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サイナス・プラントリーの絶望 編
夢10
しおりを挟む(美味しいかどうかは、イコリスが俺の為に握ったおにぎりに対して、俺がどう思うか次第だ。魂があるのは俺だけなんだから。)
切れ切れに話した3歳児の言葉を・・想念は霊的能力となる霊魂の宇宙法則を・・ナザフォリスがどこまで理解して言っているのか不明だが、俺の反駁は声に出さないでおいた。
俺は飲食の温感も重視し、簡易焜炉を自室に持ち込んでいた。
用意されていたお茶はとっくに冷めていたので、焜炉を見つけたナザフォリスが薬罐に水を入れて沸かし始めた。
「イコリスにも、平民の友達がいるらしいじゃないか。一族でショードン島に隔離移住しなくて、結果、良かったようだ・・。」
「一族で・・移住?」
「そうだよ。国王のイコリスへの過剰対応は、建国から献身してきたプラントリー一族の弾圧にほかならない。王権で排斥される前に、一族でショードン島へ自発的に隔離移住する計画があったんだ。王妃と前国王に平謝りされ、立ち消えたが。」
「・・・・。」
「サイナスは、エイシム家の次男『アッシュ・エイシム』と懇意にしているみたいだな。」
「・・・・。」
話題を変えたナザフォリスは、ティーポットからカップへ紅茶を注ぎ終えると、振り返って俺を見据えた。
「・・・サイナスが入り浸っていた混凝土研究室の『フェリクス・ストライト』だが・・フラーグ学院を卒業すると、警察に連行されたよ。」
「?!」
「任意の取り調べだが、私有地侵入や詐欺罪とか・・こじつけの嫌疑だ。『エイシム家の強欲爺』が手をまわして、フェリクスを警察に引き渡したらしい。」
「・・アッシュの祖父が・・。」
ナザフォリスは、ティーカップをお盆に乗せて歩きながら・・再び顎がしゃくれた顔を、額に血管を浮かべ見せつけてきけた。
「・・ふざけるところか?」
不本意だが、俺はつっこまざるを得なかった。
「ふざけてなどいないっ。怒りを押さえているんだっ。あーの爺、まだ勘違いしているっ。絶大な権力を持っていると錯覚した、己を顧みない猿山の猿がっ。」
「顔見知りなのか?」
「あの爺が、私に美人局を仕掛けたんだっ。私が大規模都市建設事業を縮小させたからっ。・・素人でも分かるあからさまな自然破壊を何とも思わねえ、猿山の頂上にしがみつく猿爺がっ。」
「しゃくれて親衛隊に通報された、あの事件か・・。」
「美人局なのに、なんでババアを寄越すんだっ?。色仕掛けするなら、若くて胸の大きい官能的な女性だろう?。真逆の・・ただ、気が強いババアで・・私を落とそうとしたんだっ。落ちるわけがないだろうがっっ・・ハアハア。」
「・・気が強い叔母さんと、おしどり夫婦だったからでは・・?」
俺の記憶にある亡くなったナザフォリスの妻は、病弱で痩せていてかなり気が強かった。しかし飄逸な性格のナザフォリスとの夫婦仲は、とても良かったのだ。
「出会った当初はすごく可愛いらしくて・・豊満だったんだよっ。・・とてつもなく気が強い性格が、結婚後に露呈したが・・すごく可愛い、巨乳っ娘だったんだよっ。」
「・・巨乳だったんだ・・。」
「そうだっ。なのにあの猿爺は、美人局に貧乳のババアを寄越した・・。たちの悪いことに、プラントリーへ身をささげる犠牲者気分に浸った、気の強い自己陶酔ババアをっ!・・猿爺の事業の恩恵で成金になった、面食いババアのくせにっ!つまるところは、自分の利権を維持する為のくせにっ・・悲劇の主人公ぶりやがって!ハアハア。」
憤慨しているナザフォリスをよそに、俺は、先日扉越しに「話したいことがたくさんある」と言っていた、アッシュの言葉を思い出していた。
「・・・・・連行されたフェリクスは、大丈夫なのか?・・アッシュとシャンスの立場も危ういのでは・・。」
「・・・。この屋敷に招き、混凝土原材料採取が山林と海岸に及ぼした環境調査を、義父に報告したのが彼らだったな。サイナスは学生の身で、厄介な問題に首を突っ込んでいるよね。」
ナザフォリスは片眉を上げ、俺に答えた。
「義父は宰相だが、彼らから渡された調査資料は、プラントリー頭首として一族と共有するに留めている。なので絶対に、情報が漏れることはない。猿爺は孫の告発に、気付いてはいないよ。取り調べが終わり次第、冤罪のフェリクス・ストライトは釈放されるだろう。・・他に、猿爺の目立った動きはないんだ。孫と水車大工の倅は、大丈夫だ。」
そう言うとナザフォリスは、顎をしゃくれさせた。
「どうしてここで、ふざけるんだ・・。平穏無事とは、まだ言い難いだろうが。」
しゃくれ顔を挟む意図が分からず、つい、訊ねてしまう。
「・・ふざけていない。感慨にふけっているんだ。・・サイナスは、『サジタリアス』に、ますます似てきたなと思って・・。」
俺は、吐息を漏らした。
(ナザフォリスに似ていると言われたら、蹴りを入れていたな・・。)
イラつくのは、同族嫌悪じゃ無いはずだ。
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