私と彼の八年間〜八年間付き合った大好きな人に別れを告げます〜

桜百合

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二人のその後・番外編

番外編:初体験 4※

「腰上げて」

 言われるがまま、僅かに腰を上げるとその隙にショーツを抜き取られる。

「待って俊、ひゃっ……」

 くち……と音を立てて彼の指が足の間に触れた。
 当たり前ではあるが自分以外が触れたことのない場所に、俊が触れているのだという事実が信じられない。

「濡れてる」
「っ……いちいちそういうの言わないで!」
「ごめんっ……でも初めてだからうまくできてるか心配で」
「え……初め、て?」

 俊の口から紡ぎ出された言葉が信じられなくて、思わず瞬きを繰り返す。
 今、彼は初めてだと言っただろうか。
 それは誰ともこうして体を繋げたことはないのだという意味で……。

「何だよ、悪いか? 葵が初めての彼女なんだから当たり前じゃん」

 私の反応が面白くなかったのか、俊はムッとしたような表情を浮かべている。
 信じられなかった。
 彼が女子生徒から告白される場面を、何度も目にしてきたから。
 一度くらいそうした経験があると思ってしまうのも、仕方のないことだろう。

「ううん……嬉しい。でもびっくりしちゃって」
「なんで?」
「俊はモテるでしょ。告白もいっぱいされてたじゃん」

 事実を言っているだけなのだが、なんだか少し悲しくなった。
 それはこれから嫌でも遠距離生活となってしまうことへの、不安から来ているのかもしれない。
 きっと私の見えないところで、同じように大学の女性たちから告白をされるのだろう。

「だから何? 俺が好きなのは葵だよ」

 ぼそっとそう呟いた俊は、少し怒っているように見えた。
 彼は私の両手首を押さえつけ、組み敷くようにして上から見下ろす。

「葵こそ、都会に出て色んなこと知って、俺なんかじゃ物足りなくなったら……」
「んっ……」

 反論しようとした口を、キスで塞がれる。
 舌が入り込み、口の中をかき乱す。

「あっ、俊だめ!」

 彼は先ほど触れた場所に再び手を伸ばし、恐る恐るといった感じで指を押し込んだ。
 ヒリつくような痛みと、異物を受け入れた違和感で体が強張ってしまう。

「力抜いて」
「っ……でき、ない」

 初めての行為でまだ彼を受け入れるには不十分なそこを、指でゆっくりと叩くようにして刺激される。

「ふ、あっ……やっ……」

 引き攣れていた違和感が少し薄まり、指の動きが次第に滑らかなものへと変わっていった。

「痛くない?」

 時々不安げな顔でそう尋ねる彼に対して頷きを返すと、ホッとしたような顔で微笑まれる。
 その顔に胸がドキドキと高鳴り、体がきゅんと疼いた。

「っ……今キツくなった」
「だからそういうのは言わなくていい!」

 恥ずかしくなって両手で顔を覆うが、その手をあっさりと外される。

「顔見たい」

 耳元で熱く囁かれ、未だに足の間に埋めたままの指が次第に動きを早めていく。
 中からぬるりとしたものが滲み出てきたことに気づいた俊は、ある一点を擦り続けた。

「ん、そこ何かダメ! 変な感じがする、から……」

 しかし指は止まることを知らず、擦られた場所が熱を帯びて灼けるように熱い。

 すると突然指を引き抜かれ、急速に熱が冷めていく。
 これまで狭い入り口を満たしていたものがなくなり、どことなくひんやりと寂しさを感じてしまった。

「はあっ……もう無理。我慢の限界。ごめん葵」

 切羽詰まったようにそう告げた俊は、身につけたままであった衣服を脱ぎ捨てていく。

 ガチャガチャとベルトを外す音が、なんだかとてつもなくいやらしく聞こえてしまうのは気のせいだろうか。
 いけないことをしているような気がして、その背徳感にゾクゾクとした何かが湧き上がってきた。

ボクサーパンツ一枚のみになった俊はベットから降りると、ガタン! と音を立てて机の引き出しを開ける。
 そして中から何やら箱を取り出し、それを開けてさらに中身を一つ取り出すとこちらへ戻ってきた。

「あ……」

 さすがの私でも、今彼が手にしているものが何かはわかる。

「……いつそうなってもいいように。って、俺キモいな」
「ううん、そんなことない」

 きちんと私のことを考えてくれている。
 それだけで、この人を好きになってよかったと心が満たされた。

「つけるとこ、見ないで」
「え、なんで?」
「見られてると緊張してうまくできないから」

 気まずそうに視線を逸らした俊の姿に笑ってしまいそうになるが、そこは素直に従うことにする。
 そっと目を閉じると、袋を破く音が聞こえた。
 恐ろしいほどの静寂の中で、彼がゴムを装着している音だけが聞こえてくる。

 ──ある意味この方が気になって仕方がないんだけど……。

 やはり彼はその言葉通り装着には慣れていないようで、少し時間はかかっただろうか。
 やがてギシ……とベッドが揺れたことでそっと目を開けると、欲を孕んだ顔でこちらを見下ろす俊と目が合う。

「痛いかもしれないけど、ごめん」

 彼はもう待てない、とでもいうように私の両足を広げると、その間に体をねじ入れるようにして割り込んでくる。
 そしてすぐに硬いものが宛てがわれた。
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