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25 運動会危機一髪 2 〔それぞれの想い〕
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「ジョン君、すごいじゃないか……会計だけじゃなく、渉外担当も抜群の才能があるよ!」
「いやですわ司令ったら、そんなに褒めてくださって……」
ジョセフィーヌは、薄いブルーに黄色いリボンをあしらった可愛いドレスを身に纏い、どこから見ても商家のお嬢様という風情を漂わせていながら、悪の司令の言葉にも恥じらいを見せていた。
「それに、今日はあの仮面を付けてないんだもん。オラ、びっくらするほどかわいくて、惚れてしまいそうだべ~~」
鼻の下を伸ばした部下のタンクの言葉にも、ジョンは照れていた。
「もー、タンクさんたらー、いやね~~」
ジョンは、左手で顔を隠しながら、右手でタンクの背中を叩いて、照れ隠しをしていた………が、……「ぎゃあ~」という、タンクの声だけが、アジトに響いたが、誰も気にしなかった。
その代わり、ジョンの可愛さだけが、一段とランク上昇したのであった。
「ところで、司令、これも格安で借りることができましたの……」
ジョンが見せたのは、少し大きめのドローンだった。商工会の副専務という人から借りたそうで、重さ十キロまでのものを一キロ上空までぶら下げて運べるパワーがあるそうだ。
「よし、これの操縦は、トールが担当だ、頼むぞ!」
「は!……任せてください。これでも……原付、50ccには、毎日乗ってんですから……」
「それで、大丈夫か?」
キング司令は少し後悔したが、タンクでは自転車しか乗れなかった。
「いよいよ、明日の朝ですわね……がんばりましょうね……決戦のために、わたくし、こんなものを用意いたしましたの……みんなで着て頑張りませんこと?」
ジョンが、スーツケースから取り出したものは、戦闘用の衣装だった。全員お揃いのグレーに黒のラインが斜めに入った、タキシード風のスーツだった。ただし、ジョンのものは、蝶型の仮面とセットになったバニーガール風の衣装になっていたので、(誰に気を使ったのかわからないが)たぶんみんなが喜ぶと思う(敵も味方も)。
男は全員、黒いサングラスとシルクハット。足元はブーツになっている。もちろん、全員背中には、黒いマントが常備されていることは、言うまでもない。
「いやあー、こんな戦闘服を着ると、やる気も出るなあーーー。今まで、私服でしたもんね」
悲しい声で、トールが言うと、「いや、マントだけは、私が用意したじゃないか!」と、キング司令が意気込んで主張した。
「はいはい……そうだね~、マントだけね~、他は、なーーんも無かったね~」
「よし! じゃあ、明日の朝は、この戦闘服で、がんばるぞーーー」
キング司令は、何事もなかったように、元気に号令をかけていた。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
【その同じ頃の岸川教頭のアパートでは……】
「総司、運動会って、そんなに楽しみなのか?」
ベルフィールは、岸川教頭と夕食を食べながら、そんなことを尋ねた。
「まあ、小学校の伝統というより、町の伝統みたいなものかな。ずううっと昔から続いているんだよ、きっとな。何が楽しいとかじゃないんだ。たぶん人が集まるのが楽しいんじゃないかな。集まって、普通に話が出来て、子ども達が走っているのが見られれば、それでいいんだ、きっと…………特別なことじゃないと思うよ」
ベルフィールのバク食いも無くなり、いつもの白いご飯と、みそ汁、ホッケの焼き魚、キュウリの酢の物、それに粕漬けの大根を食卓に乗せていた岸川総司は、やっぱりそれでも運動会のお弁当には、力を入れようと思っていた。
「ところで、総司は運動会の準備があるのに、朝はお弁当を作れるのかい?」
「うん、大丈夫だよ……お弁当はね……今から作るから」
「え? 明日のお弁当を今晩作るの?」
「そう、実は、もうほとんど完成しているんだ!」
「どういうこと????」
「それは……明日、食べる時に……と、今晩は弁当作りを手伝うんだよなベル?」
「え?……私が、手伝っていいの?……散らかすことしかできない私が???」
「ううううんんん???……まあ、味見くらいは、できるだろ?」
「うん!」
ベルフィールは、笑顔でエプロンを付け始めた。
(つづく)
「いやですわ司令ったら、そんなに褒めてくださって……」
ジョセフィーヌは、薄いブルーに黄色いリボンをあしらった可愛いドレスを身に纏い、どこから見ても商家のお嬢様という風情を漂わせていながら、悪の司令の言葉にも恥じらいを見せていた。
「それに、今日はあの仮面を付けてないんだもん。オラ、びっくらするほどかわいくて、惚れてしまいそうだべ~~」
鼻の下を伸ばした部下のタンクの言葉にも、ジョンは照れていた。
「もー、タンクさんたらー、いやね~~」
ジョンは、左手で顔を隠しながら、右手でタンクの背中を叩いて、照れ隠しをしていた………が、……「ぎゃあ~」という、タンクの声だけが、アジトに響いたが、誰も気にしなかった。
その代わり、ジョンの可愛さだけが、一段とランク上昇したのであった。
「ところで、司令、これも格安で借りることができましたの……」
ジョンが見せたのは、少し大きめのドローンだった。商工会の副専務という人から借りたそうで、重さ十キロまでのものを一キロ上空までぶら下げて運べるパワーがあるそうだ。
「よし、これの操縦は、トールが担当だ、頼むぞ!」
「は!……任せてください。これでも……原付、50ccには、毎日乗ってんですから……」
「それで、大丈夫か?」
キング司令は少し後悔したが、タンクでは自転車しか乗れなかった。
「いよいよ、明日の朝ですわね……がんばりましょうね……決戦のために、わたくし、こんなものを用意いたしましたの……みんなで着て頑張りませんこと?」
ジョンが、スーツケースから取り出したものは、戦闘用の衣装だった。全員お揃いのグレーに黒のラインが斜めに入った、タキシード風のスーツだった。ただし、ジョンのものは、蝶型の仮面とセットになったバニーガール風の衣装になっていたので、(誰に気を使ったのかわからないが)たぶんみんなが喜ぶと思う(敵も味方も)。
男は全員、黒いサングラスとシルクハット。足元はブーツになっている。もちろん、全員背中には、黒いマントが常備されていることは、言うまでもない。
「いやあー、こんな戦闘服を着ると、やる気も出るなあーーー。今まで、私服でしたもんね」
悲しい声で、トールが言うと、「いや、マントだけは、私が用意したじゃないか!」と、キング司令が意気込んで主張した。
「はいはい……そうだね~、マントだけね~、他は、なーーんも無かったね~」
「よし! じゃあ、明日の朝は、この戦闘服で、がんばるぞーーー」
キング司令は、何事もなかったように、元気に号令をかけていた。
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【その同じ頃の岸川教頭のアパートでは……】
「総司、運動会って、そんなに楽しみなのか?」
ベルフィールは、岸川教頭と夕食を食べながら、そんなことを尋ねた。
「まあ、小学校の伝統というより、町の伝統みたいなものかな。ずううっと昔から続いているんだよ、きっとな。何が楽しいとかじゃないんだ。たぶん人が集まるのが楽しいんじゃないかな。集まって、普通に話が出来て、子ども達が走っているのが見られれば、それでいいんだ、きっと…………特別なことじゃないと思うよ」
ベルフィールのバク食いも無くなり、いつもの白いご飯と、みそ汁、ホッケの焼き魚、キュウリの酢の物、それに粕漬けの大根を食卓に乗せていた岸川総司は、やっぱりそれでも運動会のお弁当には、力を入れようと思っていた。
「ところで、総司は運動会の準備があるのに、朝はお弁当を作れるのかい?」
「うん、大丈夫だよ……お弁当はね……今から作るから」
「え? 明日のお弁当を今晩作るの?」
「そう、実は、もうほとんど完成しているんだ!」
「どういうこと????」
「それは……明日、食べる時に……と、今晩は弁当作りを手伝うんだよなベル?」
「え?……私が、手伝っていいの?……散らかすことしかできない私が???」
「ううううんんん???……まあ、味見くらいは、できるだろ?」
「うん!」
ベルフィールは、笑顔でエプロンを付け始めた。
(つづく)
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