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21 我こそが……
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「ふぇっ、うん、えん……ぐっすん……」
「お前、泣いているのか?……(泣くのなら、もう少しうまく泣けばいいのに……)」
暗い狭い部屋で、18インチノートパソコンを見ながら二人の会話は続く。
「やっとですよ、指令……21話になって初めて登場なんて、あんまりだ!」
「そんなにわめくな、ここは狭いんだ……響くだろう」
低音の指令の声は、静かに部下Aを黙らせた。
それでも、部下Bは、まだ文句を言いたいらしい。
「だって指令、僕らは悪役ですよ。それもね、悪役のメインですよ。三人でやってるんです。計画から、準備、根回し、当日は悪の化身のバイト探し、そして、やられた後の保険の支払いまで、ぜーんぶ三人でやってるんですよ。指令、誰か若い娘雇ってくださいよ、経理担当ってことで。そしたら、少しはやる気も出るんですけどね~」
部下Aも賛同した。
「相手は、あの大企業ですよ。社員が5万人もいるって言うじゃありませんか?……うちは、三人ですよ、三人。これじゃあ、相手にされませんよ~」
低い声の司令は、落ち着きはらって、部下二人にこう言った。
「だから、いいんだ。相手にされないから、我々は、こうやって生き延びていけるんだ。相手が本気になったら、我々なんて、一秒ももたんぞ……あはっはあははは」
「(ここは、笑うとこじゃないと思うんだけど)」と、半分あきれ顔の部下Aだったが、当たらずといえども遠からずのところがあるので、黙っていた。
「我々は、地道な作戦で、行くんだ。小さなことからコツコツとだな。これで世界を征服だ!」
「まったく、何千年かかることやら」
部下二人は、呆れていた。
「例の計画は、進んでいるか?」
司令は、部下に進捗状況を確認した。
「は!……思いのほか、あの警備会社のエルフは、戦闘能力は高いのですが、食いしん坊だったので、贈り物のバースディケーキを平らげてくれました」
「そうか、あのケーキには、マイクロウイルスを仕込んであったよな。あのマイクロウイルスは、体内で増殖を繰り返し、ある時点で一気に大爆発を起こすんだ」
全身真っ黒の衣装マントに身を包み、目だけしか見えない指令だったが、異様に興奮していた。
灰色のマントに身を包む部下Aが、恐る恐る尋ねた。
「司令、どのくらいの爆発威力なんですか?」
「ん?……それはな、……今は秘密じゃ。いいから次の計画を進めろよ」
「はい、わかりました……(何か、いやな予感がするんだよな……)」
こげ茶色のマントに身を包んだ部下Bは、浮かない表情のまま、バイトで雇った悪の化身をつれて、異世界を目指した。
「あのマイクロウィルスは、ネットで安く買ったんだが、欠点があったんだよな~。体に入れてから、餌を大量に与えないと死んじゃうんだ。その餌が別売りで、高くてな……でも、マイクロウィルスは買って、敵にも仕込んだから、もう後戻りはできないんだ……悪の化身に餌を届けさせて、やつの口元で、撒いてやれば、自然に体の中に入るという仕掛けさ……。悪の化身は、爆発したように見せかければ、あいつらも油断するし……絶対うまくいくんだ……頑張れ部下A、頑張れ部下B」
司令は、暗い部屋で、PC画面を覗きながら、今日も何かいいものはないか、ネットサーフィンを楽しんでいた。
(つづく)
「お前、泣いているのか?……(泣くのなら、もう少しうまく泣けばいいのに……)」
暗い狭い部屋で、18インチノートパソコンを見ながら二人の会話は続く。
「やっとですよ、指令……21話になって初めて登場なんて、あんまりだ!」
「そんなにわめくな、ここは狭いんだ……響くだろう」
低音の指令の声は、静かに部下Aを黙らせた。
それでも、部下Bは、まだ文句を言いたいらしい。
「だって指令、僕らは悪役ですよ。それもね、悪役のメインですよ。三人でやってるんです。計画から、準備、根回し、当日は悪の化身のバイト探し、そして、やられた後の保険の支払いまで、ぜーんぶ三人でやってるんですよ。指令、誰か若い娘雇ってくださいよ、経理担当ってことで。そしたら、少しはやる気も出るんですけどね~」
部下Aも賛同した。
「相手は、あの大企業ですよ。社員が5万人もいるって言うじゃありませんか?……うちは、三人ですよ、三人。これじゃあ、相手にされませんよ~」
低い声の司令は、落ち着きはらって、部下二人にこう言った。
「だから、いいんだ。相手にされないから、我々は、こうやって生き延びていけるんだ。相手が本気になったら、我々なんて、一秒ももたんぞ……あはっはあははは」
「(ここは、笑うとこじゃないと思うんだけど)」と、半分あきれ顔の部下Aだったが、当たらずといえども遠からずのところがあるので、黙っていた。
「我々は、地道な作戦で、行くんだ。小さなことからコツコツとだな。これで世界を征服だ!」
「まったく、何千年かかることやら」
部下二人は、呆れていた。
「例の計画は、進んでいるか?」
司令は、部下に進捗状況を確認した。
「は!……思いのほか、あの警備会社のエルフは、戦闘能力は高いのですが、食いしん坊だったので、贈り物のバースディケーキを平らげてくれました」
「そうか、あのケーキには、マイクロウイルスを仕込んであったよな。あのマイクロウイルスは、体内で増殖を繰り返し、ある時点で一気に大爆発を起こすんだ」
全身真っ黒の衣装マントに身を包み、目だけしか見えない指令だったが、異様に興奮していた。
灰色のマントに身を包む部下Aが、恐る恐る尋ねた。
「司令、どのくらいの爆発威力なんですか?」
「ん?……それはな、……今は秘密じゃ。いいから次の計画を進めろよ」
「はい、わかりました……(何か、いやな予感がするんだよな……)」
こげ茶色のマントに身を包んだ部下Bは、浮かない表情のまま、バイトで雇った悪の化身をつれて、異世界を目指した。
「あのマイクロウィルスは、ネットで安く買ったんだが、欠点があったんだよな~。体に入れてから、餌を大量に与えないと死んじゃうんだ。その餌が別売りで、高くてな……でも、マイクロウィルスは買って、敵にも仕込んだから、もう後戻りはできないんだ……悪の化身に餌を届けさせて、やつの口元で、撒いてやれば、自然に体の中に入るという仕掛けさ……。悪の化身は、爆発したように見せかければ、あいつらも油断するし……絶対うまくいくんだ……頑張れ部下A、頑張れ部下B」
司令は、暗い部屋で、PC画面を覗きながら、今日も何かいいものはないか、ネットサーフィンを楽しんでいた。
(つづく)
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