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私は聖女として、第三王子の妻になっていた。
今度こそ、本当に白い結婚だった。
娘とメイドが殺された後と違って、第一王子達が殺された一連の事件から、国中が毒に怯えるようになった。
犯人には受難の時だ。
簡単に殺せなくなった。
ある日、13歳になったリュカといつものように食事をしていると、夫の第三王子がくる。
「リュカとの方が夫婦みたいだ」
そう呟いただけだったけど。
リュカは身長が伸びて、見た目は大人っぽくなった。
でも、まだまだ子供なのに変な事を言うと思った。
けれど、その日を境にリュカと食事を食べたり、一日中一緒に過ごす日々は終わりを告げた。
毒は警戒されていたが、じわじわと王宮を侵食していく。
第三王子が死んで、私は第四王子の妻になったけど、その第四王子も……。
娘が死んで8年たった日に、王が死んだ。
側には毒の小瓶が落ちていた。
「母は、あなたに聖女とロッテを許すように助言して殺された。聖女が子供を産めないなど古い掟だと。あなたは、自分に逆らうものを許さなかったんだ——だから、僕も同じ事をしただけです、父上。あなたの血はちゃんと受け継がれる——」
最後に残ったのは第八王子のリュカだった。
リュカと私の結婚式はやはり盛大に行われた。
けど、私は結婚式には慣れてしまった。
でも、久しぶりにあったリュカは嬉しそうだった。
「あなたと結婚する日を、4歳の頃からずっと楽しみにしていました」
私は驚いた。
私がパトリシア様のところでお世話になっていた時からだ。
「ロッテと結婚するって……」
「幼い彼女に合わせていただけで、僕にとって娘のような存在でした」
5歳しか離れていないのに……なんだかおかしくなる。
娘が生きていても、リュカとは結婚しなかったのかもしれない。
生きていたら——無限の可能性があった。
『そんなのは子供の頃の話よ。リュカにはお母様の方がお似合いだと思うわ』
13歳のロッテはそんな風に話したかもしれない。
初夜のベッドの上でリュカに抱きしめられた。
10歳の頃もこうやって一緒に寝ていたけど、抱きしめていたのは私だった。
だけど、4歳の頃から私と結婚するつもりだったと言うリュカは、私に抱きしめられながら、背中に回した手で強く抱きついて来た。
あれは、怖くて甘えていた訳じゃないのかも、私を守ろうとしてくれていたのかもしれない。
今の18歳のリュカに抱きしめられながら、おかしくなって笑ってしまった。
「どうして笑うんですか、フェリシア様」
さっきまでの甘い雰囲気が一気に消えてしまう。
18歳の大人の男になって昔の面影がほとんどないと思っていたリュカが、急に10歳に戻ってしまったように見えた。
抱き合ったりキスしたりする雰囲気じゃなくなってしまった。
「フェリシア様は酷い。ずっと楽しみにしていたのに……」
リュカはそう言って不貞腐れたように俯いてしまう。
ますますそういう雰囲気ではなくなる。
「私だって、楽しみにしていたんですよ。リュカとなら、白い結婚じゃんなくなるかもって……」
言ってしまって恥ずかしくなる。
リュカが驚いて顔を上げた。
「フェリシア様も僕を好きだったの?」
リュカが小さな子のように聞いてくる。
勢いでやってしまえば良かったのに、笑ったりしたばかりに話さなければいけなくなっている……。
「第三王子に『リュカとの方が夫婦みたいだ』と言われて、あなたが私を避けるようになってから、成長していくあなたを見ながら勝手に私の方で意識してしまっていたんです……」
私はリュカの目を見ずにつづけた。
「第三王子が亡くなって、第四王子も亡くなって、あなたが私を奪いに近づいてくるみたいで、と、とても嬉しかった……!」
私は真っ赤になった顔を隠した。
11歳も年下の小さな男の子に何を言っているんだろう。
言ってしまったからには取り返しがつかない。
見えない手が私を抱きしめた。
「フェリシア様……いえ、ナツミ。僕の一方的な気持ちだと思っていたのに、あなたにも伝わっていたんですね。小さな頃からあなたが好きだったけど、本当に意識したのは13歳のあの時です。寂しかったけど、離れて良かった。ナツミに伝わった」
リュカの力強い手で抱きしめられる。
力強く筋肉質な腕の感触がする。
幼い面影のない腕なのに、リュカのものだと思うと背徳感にゾクっとした。
顔を覆っていた両手を外すと、目の前にリュカの顔があった。
腕を広げてリュカを受け入れようとしている自分をどこかで止めたくなる。
そのままリュカの背中に手を回して、リュカが私の顔にキスをした。
後は、ただリュカに身を任せた。
聖女を利用しようとする者達は全員死んだ王国は新しく生まれ変わった。
私とリュカの間に生まれた五人の男の子は国を発展させていく。
中興の祖と呼ばれる私達は幸せに過ごした。
今度こそ、本当に白い結婚だった。
娘とメイドが殺された後と違って、第一王子達が殺された一連の事件から、国中が毒に怯えるようになった。
犯人には受難の時だ。
簡単に殺せなくなった。
ある日、13歳になったリュカといつものように食事をしていると、夫の第三王子がくる。
「リュカとの方が夫婦みたいだ」
そう呟いただけだったけど。
リュカは身長が伸びて、見た目は大人っぽくなった。
でも、まだまだ子供なのに変な事を言うと思った。
けれど、その日を境にリュカと食事を食べたり、一日中一緒に過ごす日々は終わりを告げた。
毒は警戒されていたが、じわじわと王宮を侵食していく。
第三王子が死んで、私は第四王子の妻になったけど、その第四王子も……。
娘が死んで8年たった日に、王が死んだ。
側には毒の小瓶が落ちていた。
「母は、あなたに聖女とロッテを許すように助言して殺された。聖女が子供を産めないなど古い掟だと。あなたは、自分に逆らうものを許さなかったんだ——だから、僕も同じ事をしただけです、父上。あなたの血はちゃんと受け継がれる——」
最後に残ったのは第八王子のリュカだった。
リュカと私の結婚式はやはり盛大に行われた。
けど、私は結婚式には慣れてしまった。
でも、久しぶりにあったリュカは嬉しそうだった。
「あなたと結婚する日を、4歳の頃からずっと楽しみにしていました」
私は驚いた。
私がパトリシア様のところでお世話になっていた時からだ。
「ロッテと結婚するって……」
「幼い彼女に合わせていただけで、僕にとって娘のような存在でした」
5歳しか離れていないのに……なんだかおかしくなる。
娘が生きていても、リュカとは結婚しなかったのかもしれない。
生きていたら——無限の可能性があった。
『そんなのは子供の頃の話よ。リュカにはお母様の方がお似合いだと思うわ』
13歳のロッテはそんな風に話したかもしれない。
初夜のベッドの上でリュカに抱きしめられた。
10歳の頃もこうやって一緒に寝ていたけど、抱きしめていたのは私だった。
だけど、4歳の頃から私と結婚するつもりだったと言うリュカは、私に抱きしめられながら、背中に回した手で強く抱きついて来た。
あれは、怖くて甘えていた訳じゃないのかも、私を守ろうとしてくれていたのかもしれない。
今の18歳のリュカに抱きしめられながら、おかしくなって笑ってしまった。
「どうして笑うんですか、フェリシア様」
さっきまでの甘い雰囲気が一気に消えてしまう。
18歳の大人の男になって昔の面影がほとんどないと思っていたリュカが、急に10歳に戻ってしまったように見えた。
抱き合ったりキスしたりする雰囲気じゃなくなってしまった。
「フェリシア様は酷い。ずっと楽しみにしていたのに……」
リュカはそう言って不貞腐れたように俯いてしまう。
ますますそういう雰囲気ではなくなる。
「私だって、楽しみにしていたんですよ。リュカとなら、白い結婚じゃんなくなるかもって……」
言ってしまって恥ずかしくなる。
リュカが驚いて顔を上げた。
「フェリシア様も僕を好きだったの?」
リュカが小さな子のように聞いてくる。
勢いでやってしまえば良かったのに、笑ったりしたばかりに話さなければいけなくなっている……。
「第三王子に『リュカとの方が夫婦みたいだ』と言われて、あなたが私を避けるようになってから、成長していくあなたを見ながら勝手に私の方で意識してしまっていたんです……」
私はリュカの目を見ずにつづけた。
「第三王子が亡くなって、第四王子も亡くなって、あなたが私を奪いに近づいてくるみたいで、と、とても嬉しかった……!」
私は真っ赤になった顔を隠した。
11歳も年下の小さな男の子に何を言っているんだろう。
言ってしまったからには取り返しがつかない。
見えない手が私を抱きしめた。
「フェリシア様……いえ、ナツミ。僕の一方的な気持ちだと思っていたのに、あなたにも伝わっていたんですね。小さな頃からあなたが好きだったけど、本当に意識したのは13歳のあの時です。寂しかったけど、離れて良かった。ナツミに伝わった」
リュカの力強い手で抱きしめられる。
力強く筋肉質な腕の感触がする。
幼い面影のない腕なのに、リュカのものだと思うと背徳感にゾクっとした。
顔を覆っていた両手を外すと、目の前にリュカの顔があった。
腕を広げてリュカを受け入れようとしている自分をどこかで止めたくなる。
そのままリュカの背中に手を回して、リュカが私の顔にキスをした。
後は、ただリュカに身を任せた。
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