異世界運送会社(仮)

御中ヘル

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第一章 異世界に俺が運ばれたってことかおもろいやんけ

第01便 トラックは乗るもので轢かれるものではありません。

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『あぁ…この仕事が片付いたゆっくり温泉にでもつかりてぇなぁ…。』

自分の目線ちょうどくらいの高さに積まれたダンボールが小さな倉庫にミッシリと並んでいるのを見ながら、現実逃避をするように考えているのは
トラック運転手【坂場 虎雄(30歳・独身)】。中堅どころの運送会社に勤めて早5年。
若手とも中堅とも曖昧なポジションで、上からは仕事を無理に振られ、下が起こしたミスをフォローするために東から西へ駆け回り、今月はすでに35連勤。
労働基準法ってなんだっけな、と思うくらいには酷使されすぎた体と脳みそは、もはや会社に対して戦う気持ちも起きず、ただただ毎日の仕事が早く終わることを考えるばかりの繰り返しであった。

「なんで全部手作業で運ばなくちゃいけねぇんだよ…、腰ももう限界だぞ?
もう令和の時代だってのにこういう所にこそドローンとか
なんかAIとかマーケなんとかオートメーションみたいなのが
使われるべきなんだと思うんだよ…っと!」

鈍い痛みを持った腰を落としながら段ボールに手をかけ、2箱一気に持ち上げる。
手作業で運ぶことのできる重さだとはいえ、毎日酷使された身体には地味にキツい。

『とりあえずこれを荷台に積んでっと…。もう20往復でもすれば昼過ぎには出発できるだろ』
そう思いながら倉庫の扉を出て自分の2tトラックへと足を進めたその時。

パッパッパパッパパパーーーー!!!!

右側から急なクラクションが聞こえてきた。
そちらを振り向くと虹色のデコトラが走ってくるのが見える。

「は!? ここ倉庫の敷地内だぞ!? なんでそんなスピードで走ってくるんだよ!っていうか虹色ってセンスわりぃな!!」

そんな暴言を吐きながら、急いで車道から歩道に戻るが、なぜか虹色のトラックはこっちにむかってハンドルを切り、俺の方にが突っ込んできた!

あと10m

「いやマジバカかよ!運転手コラ!ボケ!カス!どうにかしろ!」

あと5m

「うわ!最低だ!これ俺死ぬパターンのやつだ!」

あと3m

「どうしよう、親たちには親不孝だ!とか言われるんだろうな…」

あと1m

「っていうかこんな仕事漬けの毎日の中で終わるの、ぜってぇ嫌じゃん!」

あと0m

「次生まれ変わったらぜってぇーホワイト企業に就職してやる‼︎‼︎」

そんなことを考えながら、俺の人生は幕を閉じたのであった。なーむー。
マジで親父もお袋も会社から労災ガッポリせしめてくれなかったら絶対恨むからな…。
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