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番外編①

第九話・渇望

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 中継が終わったら、いつの間にか夕方だ。

「はぁぁぁぁ……」

 竹葉は安堵の息を吐いて、携帯を置いて風呂へ向かった。
 汗でもかいたのか、結構長い間入っていた。
 竹葉がリビングに戻ると、冷蔵庫を漁ったり自室へ行ったり動き回っている。
 ボーっと眺めていたら寝室へいろいろ持ち込んでいる事がわかった。

『ガチャ』
「竹葉、ただいま!」
「おかえり!」

 家へ飛び込むように帰ってきた盃が竹葉と早々に熱い抱擁を交わす。相変わらずの仲睦まじさだ。

「怪我は?」
「無いよ」
「疲れただろ?」
「全然」

 心配する竹葉に対して盃は即答で答える。
 確かに疲れは見えず、元気そうだ。

「竹葉……良い匂いする」
「風呂入ったから」
「……俺も入ってくるから、待ってて」
「いくらでも待つぞ」

 竹葉は寝室へ向かい、盃は風呂へ向かった。
 何やらいつもと雰囲気が違う。
 二人共妙にソワソワしてて独特な緊張感がある。
 竹葉の居る寝室へ移動して、目に入って来たのは並べられたペットボトル、タオル、箱ティッシュ、ローション、コンドームだった。
 私の抱えていた疑問は漸く解決された。

「……お待たせ」
「待った……すげえ待った。三ヶ月待った。ああ、やべぇ……泣きそう」

 二人が肉体関係を避けていたのは盃が大会に向けてストイックな生活を徹底していたからだ。
 つまり、二人は……

「我慢させてごめんね。待っててくれて、ありがとう竹葉」
「怪我無く帰って来てくれて、嬉しい……盃、もう、我慢出来ない」
「俺も」

 恋人同士。
 なるほど。すっごいスッキリした。


 竹葉が盃をベッドへ押し倒して、キスをする。
 最初は啄むような口付けだったが、徐々に舌を絡ませていく深いものに変わる。互いの唾液が混ざり合い、微かな水音が響く。
 他人の情事を覗く趣味は無いが、二人から目が離せない。
 竹葉は盃の服を脱がしにかかり、シャツのボタンを外し、胸に手を這わせながら、唇を重ね続けている。

「んっ……」

 盃から鼻に抜ける甘い声が漏れた。
 普段の声とはまるで違う艶のある声に、ドキッとした。
 唇が離れると、今度は首筋に吸い付き、赤い跡を残した。
 
「はぁ……竹葉、もっと、もっと触って」
「ああ、わかった」

 竹葉は盃のズボンに手を掛け、ベルトを緩めて下着ごと下ろすと、既に大きくなったモノが現れた。
 竹葉は盃の膝裏を抱えて、ローションに濡らした指をゆっくり挿入していく。

「ぁ……あっぅ」
「久々だから、ちゃんと解さないとダメだな」
「あぁ……はぁ、んんっ……」
「こことか好きだろ? 気持ちいい?」
「ふっ、うん、そこぉ……きもちぃ」

 徐々に指を増やし、動きが大きくなっていく。
 その度に、盃は身体をビクつかせ、声もどんどん甘く蕩けていった。

「竹葉……」
「ダメだ。もう少し慣らしてからじゃないと」
「大丈夫だから……お願い、早く、欲しい」

 自分で足を広げながら、腰を卑猥に揺らして竹葉を誘惑する盃。
 私は竹葉の方が性欲が強いと思ってたけど、盃も竹葉に負けず劣らず性欲に素直で強いらしい。淫乱と言ってもいい。
 よく三ヶ月も持ったな。

「ッ……煽るなって」

 そして思ったより竹葉の方が理性的だった。
 誘惑に揺らぎながらも、相手の為に前戯を続ける竹葉は偉い。
 盃は焦ったそうに眉を顰めているが、竹葉に中を撫でられ、嬉しそうに口角を上げている。
 リングに立ち、敵も観客も圧倒的強さで掌握した男が、たった一人の男に組み敷かれて身も心も乱されている。

『チュプ……』
「ぅあ……はぁ……」

 竹葉は盃の中で動かしていた手を止める。
 指が抜かれた穴はヒクつき、物足りなさそうにしている。
 そこに熱く反り勃ったモノが宛がわれ、腰を押し進めると、盃の後孔はゆっくりと竹葉の欲を受け入れていく。

「はっ! んん!」
「ぅ……はぁ……盃、全部入った」

 根元まで埋め込むと、盃が幸せそうな笑顔を見せる。

「き、もちい……ふふ、ココも、胸も、いっぱい」
「俺もいっぱいいっぱいだ……動いていいか?」
「うん……好きにして」

 二人の行為はどんどん激しさを増していく。

「ぅ、うあ! ぁ、あ、あっ、ふぁあ!」
「ん、う……やっば、盃、えっろい」
「竹葉、竹葉ぁ……きもち、ああッ!」

 竹葉の腰の動きに合わせて、盃も自ら動かし始める。
 お互い余裕が無いのか、貪るように快楽を求める交わり。
 しかし、しっかりそこには愛がある。

「あっ、竹葉に、抱かれるとっ……いつも、凄く幸せで……っん、はぁ……満たされて、心が温かくて、ずっと、こうしていたいっ……」
「はぁ、はっ、くそ、お前……煽り過ぎだっての! 俺だって、幸せ過ぎて頭変になりそうだ……」
「く、はは! 既に変でしょ?」
「確かに!!」
「声でけぇ~」

 SEXの最中だというのに、笑いが起きるなんて信じられない。
 盃が楽しそうに笑うものだから、竹葉もつられて笑っている。

「あ、ああ! 好き……好き、竹葉」
「俺も好きだ……盃」
「竹葉、あっ、んんん!」

 二人は互いに名前を呼び合いながら、絶頂を迎える為に激しく動いた。

「はぁ、はぁ……んっ、ぁ」
「盃、盃……俺、もう」
「あぅ、イ、く……イく、イくッ! イくっ、ああぁあ!!」

 シーツを握り締め、胸を反らし絶頂を迎えた盃の腹筋に白濁が散る。

「はぁ……はぁ……」

 盃の呼吸が落ち着くのを待ってから、竹葉は再び動き出す。

「悪い、もう少しだけ……付き合ってくれ」
「う、うん、はぅ、んっ……んっ、んん! ひっ、ああ!」
「ぐッ……」

 盃は、まだ敏感になっている中を再び擦られて悲鳴のような声をあげた。
 竹葉は額に汗を浮かべながら、欲望のままに奥へと突いていく。
 激しい律動を繰り返しながら、竹葉は盃の肩に噛みついた。

「いっ!」
「はぁ、あ、くっ……!」

 竹葉がゴムの中に吐精すると、そのまま盃に覆い被さった。
 汗や涙で張り付いた盃の前髪を払い、額にキスをする。
 
「盃、大丈夫か?」
「ヤバい……」
「え!?」

 神妙な顔をした盃に見つめられ、竹葉は狼狽える。

「今夜、寝かせてあげられない。ごめん竹葉」
「ふは! 臨むところだ。俺の愛を夜通し注いでやる」
「情熱的な下ネタだね」
「好きだろ?」
「大好き」

 SEX後の気怠さなんて感じさせない二人の間に流れる甘い空気。
 私の経験したSEXは、あまり良い記憶は無い。酷い扱いで、道具のようにヤられただけ。
 だからだろうか。
 二人の愛しみ合うSEXが酷く羨ましいと思った。
 乾いた身体を肉欲で潤すだけでなく、心の渇きさえも満たし合う。
 見つめ合っただけで笑ってしまうほどに、互いを愛し合っている。

 ああ、私も……もう一度……恋をしてみたい。
 もう一度、誰かと一緒に笑いたい。
 もう一度、共に歩む幸せを感じたい。
 もう一度……生きたい。


『パァン』

「ん? 今なんか光った?」
「光ったね」
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