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2:対価の内心
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塀の中に植えられた木々に隠されひっそりと建っている古屋敷の門を潜り、軋む扉を開ける。
『ギィ』
「……ただいま」
「おかえり」
月明かりしかない暗闇のリビングで、木製の椅子に腰掛けた男がスレーブを出迎える。
「ベルエム」
「スレーブ……今月の対価は?」
肩まで伸びたウェーブがかった銀髪。頭には縦長に伸びた角が二本生えている。
独特の形をした瞳孔の赤目がスレーブを見据える。
人のようで、人ならざる存在の前で、初めてスレーブの声に弱気が滲む。
「……金貨500枚」
「…………足りないな……そんな安い対価では、願いの継続は出来ない」
「素材報酬はきっと金貨50枚は堅い。それも全て」
「足りない」
「っ……」
ベルエムと呼ばれた男が立ち上がり、張り詰めたスレーブの表情を兜越しに覗く。
「その程度の対価で、妹の延命が叶うと思うな」
「…………」
「ほら……差し出せ。スレーブ」
トンっと、ベルエムが指で軽くスレーブの鎧を叩く。
「…………ベルエム」
「なんだ? 久々で怖くなったか? 俺に身体を暴かれるのが」
「違う……俺の身体で、足りるのか?」
「あっはっはっは、スレーブ、スレーブスレーブ! お前は自分の価値をわかってないな」
ベルエムの銀髪が揺らめき、角が月光を反射する。
「全部だ……全部欲しいぞスレーブ。足りない分はお前をもらう」
「……ああ」
観念したように頷くスレーブにベルエムの顔が歪む。笑みにも見える表情のまま、彼は鎧の留め具を魔法で全て外した。
『ガシャンガシャン』
「始めようか……スレーブ」
ベルエムが、スレーブの兜を外せば草臥れ気味の中年男が現れる。
三白眼の中で揺れ動く黒い瞳は、赤目に仕留められる。
スレーブには、歳の離れた妹がいる。
名はメリッサ。
二人はメルデンディアよりずっと東に位置した小国の農村地出身である。
「ぅ……ぐ、ぁ」
「随分と立派な体躯になったものだ。村が魔物に襲われて、死にかけの妹連れてびーびー泣きながらみっともなく俺に縋ってきたガリガリの枯れ枝だったのになぁ」
スレーブが身に付けている物は最早ブーツだけ。
怪物達を圧倒する力を宿すスレーブの身体は、ベルエムの細腕に抑え込まれている。
声を噛み殺しながら、スレーブはベルエムに身体を差し出し、仰向けに組み敷かれた状態で、ベルエムの性器を後ろで受け入れている。
「悪魔式で鍛えてやった甲斐があったな」
『グジュ』
「んんっ!」
「おいおい、スレーブ。声を殺すな。国一番の武人であるお前の喘ぎ声だ。価値は計り知れない……出し惜しむな」
「し、かし……んっ、ベルエム」
「ああ……萎えないから、気にするな」
スレーブが引き締めている唇を、先の裂けた長い舌で開口を促す。
「ん……うあ、ぐっ、ああ!」
「はは……可愛いなぁ」
ベルエムに従って渋々口を開き、喘ぎ声を垂れ流すスレーブ。
羞恥心に顔を赤くし、与えられる快楽に身を震わせるその姿には、『殲滅』の称号を持つ面影は微塵もない。
「お前も楽しめスレーブ。これは妹の延命の為だぞ」
「ああ、それは……んっ! 理解している」
スレーブの妹メリッサは村が魔族の襲撃を受けた際に瀕死の重傷を負い、偶然遭遇した悪魔に妹の延命を懇願した。以来、二十年経った現在もベルエムの"悪魔式・治癒の魔法"が無ければいつ事切れてもおかしくないとベルエムに言い聞かされている。スレーブが日々稼いでいるのは、メリッサの延命治療費だ。
唯一の肉親であるメリッサの為ならば、スレーブは何でもしてきた。
この状況も、妹の為に仕方なくベルエムに身体を差し出している……と、思っているのはベルエムだけだ。
「はっ、ぁ、ああっ、べるえむ……んっ」
「ふは、無精髭の男が乙女のような口付けをしやがる」
「ぃ、や……か?」
「全然……ん」
「っ……」
口内に入り込むベルエムの長い舌がスレーブの舌を絡め取りながら上顎を撫で上げる。
長い口付けが終わり、銀色の唾液の橋がスレーブの胸板にボタボタと落ちる。
「ハッ……ハッ、ヒュー……ゲホ」
「良い顔だ。雄を受け入れ、快感に蕩けて……まるでメスだ」
ベルエムが腰の角度を変えつつ、突き上げれば、衝撃で仰け反ったスレーブが快楽の声を溢れさせた。
「ひっ、あ!?」
「ほら声を出せ。恥ずかしいエロい喘ぎ声を妹の為に撒いちまえよ!」
『バチュンバチュ』
「ぁ、あっあっ、べるえむ、激しっ」
「お前は激しい方が好きだろ?」
「……す、き」
ベルエムに揺さぶられながら、背に腕を回して離れぬように脚を絡める。
そして譫言のように呟く。
「好き……好き、好きぃ」
「っ……ふっ、スレーブ……」
肉欲に溺れたスレーブに煽られ、ベルエムは腰の動きを加速させた。
『グチュグチュン、グプン』
「あああっ!!」
「うぐっ……出すぞ」
限界に達したベルエムの精がスレーブの中へ放たれる。
大きな脈動がスレーブに伝わり、自然と腰を押し付けて溢さないように力が入る。
『ズルリ』
「ふ、あぁ」
放心した様子で全身から力が抜けたスレーブの中からベルエムの性器が抜けると、くぱぁと開かれた孔からどろりと大量の白濁液が溢れ出した。
身体をスレーブの隣に横たえたベルエムが満足そうに笑みを浮かべる。
「初めは渋る癖に、始めてしまえばメスの顔になる……妹に見せてやりたい」
「……」
スレーブは息を整えながら、何も言わない。
ベルエムは存外優しい手付きで肌に張り付いたスレーブの髪を払い、頬を撫でる。
「今夜は眠れないぞ。ふふ、大好きなセックスを存分に楽しめ」
「っ……ぁ、ああッ」
ベルエムは、気付かない。
スレーブが自分を見つめる熱の篭った眼差しに。ベルエムを受け入れ、注がれる欲に対して喜びに打ち震える心があることを。
ベルエムは知らない。
『グリュ』
「ひぐ!」
「これ、好きだろ? スレーブ」
「べる、べるえむッ」
対価を理由に組み敷いて、辱めを与えている相手から、恋慕の情を向けられていることを。
ベルエムには知る由もない。
スレーブにとってこの凌辱が、恋心の慰めになっている事を。
『ギィ』
「……ただいま」
「おかえり」
月明かりしかない暗闇のリビングで、木製の椅子に腰掛けた男がスレーブを出迎える。
「ベルエム」
「スレーブ……今月の対価は?」
肩まで伸びたウェーブがかった銀髪。頭には縦長に伸びた角が二本生えている。
独特の形をした瞳孔の赤目がスレーブを見据える。
人のようで、人ならざる存在の前で、初めてスレーブの声に弱気が滲む。
「……金貨500枚」
「…………足りないな……そんな安い対価では、願いの継続は出来ない」
「素材報酬はきっと金貨50枚は堅い。それも全て」
「足りない」
「っ……」
ベルエムと呼ばれた男が立ち上がり、張り詰めたスレーブの表情を兜越しに覗く。
「その程度の対価で、妹の延命が叶うと思うな」
「…………」
「ほら……差し出せ。スレーブ」
トンっと、ベルエムが指で軽くスレーブの鎧を叩く。
「…………ベルエム」
「なんだ? 久々で怖くなったか? 俺に身体を暴かれるのが」
「違う……俺の身体で、足りるのか?」
「あっはっはっは、スレーブ、スレーブスレーブ! お前は自分の価値をわかってないな」
ベルエムの銀髪が揺らめき、角が月光を反射する。
「全部だ……全部欲しいぞスレーブ。足りない分はお前をもらう」
「……ああ」
観念したように頷くスレーブにベルエムの顔が歪む。笑みにも見える表情のまま、彼は鎧の留め具を魔法で全て外した。
『ガシャンガシャン』
「始めようか……スレーブ」
ベルエムが、スレーブの兜を外せば草臥れ気味の中年男が現れる。
三白眼の中で揺れ動く黒い瞳は、赤目に仕留められる。
スレーブには、歳の離れた妹がいる。
名はメリッサ。
二人はメルデンディアよりずっと東に位置した小国の農村地出身である。
「ぅ……ぐ、ぁ」
「随分と立派な体躯になったものだ。村が魔物に襲われて、死にかけの妹連れてびーびー泣きながらみっともなく俺に縋ってきたガリガリの枯れ枝だったのになぁ」
スレーブが身に付けている物は最早ブーツだけ。
怪物達を圧倒する力を宿すスレーブの身体は、ベルエムの細腕に抑え込まれている。
声を噛み殺しながら、スレーブはベルエムに身体を差し出し、仰向けに組み敷かれた状態で、ベルエムの性器を後ろで受け入れている。
「悪魔式で鍛えてやった甲斐があったな」
『グジュ』
「んんっ!」
「おいおい、スレーブ。声を殺すな。国一番の武人であるお前の喘ぎ声だ。価値は計り知れない……出し惜しむな」
「し、かし……んっ、ベルエム」
「ああ……萎えないから、気にするな」
スレーブが引き締めている唇を、先の裂けた長い舌で開口を促す。
「ん……うあ、ぐっ、ああ!」
「はは……可愛いなぁ」
ベルエムに従って渋々口を開き、喘ぎ声を垂れ流すスレーブ。
羞恥心に顔を赤くし、与えられる快楽に身を震わせるその姿には、『殲滅』の称号を持つ面影は微塵もない。
「お前も楽しめスレーブ。これは妹の延命の為だぞ」
「ああ、それは……んっ! 理解している」
スレーブの妹メリッサは村が魔族の襲撃を受けた際に瀕死の重傷を負い、偶然遭遇した悪魔に妹の延命を懇願した。以来、二十年経った現在もベルエムの"悪魔式・治癒の魔法"が無ければいつ事切れてもおかしくないとベルエムに言い聞かされている。スレーブが日々稼いでいるのは、メリッサの延命治療費だ。
唯一の肉親であるメリッサの為ならば、スレーブは何でもしてきた。
この状況も、妹の為に仕方なくベルエムに身体を差し出している……と、思っているのはベルエムだけだ。
「はっ、ぁ、ああっ、べるえむ……んっ」
「ふは、無精髭の男が乙女のような口付けをしやがる」
「ぃ、や……か?」
「全然……ん」
「っ……」
口内に入り込むベルエムの長い舌がスレーブの舌を絡め取りながら上顎を撫で上げる。
長い口付けが終わり、銀色の唾液の橋がスレーブの胸板にボタボタと落ちる。
「ハッ……ハッ、ヒュー……ゲホ」
「良い顔だ。雄を受け入れ、快感に蕩けて……まるでメスだ」
ベルエムが腰の角度を変えつつ、突き上げれば、衝撃で仰け反ったスレーブが快楽の声を溢れさせた。
「ひっ、あ!?」
「ほら声を出せ。恥ずかしいエロい喘ぎ声を妹の為に撒いちまえよ!」
『バチュンバチュ』
「ぁ、あっあっ、べるえむ、激しっ」
「お前は激しい方が好きだろ?」
「……す、き」
ベルエムに揺さぶられながら、背に腕を回して離れぬように脚を絡める。
そして譫言のように呟く。
「好き……好き、好きぃ」
「っ……ふっ、スレーブ……」
肉欲に溺れたスレーブに煽られ、ベルエムは腰の動きを加速させた。
『グチュグチュン、グプン』
「あああっ!!」
「うぐっ……出すぞ」
限界に達したベルエムの精がスレーブの中へ放たれる。
大きな脈動がスレーブに伝わり、自然と腰を押し付けて溢さないように力が入る。
『ズルリ』
「ふ、あぁ」
放心した様子で全身から力が抜けたスレーブの中からベルエムの性器が抜けると、くぱぁと開かれた孔からどろりと大量の白濁液が溢れ出した。
身体をスレーブの隣に横たえたベルエムが満足そうに笑みを浮かべる。
「初めは渋る癖に、始めてしまえばメスの顔になる……妹に見せてやりたい」
「……」
スレーブは息を整えながら、何も言わない。
ベルエムは存外優しい手付きで肌に張り付いたスレーブの髪を払い、頬を撫でる。
「今夜は眠れないぞ。ふふ、大好きなセックスを存分に楽しめ」
「っ……ぁ、ああッ」
ベルエムは、気付かない。
スレーブが自分を見つめる熱の篭った眼差しに。ベルエムを受け入れ、注がれる欲に対して喜びに打ち震える心があることを。
ベルエムは知らない。
『グリュ』
「ひぐ!」
「これ、好きだろ? スレーブ」
「べる、べるえむッ」
対価を理由に組み敷いて、辱めを与えている相手から、恋慕の情を向けられていることを。
ベルエムには知る由もない。
スレーブにとってこの凌辱が、恋心の慰めになっている事を。
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