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哀切 悪役令嬢 編
哀19
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「許してくれてありがとう、サイナス。」
語尾にアルが付いてないアッシュの微笑みは、いつもより美形に見えた。元々、顔は整っているのだ。
「アッシュは・・・俺の許しが必要な事はしてないんだけど。」
「!!。ははっ。サイナスなら、そう言うと思ってたアルよ。」
「・・調子が良すぎるぞ、アッシュ。笑いそうになるから、程々にしてくれ。」
「分かった。約束できないアルが、気が向いたら心がけるアルよ。」
「気が向いたらって・・少しは取り繕えよ。」
俺はあきれながら、口角が上がりそうになるのを我慢していた。
「サイナス様の分は陶器のコップになります。目の前で作った方が楽しめると思うので、失礼します。」
濡れた机をシャンスが拭き終えると、フェリクスがラムネ菓子と氷の入ったビーカー等を並べた。
氷ばさみで氷を掴み、ビーカーから陶器のコップへと移すフェリクスの姿は、売上一位の夜職の男みたいだった。
そして、それぞれのコップへ様々な色のラムネ菓子を足し入れ、ブドウ糖を溶かした水が入ったビーカーをガラス棒でかき混ぜて、ガラス棒伝いに上から注ぐ。するとラムネが泡立ち、氷とコップの内側にたくさんの気泡がついた。続いて隣にいたシャンスが、ガラス管をコップにそっと刺してくれた。
イコリスは扇子の内側で、俺はマスクを少し浮かせて、ガラス管を使い炭酸水を吸って飲む。
「微炭酸だと聞いたけど、適度な炭酸の刺激が美味しいわ。」
「スッキリした甘さで飲みやすいな。」
「氷水に沈めた淡色のラムネが可愛いくて、女子受けする飲み物アルよ。気に入ってもらえて良かったアル。」
(女子受け・・・。女子との懇親会でこのラムネ水を振舞えば、好感度の上昇が狙えるな。)
「はっ!!」
俺は重大なことに気付いた。
「どうしたアルか?。サイナス。」
「女子との交際機会を得ようと、学院の内外問わずに女子を集めた懇親会を、アッシュにお願いしていたが・・・宰相と会わせる見返りに、女子の斡旋を求めた『接待』の要求になるんじゃないか?」
フェリクスが『なんだこいつ』という表情を、またしても向けてきた。女性に困らない彼には理解されないだろう。
「そんなつもりはなくても、世間は接待強要だと取りかねないですね。プラントリー一族のサイナス様は、慎重を期した方が良いでしょう。」
さっきから感じていたが、シャンスは人の立場や心情を思い遣る、心優しい男だ。
「あははっ。大丈夫アル。女子が全然集まらなかったから、懇親会は実現しないアル。」
「なん・・・だと・・・。」
「サイナスに相談された時、片っ端から知り合いの女子へ声をかけたアル。だけど全員に断られたアルよ。サイナスが気の毒だったから、伝えなかったアル。」
「くっ・・・アッシュ・・もっと遠まわしに和らげて言ってくれ・・。」
「接待強要になる不安を、まず優先して取り除いたアル。ははっ」
「言い方ぁっ。不安が取り除かれても、傷つくだろうがぁ。」
「ははっごめんアル。あははっ。」
「笑い過ぎだよっ。」
俺はアッシュのこめかみを両拳でぐりぐりしながら抗議した。
「ごめん、痛いって。ぷぷぷっ。サイナスごめんて。」
「イコリス様?」
「どうされたんですか!?」
フェリクスとシャンスの驚く声で振り返ると、イコリスがぽろぽろと大粒の涙を流していた。
語尾にアルが付いてないアッシュの微笑みは、いつもより美形に見えた。元々、顔は整っているのだ。
「アッシュは・・・俺の許しが必要な事はしてないんだけど。」
「!!。ははっ。サイナスなら、そう言うと思ってたアルよ。」
「・・調子が良すぎるぞ、アッシュ。笑いそうになるから、程々にしてくれ。」
「分かった。約束できないアルが、気が向いたら心がけるアルよ。」
「気が向いたらって・・少しは取り繕えよ。」
俺はあきれながら、口角が上がりそうになるのを我慢していた。
「サイナス様の分は陶器のコップになります。目の前で作った方が楽しめると思うので、失礼します。」
濡れた机をシャンスが拭き終えると、フェリクスがラムネ菓子と氷の入ったビーカー等を並べた。
氷ばさみで氷を掴み、ビーカーから陶器のコップへと移すフェリクスの姿は、売上一位の夜職の男みたいだった。
そして、それぞれのコップへ様々な色のラムネ菓子を足し入れ、ブドウ糖を溶かした水が入ったビーカーをガラス棒でかき混ぜて、ガラス棒伝いに上から注ぐ。するとラムネが泡立ち、氷とコップの内側にたくさんの気泡がついた。続いて隣にいたシャンスが、ガラス管をコップにそっと刺してくれた。
イコリスは扇子の内側で、俺はマスクを少し浮かせて、ガラス管を使い炭酸水を吸って飲む。
「微炭酸だと聞いたけど、適度な炭酸の刺激が美味しいわ。」
「スッキリした甘さで飲みやすいな。」
「氷水に沈めた淡色のラムネが可愛いくて、女子受けする飲み物アルよ。気に入ってもらえて良かったアル。」
(女子受け・・・。女子との懇親会でこのラムネ水を振舞えば、好感度の上昇が狙えるな。)
「はっ!!」
俺は重大なことに気付いた。
「どうしたアルか?。サイナス。」
「女子との交際機会を得ようと、学院の内外問わずに女子を集めた懇親会を、アッシュにお願いしていたが・・・宰相と会わせる見返りに、女子の斡旋を求めた『接待』の要求になるんじゃないか?」
フェリクスが『なんだこいつ』という表情を、またしても向けてきた。女性に困らない彼には理解されないだろう。
「そんなつもりはなくても、世間は接待強要だと取りかねないですね。プラントリー一族のサイナス様は、慎重を期した方が良いでしょう。」
さっきから感じていたが、シャンスは人の立場や心情を思い遣る、心優しい男だ。
「あははっ。大丈夫アル。女子が全然集まらなかったから、懇親会は実現しないアル。」
「なん・・・だと・・・。」
「サイナスに相談された時、片っ端から知り合いの女子へ声をかけたアル。だけど全員に断られたアルよ。サイナスが気の毒だったから、伝えなかったアル。」
「くっ・・・アッシュ・・もっと遠まわしに和らげて言ってくれ・・。」
「接待強要になる不安を、まず優先して取り除いたアル。ははっ」
「言い方ぁっ。不安が取り除かれても、傷つくだろうがぁ。」
「ははっごめんアル。あははっ。」
「笑い過ぎだよっ。」
俺はアッシュのこめかみを両拳でぐりぐりしながら抗議した。
「ごめん、痛いって。ぷぷぷっ。サイナスごめんて。」
「イコリス様?」
「どうされたんですか!?」
フェリクスとシャンスの驚く声で振り返ると、イコリスがぽろぽろと大粒の涙を流していた。
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