたから屋敷には絶対戻るなと言われ別れた。
彼が去った後で布袋の中を確認すると入っていたのは長めの縄に、大きな狩猟ナイフ、ジャメリアの通貨が入った小袋だった。
縄は一思いに首を括って自害出来るように、とでも思ったのかもしれない。
それでもジャメリアの通貨も入れてくれている彼の優しさに涙が流れた。
「無謀かもしれなくともジャメリアを目指しましょう!」
お母様が明るく私に声をかけてくる。
「もちろん!」と私は大きく頷くとリュックから散策の為に用意していた虫除けの魔道具を取り出しスイッチを入れて歩きだした。
そういって森にポイッと捨てられた。
私、侯爵家のご令嬢15歳。
ただし、庶子。
そしてその母、平民35歳。
何故捨てられたかというと弟が3歳になったから。
私は爵位を継いだばかりのある若い侯爵がどこぞのパーティーの余興で来ていた踊り子を気に入り囲い込んだ末に出来た娘だった。
侯爵には奥さんがいたが長年子供に恵まれなかったらしい。
そんな中で産まれたのが私。
侯爵の珍しい桃色の目と赤い髪を持って産まれた上、お母様は軟禁状態だったので直ぐに侯爵の子として認知されたという。
男児で無くとも長子であれば後継者に選ばれても珍しくないお国柄。
私はお母様と別宅住まいで半分軟禁生活ではあったが侯爵家唯一の直系の子として5歳から後継者教育を受けた。
そして令嬢としても恥ずかしくないよう庶子と思えぬほどしっかりと育てられた。
なんせ平民のお母様が人質に捕られているようなものだもの。
勉強も、作法も、護身術も、魔法も、教えられたものは何でも必死に頑張った。
その結果どこへ出しても恥ずかしくないと先生たちに褒められ続けるほど淑女として立派に育ったと自負してる。
容姿も他国出身の美人であるお母様とお父様の良いとこ取りをした。
しかも貴族の子供も参加するよう呼びかけられるお茶会などがない限り別宅に住む私は滅多に王都に姿を現すことがなかったのもあって『傾国の美女だから侯爵は隠しているのだ』何だと私の美貌に尾ヒレ背ヒレが付いた噂が回った。
そんなだから既にすっかり有名人。
16歳の社交デビューを目前に本家にそれはそれは大量の釣書が届いていたという。
で、話は変わる。
実は3年前、本宅で奥様が男の子を出産していたらしい。
そしてこの度、無事にその嫡男が3歳まで育ったし万が一後継の事で揉めるのは面倒だから社交デビュー前に娘はポイしようぜ、となったらしい。
馬に乗って森へ散策に行くと聞いていた私達。
お出かけできる事は本当に稀だったから心から楽しみに準備をした。
動きやすい服装。
汚れた時の着替え。
ブランケットや必要そうな物をリュック型のカバンに詰めて、お母様と二人本当に楽しみにしてたのだ。
まさかそのまま追放の準備になるとは…。
今の私達の持ち物はそのリュックに使用人が持たせてくれたお弁当とティーセットが入っているという覆いを被せられたカゴ2つ、そして布袋に丈夫そうな縄2本と狩猟ナイフが入っている。
この縄とナイフは私を森の奥へと連れてきた従者がせめてと言って渡してきたものだった。
「このまま太陽の出てくる方へ進めば隣の国ジャリメアに着ける。道に逸れても右側なら侯爵家と対立派閥の伯爵領に出るはずだ。ただこの森は魔物もいるし広い。女の足じゃ辿り着けたら奇跡だ…。だからコレを渡しておくな…」
そう言って布袋を渡してきた。
「シャナファ様は良い人だったしシェリーお嬢様もずっと頑張ってきたのになぁ…。シャナファ様なんて半分無理やり囲われたってのに…」
私のために涙まで流してくれた従者の言葉に涙ぐみながら首をふるお母様。
「私の事はいいの。でもせめてこの子だけはと…思ってしまうわね…」
その言葉を私が遮る。
「奥様が処分したかったのはむしろ私でしょう?むしろ私がお母様を巻き込んでしまったのよね」
私の問いに従者は一瞬ハッとした表情を浮かべ苦しそうに答えてくれた。
「さすがお嬢様です…。なのでシェリー様を匿うことは出来ません…。既にお嬢様の美しさは社交界でも有名です。しかも旦那様の特徴を受け継いでいらっしゃる。奥様はそれ故に後継で揉める可能性があると御子息リセト様がお生まれになった時からお嬢様の暗殺も狙われていました…」
しかし完全に別に住む私達を狙うのは難しく、3年かけてお父様の説得に成功したらしい。
ついでに憎い愛人のお母様を排除することにも成功したようだ。
従者はそんな侯爵家の身勝手に翻弄された私達母娘を不憫に思ったらしい。
森で刺して戻れと言われたから屋敷には絶対戻るなと言われ別れた。
彼が去った後で布袋の中を確認すると入っていたのは長めの縄に、大きな狩猟ナイフ、ジャメリアの通貨が入った小袋だった。
縄は一思いに首を括って自害出来るように、とでも思ったのかもしれない。
それでもジャメリアの通貨も入れてくれている彼の優しさに涙が流れた。
「無謀かもしれなくともジャメリアを目指しましょう!」
お母様が明るく私に声をかけてくる。
「もちろん!」と私は大きく頷くとリュックから散策の為に用意していた虫除けの魔道具を取り出しスイッチを入れて歩きだした。
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