裏購買部少年ナナ

夏目薙朔

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最悪の失態

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 ――なーんて出来事があったのが、今から二週間前。

「最っっっ悪だ……!」

 私、春咲茜音。
 新学期が始まってから、特に大きな問題もなく、平和な日々を過ごしていたはずなのに……。

「よりによって、今日……っ!」

 ――一番忘れたくない物を忘れちゃうなんてっ……!

「私のバカ、アホ、マヌケ~っっっ!」

 誰もいない渡り廊下に、私のむなしい悲鳴が響き渡る。

 日直の仕事で職員室に行った帰り道で、私はとんでもないやらかし――忘れ物に気づいてしまったのだ。

 ――忘れちゃったのは、五時間目の書道で使う習字用の筆。
 先週書道バッグごと持って帰って、筆を洗って乾かしたまま置きっぱなしにしてたの、完全に忘れてた……!

 習字はみんなで一斉に書き始めるから、筆なんて簡単に借りられるものじゃない。
 冬馬にだって、絶対貸さない宣言をされちゃってるわけだし……。

 隣のクラスは昨日書道だったから、手元にない子たちがほとんどのはず。

「……どうしよう」

 私が、ここまで悩む理由。それは――。

 ――今日は午後から出張でいない私たちの担任・小林先生の代わりに、なんと五時間目以降は隣のクラスのエンマこと鬼塚先生が、授業をすることになってしまったのだ。

「ただでさえ怖いのに、筆忘れたなんて言ったら、鬼説教コース確定だよ……」

 もちろんお説教だって嫌だけど、誰かが怒られた後は、クラス中がシーンってなって気まずくなるし、絶対しんどい。

 だから、何としてでも回避したい。筆がほしい!

「……裏購買部、か」

 ――前に千郷から聞いた、初等部生でも行ける裏購買部のことを思い出す。

 あれから今日まで、すっかり忘れてたんだけど(おい)。

「行き方は知ってるし、今から行けばギリギリ間に合う。でも――」

 昼休み終了まであと十五分。ダッシュで行けば、何とかなるはずだ。
 ……けど!

「――宙星の怪談になってるのに、行っちゃうの? この私が?」

 六年間、ずっとずっと避け続けてきた場所だ。
 自分からわざわざ行こうとするなんて、どうかしてる。

 それに千郷だって、ホントかわからないって言ってたんだ。
 ただのウワサで、そんな場所は無いのかもしれない。

 そもそもあるって信じる方が、むしろおかしい。

 だから――。

「……行ってみよう」

 ――そのわずかな希望に、あるかもしれないっていう可能性に、賭けてみるしかない……よね?

「……大丈夫、大丈夫だよ。そんな場所、ほぼ百パーセント――九十九パーセントの確率で無いんだから。だって、ただのウワサだよ? 宙星の怪談になってることだって、もしかしたら嘘かもしれない。私はそれを、確かめに行くだけだし」

 これでホントに無かったら、私も諦めがつく。
 大人しくエンマ様……鬼塚先生に怒られよう。

 怖い気持ちを押し殺して、私は渡り廊下を飛び出した。
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