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1章

クリス様降臨なのじゃ!

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 次に目覚めたのは、上下左右どこを見ても真っ白な世界だった。
 とりあえず、体を動かしてみる事にしよう。

 正拳突き!ふん!からの~回し蹴り!おりゃ!

 「ふむ、初めてのVR空間だが驚く程に普段通りだな。」

 目の前が薄く光、人の輪郭が浮かび上がってくる。

 「ジャーン!皆の女神!クリス様降臨なのじゃ!」

 光が収まると、そこには白いワンピースのような服を着て、金髪を肩まで伸ばした、青目のかわいいロリっ娘が、右手左手を指までまっすぐ伸ばし、右斜め上に掲げていた。シャキーン!というやつである。

 「おお、君はクリスっていうのか!撫で撫でしてあげよう。ほら、撫で撫で~」

 いきなり撫でてしまったが、本人が目を細めて気持ち良さそうにしているので、OKとしておこう、っていうかツルーン・ペターン・ストーンなのでジュニアはおっきしないから、大丈夫だ問題ない。

 「にゃ~ん、気持ちいいのじゃ~.....ハッ!そうでは無い!これからキャラクター作成に移るからのう、にゃ~....ええい!撫でるでないわ!」

 え?でも手を放したら残念そうにしてるよね?もう一回いっとく?撫で撫で~。

 「にゅふふ~のふ~....これ!話が進まぬでは無いか!惜しいが止めよ!」

 ふむ、仕方ないなここは一旦仕切り直すことにしよう。

 「それじゃクリス、よろしく頼むよ。俺はユートだ」

 両手を腰に当てて、無い胸を張りながら、ドヤ顔のロリっ娘が話し始める。
 
 「任されたのじゃユート!それでは始めるぞ!まずは、外見の設定からじゃな」

 「デフォルトで良いよ。特に弄りたい所も無いし、種族もヒューマンでいくからな。VR空間の中だけイケメンにして、親しくなった友人と会った時に、ギャップでがっかりさせたく無いしな」

 え?何?何なのそのウンザリした顔は....そんなに俺は残念な顔してるっけ?

 「世の中の9割が嫉妬マスクになるようなイケメンの癖に、この発言とは恐れ入ったのじゃ.....自覚して無いだけに、こやつに関わる女人には同情の余地ありじゃのう、これは参ったのじゃ」

 何かブツブツ言ってるがスルーしておこう。うむ、その方が精神的にもいいんじゃないかな?

 「次は種族じゃな。先ほどヒューマンで良いと言っておったが、それで良いのじゃな?」

 「ああ、かまわないよ。尖った性能もいいけど、俺は種族に関しては、平凡平均が基本でね」

 ちなみに、種族はヒューマン・エルフ・ドワーフ・獣人各種・ドラゴニアン・巨人族・神族・魔族・フェアリーが選択可能だ。
 他にも、ファンタジー物には付き物の種族が存在するが、残りはNPC限定でプレイヤーは選択する事が出来ないようになっている。

 ただし、要望が多かったり、今後の展開上解放してもいいかな?って思ったら種族変更アイテムや第2陣以降で選択可能になるかもね?とは社長の言葉である。
 
「その顔して、その絶妙なボディバランスで、平凡平均とかのう....まあいいのじゃ。次は初期パラメーターのボーナスポイントの振り分けなのじゃ!」

  ユート(天城 勇人) 20歳
  種族 ヒューマン
  LV 1 職業 なし
  
  HP 150
  MP 100
  
  力  10
  体力 10
  敏捷  9
  知力  9
  魔力 10
  運  

 「10ポイントあるのじゃ、ステータスは1ポイントで1、HPとMPは1ポイントで10増やす事が出来るのじゃ。運は後で別の判定があるからスルー推奨なのじゃ」

 ふむ、パラメーターは大切だが、俺が最も重視している物はHPである。とにかく、死なない事が重要だ。死ななければどうとでもなる、が俺のゲーム内での口癖だ。

 だから当然こうなるわけだ。

  ユート(天城 勇人) 20歳
  種族 ヒューマン
  LV 1 職業 なし
  
  HP 250
  MP 100
  
  力  10
  体力 10
  敏捷  9
  知力  9
  魔力 10
  運  

 「HP極振りなのじゃ~、ちなみに現在設定が終了しているプレイヤーの中ではユートだけなのじゃ、30万人いるのにユートだけなのじゃ」

 それはそうだろう。事前調査では、最大HP増加アイテムが最も入手し易く、プレイの初期段階では攻撃力の高いモンスターは少な目である。
 更に、回復アイテムの種類も潤沢にあるから、使用後のクールタイムを気にする必要が無いし、初心者用の回復薬が大量に配られる予定だからだ。
 それに、スタートダッシュを決めるなら、効率的な経験値稼ぎの為にも、攻撃力は必須である。
 となれば、力なり魔力なりにポイントを振らないわけにはいくまい。

 「大丈夫だ、問題無い」

 「全然大丈夫じゃ無い気がする返事なのじゃ~。でも、この選択もユートの個性というやつなのじゃろう?それに、発表していない要素もあるのじゃ!楽しみになってきたのじゃ~」

 む?発表していない要素だと?選択を誤ったかもしれん。だが、それが良いと言った戦人もいるのだ、俺は公開しても後悔だけはしないぞ。

 「次は運なのじゃ!が~んばるのじゃ~!」

 前屈みになって、左手を左頬に当て、右手は右斜め下に伸ばす....あざとい!でも、カワイイ!

 ポン!という効果音と共に、目の前に野球ボールサイズの10面ダイスが2つ現れて、空中でクルクルと回転している。

 「0から9までの目が入ったダイスが2つあるのじゃ、赤が10の位、青が1の位なのじゃ!両方とも0の目が出たら100なのじゃ、0だけは無いから安心するのじゃ!」

 いや、1とか出たら十分悲惨だろ、考えるだけでも恐ろしい。

 「うんめ~のダイスロール!心して押すのじゃ!」

 俺に向かってクリスがビシっ!と右手で指を指す!背後で「ビシっなのじゃ!」という丸文字がふよふよ浮かんでいる。なるほど、狙ってるな!超カワイイ!

 すると、目の前にアニメやマンガなんかで出てくる、キノコの傘みたいな赤い丸ボタンが現れる....う~ん、良し。

 「わ!何するのじゃ~離すのじゃ!」

 両脇の下に手を入れてクリスを抱っこして、俺は叫ぶ!

 「よし、クリス!君に決めた!」

 戸惑っていたクリスだったが、俺が後ろで大声を出した事に驚いて、反射的に手を動かしてしまった。

 「え?え?のじゃ~~~!」

 ポフっと音がしそうなネコパンチでボタンが押されると、ダイスが空に飛びあがった。

 「あ、あ~押してしまったのじゃ~、ユートぉ!良かったのかのう?」

 「そんな申し訳なさそうな顔をするな。今回はクリスが俺の勝利の女神だっただけの事だ」

 ボンッと効果音がなりそうな勢いでクリスがゆでタコになった。

 (なにがでるかな~ なにがでるかな~ テレレレンレンテレレレン)  

 何か聞こえた気がするが気のせいだろう。

 青は......9!、問題の赤は.....9!

 「おおおおおおおおおおおおおっしゃぁぁぁああ!ファッタスティック!とっても良いね!」

 「のじゃああああああ!!!!やぁったのじゃユート!」

 思わず、クリスを抱っこしたままグルグル回ってしまったぜ!


  ユート(天城 勇人) 20歳
  種族 ヒューマン
  LV 1 職業 なし
  
  HP 250
  MP 100
  
  力  10
  体力 10
  敏捷  9
  知力  9
  魔力 10
  運  99


 さすがに都合良く100なんて事は無かったが、素晴らしい結果と言えるだろう、クリスGJと言わざるを得ない。 
 
 「運は増加アイテムが超希少な上に、一回だけしか使えないほとんど固定ステータスなのじゃ!ユートやったのじゃ」

 つまり、俺は必然的に最後には100になるわけだ。やったぜクリス!

 「俺の人生はクリスから始まったと言っても、過言では無くなったな!サンキュー♪」

 「て、照れるのじゃ、にゃぅ~」

 腰の辺りで服を握り締めながら、モジモジクネクネしている.....何あのカワイイ生き物、お持ち帰りしてもいいかなぁ?いいよねぇ?

 「これで、ドロップアイテムの確率から、その他諸々色んな判定で有利になる事間違い無しだ。さて、クリスたんいつまでもモジモジしてないで、次に進もうぜ?」

 「う、うむ、分かったのじゃ。それではチュートリアルを開始するかの?」
 
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