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3:子育て注意事項
「ラヴァイ、ご飯だよ」
「んっんっ」
フラクスの元にラヴァイが来て二ヶ月が経っていた。
慣れた手付きで血を与えながら、ラヴァイの食事を見守る。
「はふ、ちゅぅ……」
フラクスの血を一定量吸い終わっても、指が恋しいのか、口から離しても服に吸い付いたりする。
そんな甘えん坊な姿に頬を緩めながら頭を撫でる。
「いっぱい飲んでおっきくなれ」
「けぽ」
日増しに重たくなる体に成長を感じながら愛おしさを噛み締める。
「んぅぅ……ぉおううん……うっ」
「頑張れ……もうちょっと」
「おうううん」
寝返りを打とうとしてるが、上手く出来ない様子にフラクスはハラハラしながら見守る。
「あーー」
「あ! できたッうわぁ!」
ラヴァイはなんとか寝返りを打つことに成功した。だが……勢い余ってコロンとベッドから転がり落ちそうになったのを慌ててフラクスが抱き止める。
「きゃうっう、ううふ」
「……はぁぁぁ……ふふ、ふふふ」
危なかったが、初めての寝返りの成功にフラクスは歓喜した。
自分の状況など何もわかっていないラヴァイは、ただフラクスの顔を見てきゃはきゃは笑っている。
「にへ」
「えらいぞぉー」
「きゃう」
赤子特有のぷくぷくな頰をムニムニと軽く揉めば、ラヴァイが嬉しそうにまた笑う。
育児が生活を彩り、嫌でも活発にならなければいけない。
前よりずっと忙しく、前よりずっと充実した日々だ。
ラヴァイの成長に、フッと素朴な疑問が浮上する。
「……ずっと血でいいのか?」
未だにラヴァイの種族がはっきりしない為、授血から離乳食への移行が必要なのかわからない。
医者に行くにも、魔族を診れる医者は限られており、受診料も通常より金がかかってしまう。
フラクスの生活費から受診料を抽出すると家賃が支払えなくなる額だ。
滞納したら追い出されてしまう。
「(こういう他種族育てる時のセオリーは……)」
専門家の医者に聞けないならば、同種族か近種族に聞くしかない。
「(確か……珍しい娼館があったな)」
フラクスは、樹人族の中で吸血種に分類される妖精が在籍する娼館を訪ねた。
「あら、子持ちのお客さん?」
「吸血種の子育てについてご相談がありまして」
「そう。通常料金払ってもらうけどいい?」
「はい」
娼婦に支払う方が医者より安く済む。
吸血樹の妖精──ガジュが吸血種の子育てについて疑問に答えていく。
「吸血種は、血だけでいいよ。他の物も食べられるけど、それは大きくなって食べたいって言い出すまで考えなくて大丈夫」
「へぇ、そうなんですね……」
ガジュは緑と赤のグラデーションが美しい髪と翅を手入れをしながら、同業者に対して崩した態度で接する。
「まぁ、授血で移行する事と言えば、歯が生えてきたら指からじゃなくて、輸血管からにした方がいいわ。指食い千切られるかもしれないし」
このまま大きくなっていったら、指を食われるかもしれない。
ガシュの小さな口にも、小さな鋭い歯がズラッと並んでいるのが見えて、ゾッとしながらも、授血移行時の必要な物を心に刻んでおく。
「今は、あなたの生活に支障は出てないけど、大きくなるにつれて飲む量が増えるから今のうちにストック作っとくと楽出来る。後から焦っても貧血でぶっ倒れちゃうから」
「保存法は?」
「そりゃ冷凍札よ」
冷凍札とは、氷結魔法が付与された札の事であり、それを貼った物は効力が切れるまで冷凍保存が出来る。
現在では大量生産されている為、フラクスでもお求めやすい値段となっているのが幸いだ。
今後の予定と見通しが良くなっていくフラクスは、知る事の大切さをしみじみと実感した。
「あと、血を嵩増しする用の小動物飼うのもあり。ただ、単純に味を嫌がる子やアレルギー持ってる子もいるから、飼う時は慎重に。精肉店で吸血種用の肉があるから、お試しはそこからかな」
「はい」
「んーー……他には……」
「ぁ、う?」
「…………さわ、触ってもいい、かしら?」
「ええ」
キュルンと円な瞳に見つめられて、ガジュはラヴァイの頬に優しく触れる。
小さな手が擽ったいのか、キュルキュル喉を鳴らして笑うラヴァイ。
「かわいい……」
「(妖精でも、赤ちゃんを可愛いって感じるんだ)」
妖精は魔族や人間と違い、赤子のような過程を経る事はない。妖精は記憶や経験を持って自然物から発生する生命体である。
基本的には知識として持っているだけで、そこに感情は伴わないと聞いていたフラクスは、妖精の中には赤子を愛でる心は持ち合わせている者もいるのだと、微笑ましくなった。
「また何かに悩んだら相談に来ていいわ。ふふ、ほんとに可愛い」
「ぁうー」
「ありがとうございます。本当に助かります」
愛され気質のラヴァイに誇らしくなりつつも、少し心配になってくるフラクス。
「(こんなに可愛いと目立つし、誘拐されそう)」
治安が良いとは言い辛い場所で、ラヴァイから目を離すのがますます怖い。
「(気を付けないと)」
ストック用の容器と冷凍札を購入しながら、フラクスは親らしい不安を抱え始めたのだった。
「んっんっ」
フラクスの元にラヴァイが来て二ヶ月が経っていた。
慣れた手付きで血を与えながら、ラヴァイの食事を見守る。
「はふ、ちゅぅ……」
フラクスの血を一定量吸い終わっても、指が恋しいのか、口から離しても服に吸い付いたりする。
そんな甘えん坊な姿に頬を緩めながら頭を撫でる。
「いっぱい飲んでおっきくなれ」
「けぽ」
日増しに重たくなる体に成長を感じながら愛おしさを噛み締める。
「んぅぅ……ぉおううん……うっ」
「頑張れ……もうちょっと」
「おうううん」
寝返りを打とうとしてるが、上手く出来ない様子にフラクスはハラハラしながら見守る。
「あーー」
「あ! できたッうわぁ!」
ラヴァイはなんとか寝返りを打つことに成功した。だが……勢い余ってコロンとベッドから転がり落ちそうになったのを慌ててフラクスが抱き止める。
「きゃうっう、ううふ」
「……はぁぁぁ……ふふ、ふふふ」
危なかったが、初めての寝返りの成功にフラクスは歓喜した。
自分の状況など何もわかっていないラヴァイは、ただフラクスの顔を見てきゃはきゃは笑っている。
「にへ」
「えらいぞぉー」
「きゃう」
赤子特有のぷくぷくな頰をムニムニと軽く揉めば、ラヴァイが嬉しそうにまた笑う。
育児が生活を彩り、嫌でも活発にならなければいけない。
前よりずっと忙しく、前よりずっと充実した日々だ。
ラヴァイの成長に、フッと素朴な疑問が浮上する。
「……ずっと血でいいのか?」
未だにラヴァイの種族がはっきりしない為、授血から離乳食への移行が必要なのかわからない。
医者に行くにも、魔族を診れる医者は限られており、受診料も通常より金がかかってしまう。
フラクスの生活費から受診料を抽出すると家賃が支払えなくなる額だ。
滞納したら追い出されてしまう。
「(こういう他種族育てる時のセオリーは……)」
専門家の医者に聞けないならば、同種族か近種族に聞くしかない。
「(確か……珍しい娼館があったな)」
フラクスは、樹人族の中で吸血種に分類される妖精が在籍する娼館を訪ねた。
「あら、子持ちのお客さん?」
「吸血種の子育てについてご相談がありまして」
「そう。通常料金払ってもらうけどいい?」
「はい」
娼婦に支払う方が医者より安く済む。
吸血樹の妖精──ガジュが吸血種の子育てについて疑問に答えていく。
「吸血種は、血だけでいいよ。他の物も食べられるけど、それは大きくなって食べたいって言い出すまで考えなくて大丈夫」
「へぇ、そうなんですね……」
ガジュは緑と赤のグラデーションが美しい髪と翅を手入れをしながら、同業者に対して崩した態度で接する。
「まぁ、授血で移行する事と言えば、歯が生えてきたら指からじゃなくて、輸血管からにした方がいいわ。指食い千切られるかもしれないし」
このまま大きくなっていったら、指を食われるかもしれない。
ガシュの小さな口にも、小さな鋭い歯がズラッと並んでいるのが見えて、ゾッとしながらも、授血移行時の必要な物を心に刻んでおく。
「今は、あなたの生活に支障は出てないけど、大きくなるにつれて飲む量が増えるから今のうちにストック作っとくと楽出来る。後から焦っても貧血でぶっ倒れちゃうから」
「保存法は?」
「そりゃ冷凍札よ」
冷凍札とは、氷結魔法が付与された札の事であり、それを貼った物は効力が切れるまで冷凍保存が出来る。
現在では大量生産されている為、フラクスでもお求めやすい値段となっているのが幸いだ。
今後の予定と見通しが良くなっていくフラクスは、知る事の大切さをしみじみと実感した。
「あと、血を嵩増しする用の小動物飼うのもあり。ただ、単純に味を嫌がる子やアレルギー持ってる子もいるから、飼う時は慎重に。精肉店で吸血種用の肉があるから、お試しはそこからかな」
「はい」
「んーー……他には……」
「ぁ、う?」
「…………さわ、触ってもいい、かしら?」
「ええ」
キュルンと円な瞳に見つめられて、ガジュはラヴァイの頬に優しく触れる。
小さな手が擽ったいのか、キュルキュル喉を鳴らして笑うラヴァイ。
「かわいい……」
「(妖精でも、赤ちゃんを可愛いって感じるんだ)」
妖精は魔族や人間と違い、赤子のような過程を経る事はない。妖精は記憶や経験を持って自然物から発生する生命体である。
基本的には知識として持っているだけで、そこに感情は伴わないと聞いていたフラクスは、妖精の中には赤子を愛でる心は持ち合わせている者もいるのだと、微笑ましくなった。
「また何かに悩んだら相談に来ていいわ。ふふ、ほんとに可愛い」
「ぁうー」
「ありがとうございます。本当に助かります」
愛され気質のラヴァイに誇らしくなりつつも、少し心配になってくるフラクス。
「(こんなに可愛いと目立つし、誘拐されそう)」
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