笑ってはいけない悪役令嬢

三川コタ

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主人公登場 入学式 編

門6

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煩悩に打ち勝ったのだろうか、ラビネの鈴の音が収束し花びらはなくなった。

「・・・え?」
 そうすると驚くことに、ラビネは脱いでアイに渡していた制服の上着を、いつの間にか着ていた。
「へ?やだっ。」
 ブラウスのハートの穴を隠す為、アイが胸元に持っていたラビネの上着は無くなり、谷間が無防備に晒された。

「制服が勝手に戻ってきた?なんだこれは。」
「わかんないっ。気付いたら無くなってたっ。何が起きてるの?」
 理解に苦しむ現象で取り乱すアイに、ラビネは手に持っていた、語尾を確認する文章が書かれた四つ切りの画用紙を渡した。
「取り敢えずこれで胸を隠して。」
 アイが受け取った画用紙を胸のハートにあてがった瞬間、画用紙が消えた。
「キャーっまた無くなった?何?」

「・・・どういうことだ?ファウスト?」
「私にもわからない・・・。」
 ラビネが縋るようにファウストに訊ねたが、王族の情報にも無いらしい。
 俺も勿論、聞いた事がなかった。フラリスは花びらを降らしてる場合ではなくなり、唖然としていた。

「・・・これで隠してみて。」
 キャルクレイにしたように、アイに俺のハンカチで胸を隠させてみた。
 しかし拡げたハンカチをアイが胸元に当てると同時に、ハンカチは消えた。
(ラビネの上着が、着た状態に戻ったという事は・・・。)
 俺はハンカチを入れていたスラックスのポケットに手を入れる。
「・・・折りたたまれてポケットに戻っている・・・。」
 スラックスのポケットからハンカチを取り出すと、ファウスト達は息を飲んだ。


「何かあったの?」
 異様な雰囲気を悟ってイコリスが心配そうに、俺達の所へやって来た。
 俺はアイの強制力の結果と、不可思議な現状を説明した。

「・・・ハートに空いてる部分を隠す事は許されないのね。」
「うぅ。これじゃ露出狂ですぅ。」
 握った両拳を顎にあてて、アイが悲しそうに言った。
「そんなっ。露出狂には見えないわ。すごく可愛い衣装よ。男性受けも良いと思うっ。」
(・・・制服ではなく衣装と言っちゃってるよ。)
 俺は心の中でイコリスに指摘した。

「うーん。淫らな意味で男性受けが良くなるのは・・・ちょっと・・・。」
 男である俺が口を出す訳にはいかないので、ここはイコリスに任せるしかない。
 ファウスト達も押し黙っている。
「ち、違う。踊り子や歌手みたいで可愛いって意味で。えっと、その、踊り子とかほど肌を出してないし・・・とにかく、可愛い感じが炸裂してて、とても良いと思うってこと。」
「・・・フフッ・・・ありがとうございますぅ・・・。」
 少しだけ笑顔が戻ったアイにイコリスは安堵し、そして俺を見た。
 足りないところを補ってくれとの意味だろう。

「確かに可愛いんだけど、年頃の男子を刺激してしまうのも事実だよ。女子からの反感も予想されるね。」
 俺の言葉にアイはしゅんとした。イコリスはおろおろしている。
「生徒会から極めて特異な例として、アイの制服が変質した事を発表して、騒がないよう予め釘を刺しておいたらどうかな。少なくとも、女子からの余計な悪感情は避けられるんじゃない?」
 俺はファウストへの提案を、敢えてアイに聞かせながら言った。

「・・・今年から現れた強制力の一つとして、学生に周知しても良いかもしれない。・・・アイ、実は今年初めて見る強制力が、他にもいくつかあったんだよ。」
 ファウストの説明に、アイが顔を上げた。
「私みたいな強制力があったんですか?」
「いや・・・髪や顔立ちとか、語尾への強制力で、制服が変わったのはアイだけだ・・・。」
「そうですかぁ。」

 もう前髪は揺らしていないフラリスが、ファウストへ問いかける。
「発表するにしても、今すぐは無理だよね?」
「ああ、入学式終了後に教員や理事と協議してからになるだろう。」
「じゃあ、入学式は・・・。」
 フラリスは、これから行われる入学式を心配していた。

 貴族の学生だけでなく平民の学生にも等しく、恋愛感情に通じる好意は演出効果が適用される。
 演出効果は屋内外問わないので、大講堂に桜の花びらが降りまくりかねない。
 入学式らしいと言えば、らしいが・・・。
「私達で完全包囲しましょう。」
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