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不思議な玉
不思議な玉
しおりを挟む自転車で河川敷を走ると遠くに山が見えた。
「あの山って、前に尚輝と一緒にハイキングに行ったところかしら」
そういうと私は尚輝と一緒にハイキングに行った楽しい光景が頭に浮かんだ。
とても楽しかったなあ。また、あの時みたいに楽しく過ごしたいなあ。
そう思うと私は山に向かって自転車を走らせていた。風がとても心地よい。季節の香りがする。私は久しぶりにさわやかな気分で自転車を山に向かって走らせていた。
「でも、山ってここから遠いよね。行けるところまでにしよ」
私は自転車を走らせることは気持ち良かったけど、早く帰らないと人と会うと思い、そのことが怖くて時間を考えた。
でも、山はどんどん近づいてくる。まるで向こうからやってくるように。
あれ?あんなに近くだったかしら?
私がそう思うほど、山はもう間近になっていた。
気がつくと山道の入口についていた。私は自転車からおりると山道に向かって歩き出した。
ずっと登れば、尚輝と一緒にハイキングに行った道に出るはず。
「この道だよね。間違いない」
そういうと私は尚輝と一緒にハイキングに行った道を登り出した。
どんどん歩いていく。鳥の声、川のせせらぎも気持ちいい。
「あれ?道間違えたのかしら?こんな景色じゃなかったわよね」
私は道に迷ったと思った。その時、何かが私に語りかける。
「……もっと……もっと奥です……」
私はぞっとして、その場から立ち去ろうとしたけど体が動かない。登ることしかできない。
「……怖がることはない……あなたをお待ちしておりました」
その声は最初はぞっとしたけど、しだいにおだやかに感じてきた。私は言われるままに、さらに奥に登った。
すると、全身緑色の人が立っていた。まるで周りの木々と同化するかのように。
「よくお越しになられた。あなたをお待ちしておりました。あなたに与えるものがあります」
そういうと全身緑色の人はキラキラ輝く虹色の玉を差し出した。
「この玉は選ばれた3人の人間しか扱うことができません。あなたは一番最初に来られた。あなたは最も選ばれた人間です。この玉はなんでもできます」
「選ばれた3人?」
全身緑色の人の言葉に私は思わずそう言った。全身緑色の人はさらに続けた。
「そう、人類で3人だけが扱えます。あなたの他に2人いたが、あなたが最初に来られた。あなたは選ばれた人間です。この玉は善にも悪にもなります。どう使うかはあなたの自由です」
そういうと全身緑色の人は私に不思議な虹色に光る玉を渡した。
「確かに受け取りましたね。もう玉はあなたのもの自由にお使いください。人の幸せの為でも、不幸せの為でも」
そういうと全身緑色の人は消えた。周りは川のせせらぎと時々聞こえる鳥の声だけになった。選ばれた人間?私が?
私は言葉に表せない出来事に出会い、しばらくその場で呆然としていた。ただ玉だけが鮮やかにきらびやかに虹色に光っていた。
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