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二人のその後・番外編
番外編:ほろ苦くて甘いバレンタイン②
そうこうしているうちに月日は流れていき、あっという間にバレンタインの時期を迎えた私たち。
俊は地元の大学を受験することが決まっていたが、彼の実力ならば安心して受験に望むことができるだろう。
そして俊は、私も同じ大学を受験するのだと信じきっている。
内々で推薦の話を進めていたのだが、もちろんそんな話は彼にはしていない。
この事実を知っているのは仲の良い友人一人だけで、卒業するまで彼に話すつもりはなく、黙って地元を出ようと決めていたのだ。
「ね、葵。バレンタイン、長谷川にあげるの?」
そんなある日の休み時間のこと。
友人の彩花が私の席へやってくるなり、こそこそと尋ねてくる。
翌日に控えたバレンタインを前に、教室中がなんだか浮き足立っているように思えた。
きっと受験というストレスから、一瞬の非日常を求めていたのかもしれない。
「うーん……どうしようかなって」
「なんで? 渡してそこで告っちゃえばいいのに」
「そんなのできるわけない……」
私は自分に自信がなかった。
胸元まである黒髪をポニーテールにしただけの化粧っ気のない姿は、女子から人気のある俊と並ぶには不釣り合いだ。
自分なりにメイクもしてみたことはあるのだが、いまいちしっくりこずに結局そのままになっていたのである。
そして何より、彼に振られるのが怖くてたまらない。
これまで築き上げてきたキラキラの思い出たちが崩れ去ってしまうくらいなら、最初からこの恋心は胸にしまっておくべきなのだろう。
「でも長谷川人気あるし、彼女できちゃうかもよ。それでいいの?」
「いいも何も、私にはそんなこと言う権利……」
「私は、葵に後悔してほしくないから」
じっと目を見てそう言うと、彩花は自分の席へと戻っていった。
彼女の後ろ姿をぼんやりと目で追いながら、私は考える。
気持ちを伝えることができなかったとしても、最後にチョコの一つくらいあげることは許されるのではないかと。
俊への恋心を隠し通せば、これまで通り何一つ変わらない関係のままでいられる。
──ううん、そんなこと考えているけど本当は……。
自分が傷つかないように保険をかけているだけで、実際はチョコを渡すことで俊から告白してもらえないだろうかという淡い期待を抱いていたのかもしれない。
結局私はいつまで経っても臆病者なのだ。
その日、私は学校帰りに寄り道してチョコの材料を買い込むと、帰宅してすぐにキッチンに立った。
はじめは簡単な生チョコでも……と考えていたが、気づけばタルト型やトッピングなど様々な材料を買い込んでいた自分に驚いてしまう。
そして作り上げたお菓子たちを丁寧にラッピング袋に入れた。
ハートの模様の袋やリボンを使うのはなんだか気恥ずかしくて、シンプルなものを選択した自分の情けなさに笑ってしまう。
──本当に好きだったんだなぁ……。
恋は人を臆病にする。
彼に恋をして初めて知ったことだ。
月日が流れて大人になり、自分に自信がついたなら……いつかは胸を張って俊と会える日が来るのだろうか。
そんなことを考えながら、詰め合わせたお菓子を鞄の中へとしまい込む。
何はともあれ、これで明日の用意は完璧だ。
あとはこのお菓子を俊に渡すだけである。
明日は授業が六限まであり、最後は体育のはず。
着替えた後は各自自由解散のため、その時がいいだろう。
もしもバレンタインを渡したことで気まずくなったとしても、そのまま急いで家に帰ってしまえばいい。
安易にそう考えていた私の目論見は、あっさりと外れることとなってしまった。
俊は地元の大学を受験することが決まっていたが、彼の実力ならば安心して受験に望むことができるだろう。
そして俊は、私も同じ大学を受験するのだと信じきっている。
内々で推薦の話を進めていたのだが、もちろんそんな話は彼にはしていない。
この事実を知っているのは仲の良い友人一人だけで、卒業するまで彼に話すつもりはなく、黙って地元を出ようと決めていたのだ。
「ね、葵。バレンタイン、長谷川にあげるの?」
そんなある日の休み時間のこと。
友人の彩花が私の席へやってくるなり、こそこそと尋ねてくる。
翌日に控えたバレンタインを前に、教室中がなんだか浮き足立っているように思えた。
きっと受験というストレスから、一瞬の非日常を求めていたのかもしれない。
「うーん……どうしようかなって」
「なんで? 渡してそこで告っちゃえばいいのに」
「そんなのできるわけない……」
私は自分に自信がなかった。
胸元まである黒髪をポニーテールにしただけの化粧っ気のない姿は、女子から人気のある俊と並ぶには不釣り合いだ。
自分なりにメイクもしてみたことはあるのだが、いまいちしっくりこずに結局そのままになっていたのである。
そして何より、彼に振られるのが怖くてたまらない。
これまで築き上げてきたキラキラの思い出たちが崩れ去ってしまうくらいなら、最初からこの恋心は胸にしまっておくべきなのだろう。
「でも長谷川人気あるし、彼女できちゃうかもよ。それでいいの?」
「いいも何も、私にはそんなこと言う権利……」
「私は、葵に後悔してほしくないから」
じっと目を見てそう言うと、彩花は自分の席へと戻っていった。
彼女の後ろ姿をぼんやりと目で追いながら、私は考える。
気持ちを伝えることができなかったとしても、最後にチョコの一つくらいあげることは許されるのではないかと。
俊への恋心を隠し通せば、これまで通り何一つ変わらない関係のままでいられる。
──ううん、そんなこと考えているけど本当は……。
自分が傷つかないように保険をかけているだけで、実際はチョコを渡すことで俊から告白してもらえないだろうかという淡い期待を抱いていたのかもしれない。
結局私はいつまで経っても臆病者なのだ。
その日、私は学校帰りに寄り道してチョコの材料を買い込むと、帰宅してすぐにキッチンに立った。
はじめは簡単な生チョコでも……と考えていたが、気づけばタルト型やトッピングなど様々な材料を買い込んでいた自分に驚いてしまう。
そして作り上げたお菓子たちを丁寧にラッピング袋に入れた。
ハートの模様の袋やリボンを使うのはなんだか気恥ずかしくて、シンプルなものを選択した自分の情けなさに笑ってしまう。
──本当に好きだったんだなぁ……。
恋は人を臆病にする。
彼に恋をして初めて知ったことだ。
月日が流れて大人になり、自分に自信がついたなら……いつかは胸を張って俊と会える日が来るのだろうか。
そんなことを考えながら、詰め合わせたお菓子を鞄の中へとしまい込む。
何はともあれ、これで明日の用意は完璧だ。
あとはこのお菓子を俊に渡すだけである。
明日は授業が六限まであり、最後は体育のはず。
着替えた後は各自自由解散のため、その時がいいだろう。
もしもバレンタインを渡したことで気まずくなったとしても、そのまま急いで家に帰ってしまえばいい。
安易にそう考えていた私の目論見は、あっさりと外れることとなってしまった。
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