人間の特殊性癖に付き合う身になってほしいよ。

7ズ

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 リュウグウ二体の擬似交尾は、いつも以上に激しく長時間にも及んだ。
 発情期によって本能的に押し上げられた性欲ではなく、自らの意志で昂らせた性欲は一度果てても萎える事が無かった。
 水槽内を繋がりながら泳ぎ続ける二体は夢中で互いに欲を与えては、心身共に感受している。

「ぁあっ、まぐ」
「ヒカチ、ビクビクして可愛い……」
『ぐりゅ』
「あッ! んんん!」

 睦まじく初々しい快楽を知った新婚の男女のように……見てるコチラまでも、刺激を受けてしまうセンシュアルな交尾だ。
 
「ひ、ぁ、あっ……ん、くッ!」
「はぁ……う、ヒカチ……ごめ、また出ちゃう」
「んっ、ん……いい、から……もっと、マグので、ぐちゃぐちゃに……して、ほしぃ……んぁあ!」
「ひ、かち……あんま、煽んないで」

 絶頂に昇り詰めるマグの動きに、ヒカチも追い詰められていく。

「ッ……ぁ、う……ん、ん?」

 マグの熱に掻き混ぜられ、蕩けたヒカチの目にチカチカと光を反射している無数の何かが飛び込んできた。
 
「ぁ、あッ……!? ぃ、や」

 鏡があったはずの場所には、いつも通り無数の人間の視線が二体へ注がれていた。

「なん、なっ、いやだ……ぅ、マグ、まぐ! 待っ!」
「?」

 ヒカチしか眼中に無いマグは観衆に気付かず、動きを止めない。止められない。
 
「いやっ、いやだ! 見る、な!」

 気付いてしまったら、全身を舐め回すように這う視線に身体は震え上がり、度を超えた羞恥心に視界が歪む。
 長時間快楽に浸かり過敏になった身体は全てを快感に変換してしまう。
 
「イき、たくない! いやだ! やぁあ! 見るな見るなぁあ!!」
「ひ、ひかち! うッ!」

 ガクンガクンと腰を跳ねさせて痙攣し、達したヒカチの締め付けにマグはそのまま精を打ち付けた。
 しかし、望んでいたマグの中出しも今のヒカチには更なる追い討ちにしかならない。
 絶頂も中出しも、卑猥にマグのを咥え込む結合部から溢れ出す白濁も全て、見られている。

「(み、られて…………見られてる、全部……見られた……人間に、俺達の交尾……みられ……て)」

 大勢の人間、その一人一人の瞳が自分達を厭らしく映し、下卑た笑みを浮かべる様子を幻視してしまう。
 様子のおかしいヒカチの中からズルンと自身を引き抜いたマグ。

「ヒカチ、嫌だった? ごめんね。ごめんね」
「ぁ……あ、あ、ひっぐ……?」
 心の海が割れて底まで突き落とされたような深く濃厚な絶望さえも、変換され上限のない強烈な昂りがヒカチの内で弾けた。
 
「い、や……いや、なっなに? なんだッ、ああ!」
「ヒカチ!? どうしたの!? 苦しいの!?」
「イ゛……ッッ~~~」
『ビュクン!』

 ヒカチの身体は何度も大きく波打ち、スリットから白濁混じりの潮が吹き出した。
 水中である為、海水が混じり合うだけで人の目には分かりにくい。
 しかし、同種のマグにはしっかりと潮吹きが見えていた。
 
「まぐ……マグ、マグゥ!」

 背筋を止めどなく駆け抜ける快感に潮吹き絶頂から降りられないヒカチ。
 その自分の痴態さえ、人間達は見逃さぬように凝視している。
 見せ物にされている惨めさから逃げようと、マグの名を呼び縋り付く。
 半分パニック状態のヒカチを包み込むようにマグは羽衣を操作する。
 マグは知らず知らずのうちにヒカチを人間の目から隠すような形となり、そのまま底へと向かう。

「ぅう……ぅ、まぐぅ」
「大丈夫。大丈夫だよ。僕の事だけ考えて」

 マグは横たわるヒカチの為に羽衣を天蓋として覆い被せた。
 人間の視線から逃れられ、徐々に絶頂の間隔が空き始めたヒカチの呼吸が整い始める。
 落ち着きを取り戻したヒカチはマグの胸に顔を埋めながら、小さく呟いた。

「もういやだこんな場所……人間の特殊性癖に付き合わされて……頭がおかしくなる」
「ヒカチ……僕、ヒカチが居てくれたから、まだ狂ってないよ」
「俺だって、マグが居なけりゃとっくに死んでる」
「……僕らで、まだ、良かった」

 最低だが、最悪ではないとマグがなんとかヒカチの思考を正常へと戻していく。
 
「疲れたでしょ? もう寝よう」
「……ん」

 二体がゆっくり珊瑚の影へ入ります、眠りの姿勢に落ち着いた頃、水棲の向こう側に居る人間達は何食わぬ顔で口々に感想を言い合い、また微笑ましげに二体へ視線を送る。
 
「リュウグウの交尾って長いんだな」
「ちょっとやらしかったね」
「雌のリュウグウ、天幕上がってからビクビクしてるのがよく見えたけど、見られて興奮してたりして」
「まさか。人間じゃあるまいし」


※※※




 数日後、リュウグウの交尾動画は一部マニアの間で異常な人気ぶりを見せた。
 
『コレほぼヒトセックスやん。オスもメスも絶頂して隙だらけやけど自然界大丈夫なんか? 外敵少なかったんか?』
『良質な無修正AV。結合部から溢れる白濁エロ過ぎて五回抜いた』
『AVがダブルミーニングで草』
『MM号出張版の新作が出たなんて聞いてない』
『いいぞもっとやれ(MM使ってリュウグウの交尾を視姦する人間君の特殊性癖にドン引きです)』

 特にマジックミラーの天幕という水槽設備にMMマジックミラー号の有識者にとっては、大規模なAV撮影でしかなかった。
 しかし、リュウグウ変態勢には好評でも、リュウグウの交尾を見た人の中にはこんな意見もあった。

「リュウグウの交尾は、いかがわし過ぎるので子どもの教育に悪いって……先程お電話いただきました」
「気持ちはわからないでもないが、自然の摂理である動物の交尾に規制なんてかけられるか! 子どもに必要なのは規制じゃなくて、ダメなものはなんでダメか教える教育だろうが!」
「先輩落ち着いてください」

 リュウグウの交尾は、子どもには刺激が強過ぎるので、やめてください。そう言ったクレームが多々届いていた。
 
「アレからすっかり交尾はご無沙汰になったが……もしかして、妊娠したのか?」
「雌が珊瑚の巣から出て来なくなって、今度は雄が甲斐甲斐しくご飯運んでますから可能性はあるんじゃないですか?」
「一度身体検査をちゃんとしたいが……どうやったもんか」

 今までの実験により、リュウグウの咬合力や遊泳速度などは結果が出ている。
 強引に身体検査をしようものなら、死人が出るレベルであった。

「潜水士も増えましたし、寝てる間に網で吊ってエコー検査や身体検査、採血とかしますか?」
「そうだな……出来る限り傷付けずに、慎重に」
「はい」

 二体の知らぬところで、また話が進んでいた。
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