【R-18】世継ぎのできない王太子妃は、離縁を希望します

桜百合

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本編

続編3

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 私が王城から実家へと転移してから二日目の夜のこと。
 結婚前まで使用していた自分の部屋で湯浴みを済ませくつろいでいた私は、突然目の前に現れたその人の姿に言葉を失っていた。

「え、あの……フィリップ……様?」

「迎えにきたよ、エスメラルダ」

 現れたのはフィリップ様であった。
 フィリップが私を追ってくることのないように結界魔法をかけていたというのに、なぜ彼はここにいるのだろうか。

「なぜ私がきたのかわからないって顔をしているね?」

「べ、別に……そんなことありませんわ」

「私も同じ過ちは二度と繰り返さない。この二日間徹夜で魔力の訓練を極めたからね。もう君のかける結界魔法を破ることだってできるんだ」

 そう、以前私が魔法を使ってフィリップ様の動きを遮断したこと彼は根に持っていたらしい。

「お帰りくださいませフィリップ様」

「帰るのは君の方だろう? 君の家は王城だ! 私の隣だ!」

 フィリップ様の声がどんどんと大きくなっていく。

「家族に気付かれますわ、声を落としてくださいませ」

「……すまない」

 そこは私の忠告を素直を受け入れてくれたらしい。
 フィリップ様は気まずそうにそう謝った。

「私はもう嫌なのです、あなたに行動を制限されて息が詰まりそうですわ。そんな生活全く楽しくありません」

「エスメラルダ、君のお腹の中にいる子は大切な世継ぎだ。その子に何かあったら君はどうする? そして君の身に何かあったら……」

「私は遠くに行きたいと言っているわけではありませんわ。お城の中だけは、自由に身動きできるようにしていただきたいだけなのです」

「わかったよエスメラルダ、私も最大限譲歩するから……」

 そう言うと彼は私の頬に手を当てて、熱を持った瞳でこちらを見つめてくる。

「エスメラルダ、君を愛しているよ。君がいなければ眠ることができない。戻ってきておくれ」

 フィリップ様はそう言って私を抱きしめる。

 ああ、なんだかんだ言ってもここが一番落ち着くのよね……。

 ふわりと香る、いつものアクアマリンの香りが私の心を絆しかけたその時。

「え……?」

 フィリップ様は私の様子がおかしいことに気付いて怪訝そうに顔を覗き込んだ。

「エスメラルダ? どうかした? 体調でも……」

「……がう……」

「え?」

「香りが違いますわ!」

 いつもと同じフィリップ様の香りの中に、ツンと鼻をつく甘ったるい香りがした。
 妊娠していることもあり匂いに敏感になっていた私にとって、その違いは明白であった。

「香りって何がだい……?」

 フィリップ様は、心底何を言っているのかわからないと言う表情でこちらを伺う。
 だが、確実にこの香りはフィリップ様のものではない。
 男性が身にまとうにしては甘すぎるその香りは、明らかに他の女性のもので間違いないだろう。
 そして、体に残り香がまとわりつくほどに密着したということになる。

「フィリップ様の香りに、別のお方のものが混じっておりますわ」

「そうかな? 自分では全然わからないけど……」

 くんくんと自分の体の匂いを嗅いで首を傾げるフィリップ様。
 私の心の中で黒い靄が広がっていく。
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