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14・誓いの口付けを
しおりを挟む『ブチブチッ!』
『(まずい……このままでは、身体が分裂して力が弱くなってしまう。そうなったらコイツを捕まえておけない)』
「モモォーー!」
『!』
モモの身体が半分以上食い破られているが、モモは生きている。
俺は生成術で生み出した魔石99パーセントの不恰好な斧頭を持ち手に合体させたバトルアックスを構えてモモが押さえつけている黒竜へ突っ込んだ。
しかし、武器の異様性を感じ取ったのか黒竜は身を捩ってモモの拘束を逃れしまった。
『す、すまん……逃した』
「いい! 後は任せろ!」
黒竜と再び対峙する。
「(モモがだいぶ削ってくれた。首の刃にコレが触れれさえすれば、勝てる)」
息切れをしている黒竜へ向かって、突進した。
黒竜は火炎放射で迎え撃ってくるが、それをバトルアックスを杖代わりに風魔法を発動させて火炎放射の中を突っ切る。
『おい! ジュンイチロー、何を…』
魔石99パーセントのバトルアックス。そんなの魔力使い放題の魔法の杖と変わりない!
魔力を込めれば込める程、初級魔法でも絶大な威力を発揮する!
風で炎を流し穿ち、突き進む。熱された鎧とバトルアックスが肌を焦がすが、コレで良い!!
『ブワン!!』
「グア!?」
火炎放射を正面突破し、黒竜の虚を突いた俺は、黒竜の首元に貫通して突き出ている薄く細い刃に、熱されて色の変わった魔石バトルアックスの切っ先を叩きつける。
「生成!」
熱されているならば生成に必要な魔力消費が若干だが減る分、時短になる!
『ズブシャ!』
「ギャェェエエ!」
貫通している細い刃に沿わせながら少し角度を変えて背中側に魔石を同様に細い刃へと変形を行い貫通させた。
これで二本がほぼ同じ長さでぶっ刺さっている事になる。
「ヒュッ! カヒュ!」
器官を掠ったのか、黒竜の喉から空気漏れの音が聞こえた。
俺はぶっ刺した持ち手の部分とこちらに貫通していた切っ先部分を二つとも輪っかに変えて、そこにぶら下がっていた。
「(さぁ、来い! 俺を前足で掴め!)」
狙い通り、黒竜は俺を掴もうと前足の鉤爪を伸ばしてきた。焦っている黒竜の単調な動きは見切り易く、難なく避けて首元で挑発する。
「どうした? どうした? さっきみたいにポイ捨てして見ろよ!」
「ギィャオオオ!!」
怒り狂った黒竜が、俺を振り落とそうと激しく体を揺さぶり始めた。
「(風圧と慣性で身体がバラバラになっちまいそうだ!)」
振り落とされないよう必死に輪っかを握り締め、前足の動きを見極める。
『ガシッ!』
『ベキ!』
俺の輪っかを掴む手を黒竜が輪っかごと、掴んだ衝撃で右腕が嫌な音を立てて折れた。
だが、俺は離さない。ジクジクと痛む右腕で輪っかを握り込んだまま、前足の次の動きを待つ。
『グンッ!!』
『ミシミシ! バキ!』
「ぐ、あああ!」
俺の右腕を潰しながら、黒竜は俺を首元から勢いよく地面へ投げ捨てた。
──……ザグン!
『ブシャアアアアアアアアア』
地面へ激突する前に見えたのは、黒竜の首が裂け、鮮血が天高く吹き上がる光景だった。
鉤爪に引っ掛かった輪っかが横に動いた事によって、首を貫通していた刃を通常とは逆に刃を生成した逆刃の鋏が口を開いた。
黒竜は自分の凄まじい力で、自分の首を引き裂いたのだ。
『ドッ、ゴロ、ガン! メギョ、ベキィ!』
地面に身体が打ち付けられ、何度もバウンドする体からダメな音が聞こえる。
防具のおかげで地面に叩き付けられても肉塊にならずに済んでいるが、相手の力が強過ぎて頑丈なはずの防具がボロボロだ。
『ボムッ』
『ジュンイチロー! 大丈夫か!? 生きてるのか!?』
「……はぁぁ……生きてる……ギリギリ」
肉の身体で受け止めてくれたモモが、心配そうに声をかけてくる。
折れ曲がった手足の感覚は無いが、冷たくはない。
名:ハラノ ジュンイチロー
LV:20
HP:199/200(+0/25876)
MP:0(+45)
ATK:30(+6775)
EDF:30(+6775)
スキル:搾精超強化Lv3、肉体性感度(高)
∟搾精スキル抽出
∟魅了Lv1、鑑定Lv3、気配遮断、追跡、生成術Lv2
あの場でモモと二回セックスしてなかったら確実に死んでた。
「モモ、ありがとう。おかげで助かった……」
『いい。気にするな……それよりも、あの武器はなんだ?』
「逆刃の鋏……外側に刃を付けて、開いたら肉が裂けるように……死んだと思うけど……うっ!」
起き上がろうとしたら全身が悲鳴を上げた。
『なんて無茶な戦法だ。指導員が言ってた事がまるで守れてない』
「はは……手厳しい」
こんな戦い方、ゴドーさんにバレたらこっ酷く叱られてしまう。
「バウ! ガウガウ!」
『ベロベロベロ』
「いだだだ!! やめろテメェ! 体の上に乗るんじゃねえ!」
森狼が駆け寄ってきて俺に乗り上がり顔をベロンベロン舐め回してきた。
「……黒竜は動かねえな」
『そろそろ力尽きる……ジュンイチロー、衝撃に耐える準備をしておけ』
「?」
首の裂けた黒竜は横たわった地面に鮮血を広げて、徐々に弱っていく。
「……アイツも、被害者なんだよな。連れて来られた先で生き残ったら魔王にされて……」
『そうだな。でも、アイツは人間を痛ぶって食べるのが好きだと言っていた。どの道、人間とは敵対していただろう』
魔物同士で戦闘中少し話したみたいだが話が通じる相手では無かったらしい。
『ペキ』
「ん!?」
なんだ!? 急に身体が!
『メキメキ! ギチ、メギィ』
「いだだだ! 痛い! 痛いぃぃ! なんで、モモとセックスして無いのに、身体が回復していくんだ!?」
『魔王を倒した経験値が一気に入って、レベルアップで底上げされたステータスで回復してるんだ。普通はこんな大幅なレベルアップはあり得ないが、運が良い』
潰された右腕の骨が治り、砕けた肋骨が、背骨が、指の足が修復されていく。
『メギィ!』
「いでぇ!」
『バキィ!』
「ああああ!」
モモとのセックスでは即効治ったけど、レベルアップの回復は緩やかだ。骨の動く痛みが長く続く。
痛みが引く頃には、俺は泣きじゃくってモモに縋りついていた。
「すん、すん……痛かったぁぁ」
『無茶するからだ』
「ひっぐ……気が狂うかと思った」
涙を拭って立ち上がり、変わり果ててしまった武器を魔石と混ぜて球体で回収する。
「……ゲンゾウさんになんて言い訳しよう」
いや、あの人鑑定持ちだからレベル爆上がりしたのバレるんだけど……あーーもう、今日はいいや。家に帰って昼過ぎまで寝よ。
「モモ、疲れたからおぶってって」
『別に良いが……コイツはどうする」
「ヘッヘッヘッ!」
森狼が仲間になりたそうにこちらを見ている。
「……今後必要になる。一緒に来たいならおいで」
「バウ!」
森狼が仲間になった。
家に朝帰りの爆睡キメたら、自動修復のおかげで昼過ぎにはボロボロだった防具が元に戻っていた。
また、家に帰って来れたんだ。
「…………」
『ジュンイチロー、言いたい事が山ほどあるぞ』
「……俺も」
『大体お前は自分の身より他人を優先す──』
「愛してるよ。モモ」
モモを抱きしめてキスをした。
ビヨっと触手が伸び上がって固まってしまった。
「ありがとう……助けに来てくれて、本当にびっくりしたし不甲斐なかったけど……めちゃくちゃ嬉しかった」
『…………』
「走馬灯も何も見えなくて、ただ凍えながら一人で死ぬんだって思ったら……モモが来てくれて、愛してるって言ってくれた……」
『…………』
「俺も同じ気持ちだ。何より大事なモモが愛おしい。モモに抱かれるのが好きだ。モモとならキスもしたい。モモが喜んでくれる事が幸せだ。俺にとって、一番優先すべきだったのがモモだったんだ」
身体を離して、目を合わせ……肉兎状態だと横に付いてるから目が合わないけど真っ直ぐに、真剣に、俺の気持ちを伝える。
『……私が、ジュンイチローに愛してると言ったのは……万が一自分が死ぬような事があれば、この感情を伝えずに死にたくないと思ったからだ』
「うん……」
『殺されるはずだった私を助けてくれた優しさも、自分勝手なところも、好ましい。本当は、今すぐ孕ませて私のモノにしたいぐらい、私はジュンイチローに焦がれている』
「……うん、うん」
モモが人型になって俺に向き合うようにベッドに腰を下ろした。
『ジュンイチローが……もし、同じ気持ちなら……私と番になってくれないか?』
「……それって、その……あの……夫婦的な意味で?」
こくりと、モモが首を縦に振った。
俺は顔が熱くなるのを感じ、胸の鼓動が早くなっていく。
いや、まあ……いつかは……誰かとそうなるかなもとは思ってたよ? だけどさ、まさかこんな形になるとは思わないじゃん! 俺とモモが! 付き合ってるとかいう話じゃないんだよ!
番……人間で言うところの結婚だ……モモから、結婚のプロポーズをされてしまったんだ!
冷や汗と赤面が止まらない!
だっていつから!? まじで!? マジで!? モモが俺の事好き!? やばい! やばすぎる! 今すぐモモを襲って子作りに励みたい!
『……急すぎたな。すまない』
「きょ、きゅ、きゅきゅうじゃない!! なる! 番になるから……あの、今後もよろしくお願いします!」
……ちゅっ。
「………………ふぇ?」
『……あ? 人間は番になった時に口を合わせるんじゃ無かったか?』
モモからキスされた……自分でした時は別に何も照れはなかったのに、めちゃくちゃ照れ臭いぞ! 何だこれ!! セックスより照れ臭い!!
「はぁ~~! モモ、俺ちょっと隠れ蓑にしてた依頼終わらせてくるから! おいで、カムフラ。使い魔登録に行こう」
「バウ!」
森狼はカムフラと名付けた。
恥ずかしさのあまり家を飛び出して、討伐対象と対峙してから気付いた。
丸腰だった事に。
やけくそで討伐対象にパンチしたら勝てた。うん。OKとしよう。
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