絞って、注いで、血肉へ換えて、生きるのです。

7ズ

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6:子どものいる生活


 ラヴァイを拾って半年が経過した。

「こらこらこら!」
「きゃはぁ! いひひ!」
「裸で走り回っちゃダメ!」

 成長速度が速く、既に走り回れる程になった。

『ジタバタジタバタ』
「ぅう! 力強い!」

 フラクスが取り押さえるのに精一杯の暴れっぷり。
 すっかりヤンチャ坊主で自由奔放なラヴァイは、いつもフラクスを困らせていた。
 
「はい! ちゃんと服着ないと男前が台無しだぞ」
「むぅぅ」

 ラヴァイに服を着せて、むくれた頬にキスをすれば上機嫌になり、コロコロと喉を鳴らす。
 
「(走り回れるけど、発語がまだまだ……ラヴァイの種族は身体が頑丈なんだろうな)」

 筋肉量や身体の発育の違いは寝返りやハイハイのスピードで確信出来ていたが、知能は人並みの成長速度。
 
「ご飯にしようか」
「んひ!」

 採血しておいた血液パックからコップに適量注いだ物を渡せば、管からちゅーちゅー吸っている。
 前までは付きっきりで授血していたが、現在では食事に夢中になっている間、フラクスも家事が出来る。勿論、目が離せないので見える範囲で。

「ご飯の時だけ大人しいんだから。店にいる時も、これぐらい大人しかったらいいんだけど」
「?」

 ラヴァイはフラクスが何を言っているのか長文では、まだまだ理解出来ない。
 だが、ラヴァイはそんなフラクスの複雑な表情が面白くて、キャアキャア笑いながらコップを空にする。

「(可愛い)」

 ラヴァイの笑顔に癒されながら、コップに追加を注ぐ。
 服を畳んで、部屋の掃除が終わると同時にラヴァイの食事も終わった。

「ケプ」
「お散歩行こうか」

 クラフトの言葉にピンと短い背筋を立てて、ラヴァイはフラクスの足に抱き着く。

「ん、お散歩好きか」
「うー」
「じゃあ行こう」

 角隠しの帽子を被ったフラクスと手を繋いで、ラヴァイは元気に家を飛び出した。
 すぐ横道に逸れそうなラヴァイを制御して歩くのも慣れたもの。

「だぁ」
「うん、蝶が飛んでる」
「だ、だぅ!」
「ちょ! それは触っちゃダメだよ!」

 何度も同じ道姿で、何度も同じ会話を繰り返している。
 街に着くまでの緑豊かな道のりは、ラヴァイの好奇心を刺激して、感情の幅まで拡大していき、ラヴァイはラヴァイなりにとても忙しい。
 街に着く頃には、それがもっと忙しない。

「あっあっ、あぅ」
「おぉラヴァイ君、こんにちは」
「だぁ!」
「こんにちは」
「フラクスさんもこんにちは」

 いつも贔屓にしている店に行けば、店主はフラクスとラヴァイの姿を見かけた瞬間に顔を綻ばせて挨拶をしてくれた。
 日用品と冷凍札、変わり映えのない買い物だが、ラヴァイにとって貴重な時間だ。

「あ!」
「コレは嘴のあるお客さん用のお皿」
「あ!」
「こっちは妖精さん達のご飯」
「んひ!」

 店主の説明を理解しているのかわからないが、話しかけてくれるのが嬉しいらしく、常時上機嫌なラヴァイ。
 買い物が済んで、店主にバイバイと短い手を振る姿は、他の客さえほっこりさせる威力がある。

「だっこぉ」
「ちょっと待って」

 荷物を肩にかけてから、ラヴァイを抱き上げるフラクス。
 
「(重い……抱っこ出来なくなる時が来ると思うと、寂しい)」

 成長の重みを日々実感しているが、嬉しさと寂しさが同居する複雑な気分だ。
 こんな日々は永遠ではない。終わりがやってくる事をフラクスも理解している。

「(……ラヴァイの親として恥ずかしくないようにしないとな)」
「あぅ?」
「なんでもないよ」

 額にキスをすると、ラバウトはキャアキャア笑ってフラクスに抱き着いた。



『ガジガジガジガジ』
「……ラヴァイ、コップ噛まないで。管もそれでダメになっちゃったから」
「んぅーー」
「足りないの?」

 お昼に血を飲ませたが、鋭い乳歯でガジガジと輸血管とコップの縁を噛むラヴァイ。
 
「(適量だと思うんだけどな)」
「ん、あ! だっこぉ」
「また抱っこ?」

 追加分を用意しようとしていたら、抱っこのお願いをされて、何も考えずにフラクスは外でした時と同じように抱き上げた。

「(機嫌が悪いわけじゃない……んーーなんでだろ)」
「……あ」
『ガプ』
「いッ!!」

 首筋に噛み付かれて、皮膚に走る痛みにフラクスは歯を食い縛る。

『ジュウ……チュゥ、チュルル』
「(……そうか。牙が鋭いのは、こうやって肉に食い込ませて飲む為だ。物足りないのは、そこの部分か)」

 小さな口に自分の血が飲み下されていく感覚を味わいながらフラクスはそんな事を考えていた。

『ゴクン』
「ぷはぁ!」

 ラヴァイが口を離して、満足そうに笑う。その笑顔に釣られてフラクスも思わず笑ってしまう。

「噛みたい本能が、ちゃんとあるんだね」
『カプカプ』
「んんぅ」

 フラクスの腕を甘噛みするラヴァイは、加減は出来てはいる様子。
 コップを齧らせておくのは可哀想だ。肌に近い食感の物を挟んで、血を啜れるようにしてやりたい。
 吸血種の為のそう言ったグッズが無いか探してみようと、フラクスは頭の隅で考える。

「流石にあの店でも売ってないなぁ……どうしようか」
「?」
「ふふ、どうしようもないか。聞き込みしてみるよ」
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