勇者様の荷物持ち〜こんなモテ期、望んでない!〜

綺沙きさき(きさきさき)

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第1章 異世界でも俺はこき使われる

18

荷物、という言葉にふと、チェルノがくれた光玉のことを思い出した。
ズボンのベルトにくくりつけている袋から光玉を取り出す。
何かあった時のために、念のためいつも持ち歩いているのだ。
ゴクリと唾を飲んで、臆病虫を腹の底に追いやった。

さっき俺を叩きつぶそうとした蔦の残骸が地面でまだのたうっているが、だいぶ動きは弱まっていた。
俺は足で蔦を踏みつけて、突き刺さっているドゥーガルドの剣を抜き取った。
剣を抜いたと同時に、黒い血しぶきのようなものが出てきて足下を濡らしたが気にしてなんてられない。

「ドゥーガルド! 足下に投げる! 受け取ってくれ!」

引き抜いた剣を思い切りドゥーガルドの方へ投げた。
少しずれたけれど、確かに剣はドゥーガルドの足下近くに落ちた。
ドゥーガルドは蔦に応戦しながら、困惑した表情で俺と剣を交互にみた。

「剣を拾って少し下がってくれ! 今から光玉を投げる! 目もつむっていてくれ!」

ドゥーガルドの困惑の表情が深まったが、すぐに剣を拾うと、そのままモンスターと距離をとった。

よし! 今だ!

なるべくモンスターの近くを狙って地面に光玉を叩きつけた。
すると、チェルノが言っていた通り目を焼くような白い光が放たれた。
モンスターが悲鳴のようなうめき声を上げた。
俺の視界が正常になってもまだモンスターの方はのたうちまわっている。
どうやらモンスターに有効な光のようだ。

とどめをドゥーガルドに頼もうと思ったが、どこにもドゥーガルドの姿はなかった。

「ドゥーガルド!?」

まさか逃げたとか!?

ありえないと思ったがどこにもいない。

う、嘘だろ!?

絶望的な気持ちでその場に膝から崩れ落ちていると、

「うおぉぉぉぉ!」

勇ましい猛り声が頭上から降ってきた。
空を降り仰ぐと、ドゥーガルドが剣を両手で降り構えて落下してきていた。
そしてそのまま、モンスターを頭から真っ二つに切り裂いた。
その瞬間、血しぶきのようにモンスターの中心から黄色い液体が噴き上がった。
あたりに胃がムカムカするほどの甘いにおいが立ちこめた。

「ドゥーガルド!」

モンスターの飛沫が止んでから、俺はドゥーガルドのもとへ駆けつけた。
ドゥーガルドはモンスターに突き刺した剣に寄りかかりながら何とか立っているという感じだった。

「だ、大丈夫? もしかしてどこかケガしてるとか……」
「……いや、大丈夫だ。だが、体が熱くて……。毒かもしれない。あまり俺にふれない方がいい」

俺は慌ててドゥーガルドの背中をさすっていた手をどけた。
確かに、ドゥーガルドの体は粘りのある液体で濡れていた。
恐らく最後にモンスターが噴き出した液体だろう。
肩で息をするドゥーガルドの目は赤く潤んでいて苦しそうだった。

ガサガサ……ーー

ぐったりとしたモンスターの体が不意に動いた。

まだこいつ生きているのか!?
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