勇者様の荷物持ち〜こんなモテ期、望んでない!〜

綺沙きさき(きさきさき)

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第1章 異世界でも俺はこき使われる

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「うっがぁ……っ!」

低い呻き声が広間に響いた。
それはアーロンたちではなく、魔王のものだった。
どうやらアーロンたちの攻撃がきいたようで、魔王がその場にうずくまった。

やった……!
勝利の兆しが!

暗雲が立ちこめていた俺の未来に一筋に光が差した。

しかし、

「……いや、まだだ。お前はまだいける」

慶介がそう言うと、手の中の闇色の玉から雷のような光が放たれた。
そしてそれは魔王の元に落雷した。

「うがぁぁぁぁ……っ!」

魔王が呻き声を上げた。
とどめを刺したようにしか見えなかったが、光を受けた魔王は何とゆらりと立ち上がったのだ。

「邪神様のお力が……! 漲る! 漲ってきたぞ!」

咆哮のような声でそう叫ぶと、次には今まで以上の速さで大剣を振り回し始めた。
これにはアーロンたちも驚いており、凶暴な大剣の切っ先をかわすだけで精一杯といった様子だった。

そ、そんな……!

希望の光が絶たれたような気持ちになった。
今の状況では、アーロンたちが負けるのも時間の問題かもしれない……。
俺は辺りを見回した。
何か、何か少しでもみんなの有利になるような状況を作れないか。
ふと、慶介の手にある暗黒の玉が目にとまった。

……あれは一体なんなんだ?

そう考えた時に、ひとつ考えられるのは、邪神である慶介の魔力か何かなのではないかということだった。
あの玉から放たれた光を受けた魔王の復活具合がその証拠だ。
つまり、邪神であるアイツは、魔王やモンスターに魔力を与えることができるのではないか。
ここに着くまで簡単に倒せていたモンスターが強くなったのもそれなら納得がいく。
慶介はずっと戦いが始まってから、あの玉を掲げていた。
俺と話す時でさえだ。
しかも、こちらを振り返ることもなかった。
そのことから、もしかすると、魔力の供給は相当な集中力を使うんじゃないという予測に至った。
なら、奴の集中力を乱せば、何らかの隙が生まれるんじゃないか。

そこまで考えて、いやそこまで上手くいくわけがない、と自分の安易な考えに首を振った。

「……っ!」

魔王の大剣がドゥーガルドの腹部をかすめた。

「ドゥーガルド!」

幸いにも致命傷のような深い傷ではないようだが、その表情は苦しげだ。
戦況はますますこちらが不利になっているのは明らかだ。

……俺の予想が当たってるかなんか分かんないけど、やってみるしかない!

俺はギュッと拳を握った。
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