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哀3
しおりを挟む「俺とイコリスは、今日、生徒会に用があるんだ。」
「課外活動に興味が出てきたんじゃないアルか・・。生徒会室は部室棟の近くだし、僕の所属部をついでに見学していかないアル?」
「遠慮するよ。アッシュの部は女子がいないから、もし、混凝土に興味が有っても入らないよ。」
アッシュの家は公共建築や橋梁に欠かせない混凝土(コンクリート)を扱っており、課外活動も混凝土に関する研究だ。なのでアッシュの親族は、土の魔力を持つブリストン一族と懇意にしているらしい。
俺は家の繋がりや共通点がまるでないアッシュ・エイマールと、まさか親しくなるとは思わなかった。
新入生に配られた強制力の結果が書かれた一覧表にはアッシュについて、語尾が『アル』になり髪が2㎝程伸びるという、今迄になかった新たな変質が説明されていた。
だが実際会ってみるとアッシュ・エイマールは、少し背が低く筋肉質なのに愛嬌がある顔立ちだった。
そして元から耳が隠れる位の直毛短髪だったので、強制力が課された後の髪型は、おかっぱに近かった・・・。
俺はアッシュと初めて対面した時、一覧表では分からなかった全体像と語尾の『アル』で悶絶してしまったのだった・・・。
アッシュに慣れようと俺は当面の間、彼を目で追うことにした。するとお茶目で人懐っこいアッシュは、俺の魅了に怯むことなく何度も話しかけてきた。
こうして俺とアッシュは、親しい間柄になったのだ。
平民にはアッシュやガルディのように、魅了を恐れず近づいて来る者が時々居る。・・男性に限られるが・・・。ちなみに、イコリスのアッシュの印象は『笑顔が可愛い』だった。
「女子がいなくても、僕がいれば良いじゃないアルか。イコリス様も一緒に入ればいいアル。」
アッシュは俺が友達になりたくて目で追っていたと思っている節がある。平民の友達は正直言って嬉しいので、完全否定は出来ない。
「アッシュの課外活動は難解で、ついていけないわ。化学だけじゃなくて数学や物理の上位者も集まってるんでしょ?」
土木建設技術家系のアッシュは優れた知力だけでなく、他者の感情を察知しての共感・理解が早く伝達力も高いので、官僚クラスへ入り国家事業の一端を担い、家業の混凝土業界を大きくしたいらしかった。
なお課外活動では、技術者クラスの先輩達と、混凝土使用魔石の最小化や副産廃棄物の再資源化などを研究している。
「イコリス様なら先輩達も、分かるまで優しく教えるアル。サイナスは独学で頑張ってもらうアルが。」
「・・ますます俺が入る利点はないじゃないか。なんで独学なんだよ。」
「おそらく、絶対に入部しないけど、見学は検討しておくわ。」
混凝土を研究する課外活動部には高確率で入部しない事が確定しているのだが、アッシュはそれでも嬉しそうに笑って俺達と別れ、部室棟へ向かって行った。
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