巻き込まれ転移者の特殊スキルはエロいだけではないようです。

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26・火口の魔王

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 朝日もまだ水平線の向こうに沈んでいる時間帯に俺は身支度を整え、家を出ていた。
 昨日のヤバいセックスの所為でステータス値がヤバい事になってる。

名:ハラノ ジュンイチロー
LV:69
HP:4180(+136539)
MP:0(+11755)
ATK:3275(+18528)
EDF:3275(+18528)
スキル:搾精超強化Lv4、肉体性感度(極)
    ∟搾精スキル抽出
     ∟魅了Lv2、鑑定LvMax、気配遮断、追跡、生成術Lv3、状態異常耐性(中)
神聖治癒術LvMax
 ∟能力値供与
 ∟再生治癒術Lv3


 人間のレベルは上限Max100。それ以上はステータス値は上がらず、年齢と共に数値が落ちて行くらしい。
 しかし、スキル効果で増加しているステータス値は100レベルの上限数値も超え、老化による衰えの影響も受け難い。
 長生き出来そうだ。

「(長生き出来るかは、魔王に勝てればの話になるが……)」

 専用マスクを着用した状態でフェル火山を登り始めた。
 よくこんな場所で魔王が発生したものだ。人為的でも結構難しそうだ。今回は自然発生なのかも知れない。

「……あ?」

 魔王が発生すると他の小動物含めて魔物達は逃げ出してしまうらしいが……見覚えのある魔物の遺体が道端に横たわっていた。

一角紅いっかくべに……」

 前足の折れた一角紅。聖女様を襲ったヤツだな。行き場が無く、フェル火山に戻ってきたところで力尽きたようだ。
 体にはフェル火山に群生している遺体の養分と魔力を吸い取る腐生菌が根を張り、青々と発光している。

「?」

 一角紅の側に大きな足跡があった。追跡を使うまでもない。魔力に引かれて菌が発生しており、頂上へ向かって光が点々と続いている。
 その道中には一角紅と同じように命を落とした魔物達が転がって光っていた。
 足跡を辿って獣の山道を登る。火山灰で、視界が悪く、しっかり踏み込まなければ危険な程足場は悪かった。
 マグマ溜まりもあり、落ちたらただでは済まない。
 そして……その足跡の終着点は山頂の火口付近だった。

『ゴオオオォッ! 』

 火口からは煙が上がり、その火口近くに何かがいるのが分かった。
 視界が悪過ぎて鑑定が届かない。が、黒煙から見えた身体の一部は巨大で、毛皮に発光する菌が付着していた。
 その巨大な影は俺の姿を確認すると……威嚇するように身を屈めた。
 ゆっくりと足を進め、その姿の全貌が見えてきた。
 赤い巨体の熊の姿。

「(一角紅か……いや、あれは違う!)」

 二本の角を持つ大熊……二角紅蓮ふたかくぐれんだ。

二角紅蓮:活火山の山岳に棲息する大型魔獣。角を使い縄張り争いや狩りを行う。巨体ながら俊敏な動きで獲物を追い詰める。
一角紅の上位種であり、極めて獰猛。

 俺の目の前にいる個体は、体長が5メートルはあるだろうか。
 赤くも青い体毛は逆立たせる奴から放たれる禍々しいオーラが、肌をチリつかせる。

「(……は?)」

 鑑定をしようと二角紅蓮に意識を向けるが、表示された数値に俺は今までにない程困惑した。

種:二角紅蓮
Lv:85
HP :0
MP :125ⅢⅢ
ATK:28005
EDF:10
スキル:ー

 バグっているのか? それとも……いや、そんなはずはない。こんな数値は、流石におかしいと俺でもわかる。
 
「(確かに動いてる……)」

 こちらをしっかり認識して、敵意むき出しにしているにも関わらず、何故か生命力であるHPの数値だけゼロになっていた。
 それにMPもおかしい。下の桁の数字の入れ替わりが激し過ぎる。増減をすごい速さで繰り返している。
 動揺を隠せない俺は、気付けば無意識にバトルアックスを構えていた。
 二角紅蓮は俺の武器を見ると、興味深そうに首を動かして近寄ってくる。
 不気味だ。
 けれど、このまま睨み合っていても何も変わらない。
 意を決して全速力で飛び掛かり、バトルアックスの一撃をお見舞いする。

『サク……』
「あ?」

 二角紅蓮の首が呆気なく胴体と分離する。
 俺の一撃が、簡単に入った。まるで豆腐でも斬ったかのように手応えが無かった。
 俺が強いからとか、そんなんじゃない。手応えが無さすぎる。

『……モゴ……』
「……はぁ!?」

 切り落とされたはずの首の断面がボコボコ泡立ち、糸のような物が落ちた首を拾って、元の位置に繋ぎ合わせる。

「…………うそ、だろ?」

 次から次へと異常事態が起きている事に混乱が止まらない。

『ガッ!』
「くっ」

 一瞬にして距離を詰めて来た二角紅蓮の丸太のような豪腕が襲いかかる。
 咄嵯に反応してバックステップを踏むと、背後にマグマ溜まりがあり、そこへ足を突っ込んでしまった。

『ドボ!』
「熱ぅッ!」

 ジュンッとブーツが溶け焦げる感じがしたが、マグマに足突っ込んで熱いだけで済んでいるのは、防御力と聖女の鎧のおかげだろう。
 
「(……とにかく、動きは黒竜程トリッキーじゃない)」

 俺は、二角紅蓮の両腕を切り落とす連撃を放った。
 やはり、手応え無くボトリと落ちる。
 そもそも避けると言う動作をしない。

「!」

 また、糸が伸びて両腕を繋いだ。

「…………どうなってる」

 再生能力を持っているにしても異常な再生速度。俺が倒した魔物達の死骸も、再生する様子なんてなかった。
 モモは自己再生が出来るがこんなスピーディではない。
 再生するならもっと遅いはずだ。
 
 俺はその後も二角紅蓮に攻撃を叩き込んで観察した。
 そして、やっと気付いた。

「(コイツ二角紅蓮は……魔王じゃない)」

 切り刻まれても傷口が繋ぎ合わされていく。まるで乱れた衣服を整えるように。
 二角紅蓮の骸に何かが潜んでいる。
 そいつが魔王だ。いや、そいつが魔王だ。

「(鑑定!)」

 ステータス値は流石に出なかったが、正体はわかった。

フェルナンドサーチライト:主に活火山の生物の遺体に根を張る腐生菌。魔力を吸い取ると青く発光し、魔力値と魔物の肉体が朽ち果てるまで増殖を繰り返す。
 
「魔王は……お前らだな」

 二角紅蓮の皮を被り、亡骸内で大量増殖したフェルナンドサーチライトがまるで生きているかのように操っている。
 牙も爪も角も得たフェルナンドサーチライトは、菌床を増やす為に魔物を殺していたのか。山中に転がっていた青い光を放つ魔物達を思い出す。

「(あの巨体にどんだけ詰まってんだ……)」

 いくら俺が攻撃を叩き込んでも意味がない。
 だが、鑑定による追加情報で弱点はわかっている。
 
「(……モモより温度調整は下手だが、俺の魔法でも十分だ)」

 いつもモモがお湯を沸かす水魔法の逆を行う。灼熱の活火山で生活を営むフェルナンドサーチライトは冷水を浴びると温度差に耐えられず、細胞が崩れ去る。
 
「!」
「流石に気付くか」

 俺の魔法に気付いたのか、二角紅蓮の動きが変化する。
 自分達を脅かす存在には容赦をしないと、俺に飛び掛かってきた。
 単調な動きだ。

「アイスウォーター!」

 水の球を攻撃を避けながら二角紅蓮の身体にヒットさせる。
 よしよしよし! コレを続ければ勝てる!!

『ブシュ! 』
「なに!?」

 奴の体毛が針のように鋭く尖って俺に向かって飛んできた。
 それをギリギリのところで避けるが、何本か腕を掠めてしまい、出血する。

「(……防具と聖女の鎧を貫通してきやがった)」

 飛ばされた針のような物を確認すると、体毛をコーティングした菌だった。

 ジクジク……ジュク……

「!?」

 掠れた傷口に青い光を放つ菌が菌糸を伸ばして体内に入り込もうとしていた。

『バシャ』
『……ボロ』
「おいおいおい……お前、腐生菌だろ? 寄生型じゃねえのに、なんで……」

 体内に入られる前に、腕に付着した菌を水で除去したが……腐生菌は死んだ生き物に根を張る。死んだ生き物からしか得られない栄養があるからだ。生きている生物に根を張るのは、寄生タイプの菌。
 全く生き方が違うのに何故?

「(もしかして、増殖目的じゃない? コレって……)」
『ザン!』

 再び菌の針を打ち出されたが、今度は全て弾き落とした。
 
「(相手を殺す事が目的なのか)」

 生きた生物から栄養を取る為の攻撃ではなく、殺す為だけに特化した攻撃。
 体の奥に潜り込まれたらなす術が無い。脳か心臓、或いは臓器を壊されてじわじわと殺されてしまう。
 
「(冬虫夏草の中には蟻を操作してゾンビ化する菌も居るしな……)」

 思っていた以上に恐ろしい相手と対峙している。
 俺は一定の距離を保ち、針を防ぎながら冷水を浴びせまくる。地味な戦法だが、接近戦は危険過ぎる。

『バシャン!』
「……効いてる気がしない」

 身体を切り裂いて、距離を取りつつ塞がる前に冷水を打ち込んでみたが、一向に弱る気配を見せない。
 
「(バトルアックスのおかげで魔力は尽きない。向こうは消耗するはずなのに……)」

 針を防ぎながら思考を巡らせる。
 俺の出来る最大限の低温にしてる。氷水と言って差し違え無い冷たさのはずだ……なのに効いてない?

「(……熱い)」

 火口付近での立ち回りだから、体感ではサウナにいるぐらい熱い。実際はもっと熱いのだろうが。
 ……あ。
 掌にあるアイスウォーターを上に打ち上げて、頭に被ってみた。

『バシャ』
「……温い」

 射出して1秒足らずで微温湯ぬるまゆになって落ちてきた。
 そりゃそうだ。冷たくても、たかが氷水。マグマの熱気に晒されたら一瞬だ。
 安全策として距離を取っていたのが裏目に出た。
 
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