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「類瀬博士! どうしました?」
「ちょっと佐久間君に聞きたいことがあって……って、あらぁ、伊大知征弘九段とお話中
? あとにしようかぁ?」
「いえいえ! 今、ここで話してくださいっ」
俺は必死に類瀬博士の両肩を掴んで引き留めた。
話題を変える絶好のチャンスだ。逃すわけにはいかない。
「あらそう? じゃあこの間話した件のことだけど、参考資料が届いたから見てくれる?」
「はいはい、この間の件ですね、了解しました」
正直なところどの件だろうと思いながらも、藁にも縋る想いで差し出された雑誌を受け取った。
しかしその表紙には『男根フェア!』『この男性器がやばい!』などの卑猥な言葉の羅列や、男性器を模したグロテスクな玩具が所狭しと並んでいた。
「ぎぃやぁぁぁ!!」
思わず床に雑誌を叩き付けた。
「ちょっと大声で変な声上げないでちょうだい。一緒にいる私たちが恥ずかしいわ」
「いやいや、この雑誌の方が数億倍恥ずかしいですよね! セクハラですか!? 訴えますよ!」
「いやねぇ、佐久間君なんかにセクハラするわけないでしょ。それに私のような美女がセクハラしても相手も喜ぶから合法よ」
得意げに胸を張る上司に俺は頭が痛くなってきた。
「じゃあセクハラじゃなかったら何だって言うんですか……」
「だからこの間の話よ。京司郎ちゃんにつける男性器、どれがいい?」
「ここでする話ですか!?」
「だって、佐久間君が今ここでって言ったんじゃない」
「言ったけれども……っ」
俺は頭を抱えた。確かに言ったが、まさか公共の場でこんなものを出されるなんて誰が思うだろうか……。
「というかこういうのは本人に訊いた方がいいんじゃないんですか」
もう自棄になって投げやりに言うと、
「いえ、主殿に決めて頂きたいです」
いつの間にか床に落ちた雑誌を拾って京司郎が差し出した。
「なんで俺が……」
「だって主殿の中に入れるんですから、主殿が心惹かれるものを選んで欲しいのは当然じゃないですか」
「……へ?」
今、とんでもない言葉が聞こえたような気がするんだが……。
とんでもない言葉すぎて頭が理解を拒否しているのか、フリーズ状態になった。
「やはり無難にランキング一位のものがよいかもしれませんね。あ、こっちに初心者向けっていうのもありますがいかがでしょうか」
「えー、初心者向けってライトすぎて刺激がなさそうじゃない? それよりランキングのベスト三十を全部買って、日替わりで順位上げていくのは? 最後に一位のやつが残ってたら佐久間君もわくわくするんじゃない? そしたらヤってる最中も『一位のはこれよりすごいんだ……』って期待して締め付け強くなりそう」
「類瀬殿……! 貴方はやはり天才です!」
「ふふ、よく言われるわ」
雑誌を覗き込みながらきゃっきゃと盛り上がる二人の会話が頭に入らない。
いや、入るのだが完全に頭が拒否反応を示して、俺は呆然と立ち尽くすばかりだった。
すると、ユキヒロの手が伸びてきてその雑誌を奪い取った。
そして京司郎たちが抗議の声を上げる間もなくビリビリとそれを引き破いた。
「ちょっと佐久間君に聞きたいことがあって……って、あらぁ、伊大知征弘九段とお話中
? あとにしようかぁ?」
「いえいえ! 今、ここで話してくださいっ」
俺は必死に類瀬博士の両肩を掴んで引き留めた。
話題を変える絶好のチャンスだ。逃すわけにはいかない。
「あらそう? じゃあこの間話した件のことだけど、参考資料が届いたから見てくれる?」
「はいはい、この間の件ですね、了解しました」
正直なところどの件だろうと思いながらも、藁にも縋る想いで差し出された雑誌を受け取った。
しかしその表紙には『男根フェア!』『この男性器がやばい!』などの卑猥な言葉の羅列や、男性器を模したグロテスクな玩具が所狭しと並んでいた。
「ぎぃやぁぁぁ!!」
思わず床に雑誌を叩き付けた。
「ちょっと大声で変な声上げないでちょうだい。一緒にいる私たちが恥ずかしいわ」
「いやいや、この雑誌の方が数億倍恥ずかしいですよね! セクハラですか!? 訴えますよ!」
「いやねぇ、佐久間君なんかにセクハラするわけないでしょ。それに私のような美女がセクハラしても相手も喜ぶから合法よ」
得意げに胸を張る上司に俺は頭が痛くなってきた。
「じゃあセクハラじゃなかったら何だって言うんですか……」
「だからこの間の話よ。京司郎ちゃんにつける男性器、どれがいい?」
「ここでする話ですか!?」
「だって、佐久間君が今ここでって言ったんじゃない」
「言ったけれども……っ」
俺は頭を抱えた。確かに言ったが、まさか公共の場でこんなものを出されるなんて誰が思うだろうか……。
「というかこういうのは本人に訊いた方がいいんじゃないんですか」
もう自棄になって投げやりに言うと、
「いえ、主殿に決めて頂きたいです」
いつの間にか床に落ちた雑誌を拾って京司郎が差し出した。
「なんで俺が……」
「だって主殿の中に入れるんですから、主殿が心惹かれるものを選んで欲しいのは当然じゃないですか」
「……へ?」
今、とんでもない言葉が聞こえたような気がするんだが……。
とんでもない言葉すぎて頭が理解を拒否しているのか、フリーズ状態になった。
「やはり無難にランキング一位のものがよいかもしれませんね。あ、こっちに初心者向けっていうのもありますがいかがでしょうか」
「えー、初心者向けってライトすぎて刺激がなさそうじゃない? それよりランキングのベスト三十を全部買って、日替わりで順位上げていくのは? 最後に一位のやつが残ってたら佐久間君もわくわくするんじゃない? そしたらヤってる最中も『一位のはこれよりすごいんだ……』って期待して締め付け強くなりそう」
「類瀬殿……! 貴方はやはり天才です!」
「ふふ、よく言われるわ」
雑誌を覗き込みながらきゃっきゃと盛り上がる二人の会話が頭に入らない。
いや、入るのだが完全に頭が拒否反応を示して、俺は呆然と立ち尽くすばかりだった。
すると、ユキヒロの手が伸びてきてその雑誌を奪い取った。
そして京司郎たちが抗議の声を上げる間もなくビリビリとそれを引き破いた。
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