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第7章 移り行く、こころのパッチワーク
92 実家でナイト 6 〔お色直し〕
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いつもより早く目が覚めた。部屋の中はまだ暗かったが、ベルが僕の横で安らかな寝息を立てていることは分かった。
ベッドの上で起き上がろうとして、彼女がまだ僕の手を握っていることが分かった。
僕は、しばらく上半身だけを起こし、彼女の寝顔をぼーっと見ていた。
何も考えられず、呆けたようにして時間だけが過ぎていった。
長い時間に思えたが、実際はそうでもないのだろう。すぐに彼女は寝返りを打ち体制を変えた。短い時間でそんなことが数回あった。
彼女は寝返りの度に僕の手を放すのであるが、無意識に手だけは僕を探しだし、再び握った。そうすることで、彼女は落ち着くように見えた。
タイミングを見て、手が離れた時、僕は静かに布団から抜けた。もちろん彼女の浴衣ははだけていたが、元に戻してから体を掛布団で包んでおいた。
僕も浴衣を直しながら、窓際へ行きカーテンを開けた。東の空が薄明るくなっているのを感じた。
「日の出の時間だ……」
何となく独り言のように呟いた後、『今日は初日の出だ』と、気が付いた。
「ベル、ベル……起きるんだ!……初日の出だ! 早く、早く……」
彼女の側に行き、布団の上から揺り動かし、大声で呼んだ。
「……う、う……う~~ん?……何?……ソージ?」
「初日の出を見ようよ、今日はお正月なんだってば……」
そう急かして、ベルを布団から引っ張り出した。幸い、浴衣は多少の乱れはあるものの、体に巻き付いていた。
「……ふぁああー、うん……え!……きれい……だねーー!」
部屋の大きなベランダから見える太陽。ガラス越しの初日の出だったが、雲一つなくきれいな赤い朝日が、遠くの山の中腹から現れ出した。
最初は、絵の具が滲んだようにボンヤリしていたが、山の峰から姿を現すと次第に太陽の形がはっきりと確認できるようになってきた。
「ソージ……あたし、エネルギーを感じるわ。あそこから、暖かいものが伝わってくる」
「そうだな、今年最初のお日様だ。そのエネルギーをもらったんだ。ベルだって、今年も活躍できるさ」
僕は、彼女を支えながらベランダに2人で仁王立ちになっていた。暖かい太陽の熱を浴びながら。
太陽は、次第に高く上るに従って、その形を確認することは難しくなっていった。眩しさが増したのだ。
「……ベル、明けましておめでとう。今年もよろしくお願いします」
彼女の方を向きながら、頭を下げた。『今年も』は、あと3か月しかない……僕は、『今年も』の時、永遠に『今年も』ならいいのにと、考えていた。
「ソージ? 大丈夫だよ!……あたしだって、よろしくお願いしますよ。……あ! 明けましてだっけ?……明けても暮れても、よろしくだよ!!」
「あははは……何だいその挨拶は? ははは・は・は・・・・」
僕の笑い声が、むなしく響いたように感じた。
ピロロロロロ~……ピロロロロロ~……ピロロロロロ~……
『もしもーし、初日の出見たかーい?』
「あ、母ちゃん。朝っぱらから何だよ。……まあ、初日の出なら見たよ」
『ベルちゃんも見たんだろうね?』
「ああ、ここに起きてるぞ」
『よし、それじゃこれから、行くからね! あ、えっと、着替えはしなくていいから、それなりの準備はしておいてね……じゃ』
相変わらずセッカチな母ちゃんだ。
「ベル、母ちゃんが来るって……着替えはしなくていいって言ってたけど?……これは履いておいた方がいいぞ……はい」
僕は、旅行バッグから引っ張り出して、彼女に渡した。
「あ~あ……ソージ? 見た?」
「な、何をだい?……僕は、な、なんにも見てないぞ~」
「なーんだ、見てないのか = ̄ω ̄= ガッカリ」
「な、な、何を言ってるんだい?……あんまり出してたら、か、風邪引くから、早く履きなさいってば~」
「は~い……」
コン コン コン!
『……開けて~! 私よ~……早く~……』
ドアを開けると、すっかり身支度した母ちゃんが、両手で持ちきれないほどの荷物を抱えて立っていた。
部屋に入ってくるなり、いきなりベルの浴衣を脱がし始めた。
「か、か、母ちゃん、いきなり何すんだよ!」
「いいから、いいから……そうだ、お前のはここに入っているから、自分でやりな!……あ、それから向こう向いてな! こっちを見たらダメよ!」
「さあ、ベルちゃん。明けましておめでとう! 早速着替えるわよ!」
「は、はい。お母さん、明けましておめでとうございます……」
「あら、ベルちゃん、新年のご挨拶ができるんだね~」
母ちゃんは、ベルをベッドに座らせて、何やら作業をしながら、口だけはいつものおしゃべりをしているようだ。
「うん……さっき、ソージもしてたから、真似してみた……どう?」
「うん、バッチリよ!……あの挨拶なら、この着物にピッタリだわ!」
「え? 着物?」
「いいから、いいから……私に任せてね……」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ソージ、どうかな?……これ、すっごくきれいだよ~」
母ちゃんは、あっという間にベルに着物を着付けた。
母ちゃんは、美容師の資格を持っているので、ヘアスタイルを作るのはお手のものなのだが、ベルの黒髪は日本髪のスタイルにピッタリとマッチしていた。
また、着物は紺色の生地に、光輝く星座があしらわれ、とても華やかなものだった。
真っ白な肌のベルにとって、濃紺の着物は、とてもお淑やかに見える逸品だった。
「ああ、総司も出来たようだね……2人並んでごらんよ!」
「何だよ母ちゃん……もういいじゃないか」
「どうだい、ベルちゃん? お揃いで、カッコイイだろう?」
「うん、ソージもあたしと同じ模様の着物だね。うーん、ソージの星の模様の方が、大きくなっていて、力が強いように見えるよ!」
「おおーベルちゃん、いいところに気が付いたね。男の柄は少し大きくなっているんだよ」
着物なんて、久しぶりだから少し手間取ったけど、学校の先生になる前は、よく家の仕事を手伝っていたから、着物は慣れているんだ。
それにしても、エルフでも着物は似合うんだなあ~
「総司、何今さら見とれているんだよ。それより、ベルちゃん……」
母ちゃんは、ベルだけに何か耳打ちしてるけど……、また余計なことを吹き込んでいるんじゃないだろうなあ~。
「……ふーん、そーかい……まあ、良しとするかい? ベルちゃん」
「うん、ソージの手はとっても気持ちよかったもん!」
「総司は、本当にもー……そんなところばっかり、父ちゃんに似たんだからさ~」
「え? え?……何のこと?……ええええ~ ::>_<::」
「まあ、いいから……下に降りておいで。今日はお正月の特別朝食バイキングだよ。1階のレストランでやってるからね!……じゃ、先に行ってるよ!」
やれやれ、台風のような母ちゃんだ。あっという間に、ベルをお人形さんのように着飾って、いなくなった。
「ねえソージ、あたしの着物どう?」
「……着物もいいけど、ベルがきれいに見えるよ! その髪型もベルにピッタリだ」
「ありがとう、ソージ! なんか、2人でいるとお雛様みたいだね!」
お雛様か~……お雛様までは大丈夫だよな……………………。
(つづく)
ベッドの上で起き上がろうとして、彼女がまだ僕の手を握っていることが分かった。
僕は、しばらく上半身だけを起こし、彼女の寝顔をぼーっと見ていた。
何も考えられず、呆けたようにして時間だけが過ぎていった。
長い時間に思えたが、実際はそうでもないのだろう。すぐに彼女は寝返りを打ち体制を変えた。短い時間でそんなことが数回あった。
彼女は寝返りの度に僕の手を放すのであるが、無意識に手だけは僕を探しだし、再び握った。そうすることで、彼女は落ち着くように見えた。
タイミングを見て、手が離れた時、僕は静かに布団から抜けた。もちろん彼女の浴衣ははだけていたが、元に戻してから体を掛布団で包んでおいた。
僕も浴衣を直しながら、窓際へ行きカーテンを開けた。東の空が薄明るくなっているのを感じた。
「日の出の時間だ……」
何となく独り言のように呟いた後、『今日は初日の出だ』と、気が付いた。
「ベル、ベル……起きるんだ!……初日の出だ! 早く、早く……」
彼女の側に行き、布団の上から揺り動かし、大声で呼んだ。
「……う、う……う~~ん?……何?……ソージ?」
「初日の出を見ようよ、今日はお正月なんだってば……」
そう急かして、ベルを布団から引っ張り出した。幸い、浴衣は多少の乱れはあるものの、体に巻き付いていた。
「……ふぁああー、うん……え!……きれい……だねーー!」
部屋の大きなベランダから見える太陽。ガラス越しの初日の出だったが、雲一つなくきれいな赤い朝日が、遠くの山の中腹から現れ出した。
最初は、絵の具が滲んだようにボンヤリしていたが、山の峰から姿を現すと次第に太陽の形がはっきりと確認できるようになってきた。
「ソージ……あたし、エネルギーを感じるわ。あそこから、暖かいものが伝わってくる」
「そうだな、今年最初のお日様だ。そのエネルギーをもらったんだ。ベルだって、今年も活躍できるさ」
僕は、彼女を支えながらベランダに2人で仁王立ちになっていた。暖かい太陽の熱を浴びながら。
太陽は、次第に高く上るに従って、その形を確認することは難しくなっていった。眩しさが増したのだ。
「……ベル、明けましておめでとう。今年もよろしくお願いします」
彼女の方を向きながら、頭を下げた。『今年も』は、あと3か月しかない……僕は、『今年も』の時、永遠に『今年も』ならいいのにと、考えていた。
「ソージ? 大丈夫だよ!……あたしだって、よろしくお願いしますよ。……あ! 明けましてだっけ?……明けても暮れても、よろしくだよ!!」
「あははは……何だいその挨拶は? ははは・は・は・・・・」
僕の笑い声が、むなしく響いたように感じた。
ピロロロロロ~……ピロロロロロ~……ピロロロロロ~……
『もしもーし、初日の出見たかーい?』
「あ、母ちゃん。朝っぱらから何だよ。……まあ、初日の出なら見たよ」
『ベルちゃんも見たんだろうね?』
「ああ、ここに起きてるぞ」
『よし、それじゃこれから、行くからね! あ、えっと、着替えはしなくていいから、それなりの準備はしておいてね……じゃ』
相変わらずセッカチな母ちゃんだ。
「ベル、母ちゃんが来るって……着替えはしなくていいって言ってたけど?……これは履いておいた方がいいぞ……はい」
僕は、旅行バッグから引っ張り出して、彼女に渡した。
「あ~あ……ソージ? 見た?」
「な、何をだい?……僕は、な、なんにも見てないぞ~」
「なーんだ、見てないのか = ̄ω ̄= ガッカリ」
「な、な、何を言ってるんだい?……あんまり出してたら、か、風邪引くから、早く履きなさいってば~」
「は~い……」
コン コン コン!
『……開けて~! 私よ~……早く~……』
ドアを開けると、すっかり身支度した母ちゃんが、両手で持ちきれないほどの荷物を抱えて立っていた。
部屋に入ってくるなり、いきなりベルの浴衣を脱がし始めた。
「か、か、母ちゃん、いきなり何すんだよ!」
「いいから、いいから……そうだ、お前のはここに入っているから、自分でやりな!……あ、それから向こう向いてな! こっちを見たらダメよ!」
「さあ、ベルちゃん。明けましておめでとう! 早速着替えるわよ!」
「は、はい。お母さん、明けましておめでとうございます……」
「あら、ベルちゃん、新年のご挨拶ができるんだね~」
母ちゃんは、ベルをベッドに座らせて、何やら作業をしながら、口だけはいつものおしゃべりをしているようだ。
「うん……さっき、ソージもしてたから、真似してみた……どう?」
「うん、バッチリよ!……あの挨拶なら、この着物にピッタリだわ!」
「え? 着物?」
「いいから、いいから……私に任せてね……」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ソージ、どうかな?……これ、すっごくきれいだよ~」
母ちゃんは、あっという間にベルに着物を着付けた。
母ちゃんは、美容師の資格を持っているので、ヘアスタイルを作るのはお手のものなのだが、ベルの黒髪は日本髪のスタイルにピッタリとマッチしていた。
また、着物は紺色の生地に、光輝く星座があしらわれ、とても華やかなものだった。
真っ白な肌のベルにとって、濃紺の着物は、とてもお淑やかに見える逸品だった。
「ああ、総司も出来たようだね……2人並んでごらんよ!」
「何だよ母ちゃん……もういいじゃないか」
「どうだい、ベルちゃん? お揃いで、カッコイイだろう?」
「うん、ソージもあたしと同じ模様の着物だね。うーん、ソージの星の模様の方が、大きくなっていて、力が強いように見えるよ!」
「おおーベルちゃん、いいところに気が付いたね。男の柄は少し大きくなっているんだよ」
着物なんて、久しぶりだから少し手間取ったけど、学校の先生になる前は、よく家の仕事を手伝っていたから、着物は慣れているんだ。
それにしても、エルフでも着物は似合うんだなあ~
「総司、何今さら見とれているんだよ。それより、ベルちゃん……」
母ちゃんは、ベルだけに何か耳打ちしてるけど……、また余計なことを吹き込んでいるんじゃないだろうなあ~。
「……ふーん、そーかい……まあ、良しとするかい? ベルちゃん」
「うん、ソージの手はとっても気持ちよかったもん!」
「総司は、本当にもー……そんなところばっかり、父ちゃんに似たんだからさ~」
「え? え?……何のこと?……ええええ~ ::>_<::」
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やれやれ、台風のような母ちゃんだ。あっという間に、ベルをお人形さんのように着飾って、いなくなった。
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