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サイナス・プラントリーの絶望 編
夢2
しおりを挟む平民だが魔力を持つ桃色髪の『アイ・レットエクセル』は、昨日いつも通りに授業を終えると、ファウスト達と教室を後にした。
だが下駄箱に置いてあったアイの靴は水浸しで、靴の中には石が入れられていた。
王太子や五大貴族頭首の嫡子達に王命で警護されることになったアイは、陰口を囁かれても、この様にあからさまな嫌がらせはこれまでなかった。アイは仕方なく、上履きのまま帰ることにした。
アイの家は市街地の花屋だ。学院へはジェネラス達が交代でアイを馬車に乗せて、登下校している。
校門を潜り抜け、ジェネラス達の馬車が止めてある駐馬車区域へ歩いていたアイは、ファウスト達に護られていた・・にも拘らず、なんと、アイに向けて土団子が投げられた。
街路樹の幹に当たって弾けた土団子に驚き、よろけたアイは足首を捻って倒れてしまい、捻挫した足の痛みにより今日は学院を休んでいた。
・・アイが男嫌いだと知っている俺は、馬連他院が面倒臭くて登校しなかったのではないかと、邪推してしまうが・・。
とにかく、誰も土団子を投げた者を見ていないのだ。偶然、傍を歩いていたシャンスも、飛んできた土団子に気付かなかったらしい。
初めて嫌がらせをされ上履きを履いて帰るアイを、緊張感を持ち警護していたファウスト達も、アイのすぐ横で土団子が弾けるまで投げられた土団子は視界に入らなかった。
ゆえに土団子が投てきされた軌道を、昨日と同時刻の現場で検証する為、土の魔力を持つフラリスがファウストに駆り出されたのだった。
「あの人通りで、誰にも目撃されずに土団子を投げられる場所なんて、なかったよー。至近距離で土団子をぶつけるにしても、砕け具合からいって思い切り振り被らないと無理だし・・。そんな人がいたら、目立つよね。」
フラリスは首をかしげながら、シャンスに答えた。
「遠くから山なりに落ちてきた感じも、しなかったですね。凄い速さで木にぶつかったような衝撃で、土団子が弾けましたよ。・・土の魔石が使用されたとか、ないですか?」
「うん・・土団子を発射する使用法は、聞いた事がない。土の魔石そのものが弾けたなら水晶片が散らばるし、その場でファウストが気付くよ。魔石を使用した可能性は、極めて低いんだ。」
シャンスの仮説は、既に考えていたようだ。
「・・空気を圧縮すれば可能だろう。風の魔石とかで。土団子を発射する鉄製の筒が要るだろうけど。」
「またしてもサイナスは、奇想天外な発想するアルな・・。」
「そんな代物を作れたとしても、王太子や五大貴族に当てないでアイだけ狙うなんて、無理ですよ。」
カインが俺に、問題点を指摘する。
「・・目の前で鉄筒を構えるしかないから、犯人はすぐ取り押さえられるしな。」
「・・そういう発想を、突き詰めて考えるのは危険アル。今の件は、口外禁止にした方がいいアル・・。」
「利が少なく失うものが大きいやり方は、普通、詰めて考えないよね。危険思想に抵抗がないサイナスぐらいだよー。何れにしても現時点では、アイの護りを徹底するしかないかな。ファウストに任せれば大丈夫でしょ。・・サイナスの相談は、もう終わったの?トゥランへの贈り物は、決まった?」
俺は、イコリスとトゥラン抜きで、アッシュ達に馬連他院の釣果を聞きたかった。なので、トゥランの誕生日の贈り物を男友達に相談するという名目で、混凝土研究室にやって来たのだが・・贈り物はもう決めてあった。
「トゥランはイコリスの為に『紙の打撃具』を携帯してるだろう。膝下に付ける革嚢を、贈ることにしたよ。」
「・・革嚢には、模様を入れたりするアルか?」
「革職人に『朱雀』を彫ってもらうよ。格好良いだろう?」
「朱雀って、火をまとう鳥の幻獣ですよね・・どうして朱雀の模様なんですか?」
不思議そうにシャンスが聞く。
「キュリテグロース一族は、王城の南側に住んでいるからだ。俺も、龍を彫った膝下革嚢を作って貰うつもりだよ。格好良いだろう?スラックスの裾をまくると、幻獣を彫った革嚢が脛に装着されているのさ。格好良いだろう?」
―どうしてか、誰からも返事が返ってこないので、無言の時が流れる―。
バンッッ
チョコが詰まった紙袋をたくさん抱え長い髪を乱したフェリクスが、扉を足でこじ開けて入ってきた。
「はあはあ・・。あれ、サイナス様いらしてたんですね・・。イコリス様は、帰宅されましたか?」
「イコリスは、寮棟だ・・・。」
イコリスはナナラと、ジェイサムへ渡すチョコを寮棟の食堂で作っていた。ナナラが焼いたブラウニーに、イコリスが持ってきたマシュマロチョコを挟んで飾りつけるらしい。
イコリスから預かっていたマシュマロチョコを俺が手渡すと、フェリクスは残念そうに眉根を寄せて礼を言う。
チョコを死ぬほど貰ってありがたみを忘れたモテ男は、贅沢で貪欲だった。
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