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13 待遇
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「まだ信じられない…」
呆然としている間に寝る時間である。
あれから私達は馬車で丘から見た3本の塔がある神殿の前にある大教会へと連れて行かれた。
着くとすぐにテーブルへと案内され、果物とパン粥が出てきた。
食べ終わると湯殿まで用意されていて私もお母様も神官たちが丁寧に洗ってくれる。
湯上がりには真新しい上級神官の衣服が用意されていて、食堂には当たり前のようにご馳走が並んでいた。
食後のお茶を頂いてると大神官以外にもこの街の領主代理という人がやって来て、自己紹介もそこそこに今日は疲れているだろうから明日改めて挨拶をさせて欲しいと言ってくる。
そしてさすが大教会。
シンプルな内装ながらも質の良い物が揃えられている立派な客室があり、今日はここに泊まれと案内されたのだ。
「お母様って本当に何者なの?なんでこんな丁重に扱われるの?」
とにかく労られ、詳しい話はまた明日…なのは良いけどお母様が何者なのかのヒントが全然掴めなかった。
「んー…旅をしてた時、ちょっと有名だったのよね~。お母様の踊りって特殊だったらしくてあちこち巡って踊ってたの。ここもそれで来たのよ」
有名な踊り子…それだけでこんな扱いになるかしら?
いや、ならないと思うんだけど…。
森でも思ったけどお母様、やっぱり色々普通じゃない。
「お父様と出会ったのもその旅でなの?」
「えーっと…お父様と出会った時はその旅は終わっててー…、ロレアルの王様に踊りを頼まれて行ったパーティだったかな?踊りが終わったあとパーティ楽しんでたら食べ過ぎちゃって…そうそう、控え室でうたた寝してたんだけど、起きたらあの別宅に閉じ込められちゃってたのよ」
あははと笑ってるけど笑い事じゃない。
「それ…誘拐じゃない…」
「そーなのよー。酷いでしょ?シェリーはとっても大切だけど、だからあの侯爵は嫌いなの。気付いたら身籠ってて流石に悩んだ時もあったわぁ…。産まれてきたあなたを見たら暗い気持ちなんか吹き飛んじゃったけどね!」
お父様が別宅に来ても部屋に鍵をかけて閉じこもっている事が多かったお母様。
特に夕食の後は絶対顔を合わせようとしなかった。
誘拐され監禁され挙げ句孕まされ…そりゃ隠れて当然だわ。
そして同時にお父様がお母様を別宅から出さず存在を隠していた理由も理解した。
平民とはいえ王族が依頼して招いた踊り子を誘拐したのだから。
明らかになれば侯爵とはいえ不敬罪として裁かれるだろう。
奥様がどう言ってお母様を捨てさせたのかと思っていたけど隠しきれなかった時のリスクを話して脅したのかもしれない。
私が社交界デビューすれば母親は誰かと詮索する人は絶対出てくるものね。
なんせお父様は滅多に会えなくてもお母様に夢中だったもの…。
お母様の部屋に鍵を用意した使用人は誰だと来るたびに犯人探しをしていた。
「シェリー?お母様はね、今となってはシェリーの居ない人生なんて考えられないからね」
考え込んでしまっていたからだろうか。
心配そうな表情で私の顔をのぞきつつヨシヨシと頭を撫でられてしまった。
「ちょっ…私、もう15歳よ!?恥ずかしいから」
急な子供扱いに戸惑う私を見て笑顔になったお母様。
そのままギュッと抱きしめてくる。
「まだ、15歳よ。まだまだこれから色々知って、経験していく年よ。だから2人だけの時くらい…たまには子供扱いもいいじゃない」
くすぐったいような、むず痒いような、嬉しいような、どこか苛立つような…自分でもよく分からない気持ちだけどこれだけは分かった。
「お母様には敵わない」
諦めに近い感情でそう漏らすと嬉しそうに胸を張る。
「だってお母様だもんっ!」
うーん…この子供っぽい母に子供扱いされるのが嫌なのかもしれない。
呆然としている間に寝る時間である。
あれから私達は馬車で丘から見た3本の塔がある神殿の前にある大教会へと連れて行かれた。
着くとすぐにテーブルへと案内され、果物とパン粥が出てきた。
食べ終わると湯殿まで用意されていて私もお母様も神官たちが丁寧に洗ってくれる。
湯上がりには真新しい上級神官の衣服が用意されていて、食堂には当たり前のようにご馳走が並んでいた。
食後のお茶を頂いてると大神官以外にもこの街の領主代理という人がやって来て、自己紹介もそこそこに今日は疲れているだろうから明日改めて挨拶をさせて欲しいと言ってくる。
そしてさすが大教会。
シンプルな内装ながらも質の良い物が揃えられている立派な客室があり、今日はここに泊まれと案内されたのだ。
「お母様って本当に何者なの?なんでこんな丁重に扱われるの?」
とにかく労られ、詳しい話はまた明日…なのは良いけどお母様が何者なのかのヒントが全然掴めなかった。
「んー…旅をしてた時、ちょっと有名だったのよね~。お母様の踊りって特殊だったらしくてあちこち巡って踊ってたの。ここもそれで来たのよ」
有名な踊り子…それだけでこんな扱いになるかしら?
いや、ならないと思うんだけど…。
森でも思ったけどお母様、やっぱり色々普通じゃない。
「お父様と出会ったのもその旅でなの?」
「えーっと…お父様と出会った時はその旅は終わっててー…、ロレアルの王様に踊りを頼まれて行ったパーティだったかな?踊りが終わったあとパーティ楽しんでたら食べ過ぎちゃって…そうそう、控え室でうたた寝してたんだけど、起きたらあの別宅に閉じ込められちゃってたのよ」
あははと笑ってるけど笑い事じゃない。
「それ…誘拐じゃない…」
「そーなのよー。酷いでしょ?シェリーはとっても大切だけど、だからあの侯爵は嫌いなの。気付いたら身籠ってて流石に悩んだ時もあったわぁ…。産まれてきたあなたを見たら暗い気持ちなんか吹き飛んじゃったけどね!」
お父様が別宅に来ても部屋に鍵をかけて閉じこもっている事が多かったお母様。
特に夕食の後は絶対顔を合わせようとしなかった。
誘拐され監禁され挙げ句孕まされ…そりゃ隠れて当然だわ。
そして同時にお父様がお母様を別宅から出さず存在を隠していた理由も理解した。
平民とはいえ王族が依頼して招いた踊り子を誘拐したのだから。
明らかになれば侯爵とはいえ不敬罪として裁かれるだろう。
奥様がどう言ってお母様を捨てさせたのかと思っていたけど隠しきれなかった時のリスクを話して脅したのかもしれない。
私が社交界デビューすれば母親は誰かと詮索する人は絶対出てくるものね。
なんせお父様は滅多に会えなくてもお母様に夢中だったもの…。
お母様の部屋に鍵を用意した使用人は誰だと来るたびに犯人探しをしていた。
「シェリー?お母様はね、今となってはシェリーの居ない人生なんて考えられないからね」
考え込んでしまっていたからだろうか。
心配そうな表情で私の顔をのぞきつつヨシヨシと頭を撫でられてしまった。
「ちょっ…私、もう15歳よ!?恥ずかしいから」
急な子供扱いに戸惑う私を見て笑顔になったお母様。
そのままギュッと抱きしめてくる。
「まだ、15歳よ。まだまだこれから色々知って、経験していく年よ。だから2人だけの時くらい…たまには子供扱いもいいじゃない」
くすぐったいような、むず痒いような、嬉しいような、どこか苛立つような…自分でもよく分からない気持ちだけどこれだけは分かった。
「お母様には敵わない」
諦めに近い感情でそう漏らすと嬉しそうに胸を張る。
「だってお母様だもんっ!」
うーん…この子供っぽい母に子供扱いされるのが嫌なのかもしれない。
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