【完結済】ラスボスの使い魔に転生したので世界を守るため全力でペットセラピーしてみたら……【溺愛こじらせドS攻め】

綺沙きさき(きさきさき)

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 なぜなら、ギディオンはこの物語『グランド・マギ』で世界を憎み、世界を滅ぼす冷酷無慈悲な最凶のラスボスなのだから……。
 シリルは前世でプレイしたゲーム『グランド・マギ』のバッドエンドを思い出しながら、思わず身震いした。
 そんなシリルを見てコゼットは同情の目を向けた。

「可哀想にな。あんな冷酷な大魔術師の使い魔とは、お前もついてないな」
「いや、別にそんなことは……」
「その上、家に閉じ込められて。俺だったら三日で発狂するぜ」
「いや、もともと俺、引きこもりタイプだから割と平気。仕事が休みの日も家でゴロゴロ、スマホでゲームしてたりしてたし」
「スマホ?」

 聞き慣れない言葉に目をパチパチと瞬かせるコゼットに慌てて「な、なんでもない」と答える。

「ま、まぁ、とりあえず、この生活に大きな不満はないってこと!」
「そうか? ならいいが、もしこの家を出たくなったらいつでも言えよ。特別に俺の子分として面倒みてやる」

 羽を胸に手をあてて言うコゼットに、シリルは目を細めた。

「ありがとうな。その時はお願いするよ」
「おう、任せておけ。……って、噂をすれば何とやらだな。ご主人様のお帰りだ」

 窓の外を見下ろしながらコゼットが言うので、シリルも横から顔を出して下を見る。すると、家に向かってくるギディオンの姿が見えた。
 森で一番の大樹を魔術で隠れ家としており、シリルたちがいる場所がその上の方であるため、ギディオンは気づいていないようだ。

「それじゃあ、俺はここで失敬するぜ」
「ああ、気をつけて」

 コゼットを見送ってから、シリルはすぐに壁に取り付けられた棚を渡るようにしながら、ぴょんぴょんと飛び移っていき、下の玄関まで向かった。
 足が床に着地したと同時に、玄関の扉が開いた。

「おかえり。久しぶりに王宮まで行ったから疲れただろう」

 無表情で、ふぅ、と小さく溜め息をつきながら扉を閉めるギディオンに、労るように声をかける。すると、ギディオンは無言で視線をスッとこちらに落とした。
 しかし、沈黙はほんの一瞬だった。

「シリル~~~~!」
 
 今までの冷たい無表情が嘘のように消え去り、緩みきった顔でシリルを抱き上げると、そのまま勢いよく頬ずりしてきた。

「はぁぁぁ、なんて可愛い、僕の天使……! 会いたかったよ! シリルの久しぶりの匂い、最高すぎる……!」
「や、やめろー!」

 シリルの腹に顔をうずめ、全身の匂いを吸い取るかのように深く呼吸するので、シリルは背中を弓なりに反らして距離を取ろうとした。しかし、人間と猫、その力の差はたとえ渾身の力を振り絞っても容易く手の平に収められてしまうほどだ。

「もうっ、毎回やめろって言ってるだろ! くすぐったいんだよ! こちとら服を着てないから直にお前の荒い息がかかって気持ち悪いんだよ!」
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