Dragon maze~Wild in Blood 2~

まりの

文字の大きさ
33 / 42
星龍の章 第二部

しおりを挟む

 
 2133 パタゴニア

「何でお前が来てんだよ?」
 もう呆れて何も言えない。オレ一人で行くって言わなかったっけ?
 『強奪』してきた飛行機のパイロットとして『拉致』してきた本部長、アイザック・シモンズ氏はともかくとして、いや、これだってどうかと思うんだけど、一番置いて来たかった奴が飛行機に乗ってるんですけど。 飛び立ってかなり経ってから隠れてるのに気がついたので、今更置きに帰るのも無理だからシートに座らせたけど……。
「だって、一番関係あるのって僕でしょ?」
 フェイ。お前を危険な目に遭わせたくないから、オレは決心したってのに。
「そりゃそうだけど。でもな、危ないんだぞ、死ぬかもしれないんだぞ?」
「いいよ、別に。カイと一緒なら」
 しれっとすごいことを言ってのけたフェイの言葉に、ひゅぅ、とコックピットから口笛が。おいおい、シモンズさんよぅ。ホントは意外と軽いのな、あんたって。
「それに本気出したらカイより強いかもよ、僕」
 ううっ、痛いところを。お嬢さん、男にそれ言っちゃオシマイだってば。
 しかもだ。
「何かさぁ、更にものすごいイヤ~な予感がするんだがな。さっきから備品入れの中から気配を感じるんだけど」
「うん……微妙に音もするよね」
 まさかとは思うけど、備品入れに入れる大きさって言ったら、思い当たるのは一人しかいないんだが。
 フェイがそっと近づいて、天井近くの小さなドアを勢いよく開ける。どさっと何か落ちて来たのをすかさず受けると……。
「ルイ! やっぱお前かっ!」
「えへへ、みつかっちゃったよぅ」
「見つかっちゃったじゃねえよ! チビがついて来てどうすんだよ? 家族旅行じゃねえんだぞ」
 もう! どうするよ、この状況。
 にこにこしているおチビに苦言は呈しておく。
「お兄ちゃんになったんだろ? パパ……じゃなかった、弟放置かよ」
「だいじょぶ。おばさんたち、いるから」
 そういう問題じゃ無いけどな。ルーに会わせるわけにいかないし……第一、あそこにいる者には全員に例の印があるんだぜ? 眼鏡を外したら……考えるだけで怖い。
「これ、あずかってきたよぉ」
 ルイの手には大きめの袋。開けると大量のシールが入っていた。
 あ、これは超音波遮断シール。ってか誰だっ! こいつにご丁寧に預けた奴は。
 コックピットから手招きされて横に行くと、シモンズ氏はオレに小さく囁いた。
「……考えようによってはルイ君はすごい戦力だぞ」
「でも、眼鏡を外したら大量殺戮犯ですよ」
「それだよ。私に考えがある。もし、ドームの者が数で襲い掛かってきたら、私とルイ君に任せろ。大丈夫、死人は出さない。君とフェイで博士のところへ」
「……はあ」
 拉致して来た人に、思い切り仕切られてますが。まあ、もう引き返せないし。
 さすがにバンコクから南極も程近いアルゼンチンの南の端まではそう簡単には辿り着けない。途中、補給も兼ねてオーストラリアを経由し、ペルーのリマにある南米支部に寄った。
「カイ、あんたもやるわねぇ。本部長を拉致とは」
 現南米支部長は前の北米支部長……オレの元パートナーだ。
「勝手について来たんですよ! ってかどうです? 例のドームの方は」
「今のところ動きはそうないわ。話し合いに行った中央政府のお偉いさんがタコ殴りにされて追い返されたくらいかしら。後、人口は着実に増えてるわね。今五千人くらいかな。よくもまああれだけの非合法のA・Hがいたものね」
「……おもいっきり動きあるじゃないですか」
「知ったこっちゃ無いわ。ノーマルのお偉いさんがどうなろうと。管轄外だし」
「……」
 相変わらずはっきりした女だ。南米に来て更に激しくなったんじゃないか? サングラスを外したら結構いい女なんだけど。コウモリさんだからな、仕方ない。
「間違えても支部長はドームに入らないでくださいね。大量殺人犯になりますよ」
「ああ、反響測定(エコーロケーション)の事ね。わかってるわよ。だからここで待機してるんじゃない。あーもう退屈ぅ。あたしも一緒に行きたいわ。カイ、ついでにあたしも拉致してくれない?」
「これ以上、オレの胃に負担をかけないで下さい。穴開きます」
 本当はここでルイを置いて行きたいところだが、シモンズ氏が許してくれそうに無い。この上、コウモリ女までついて来た日にはドームは血の海と化すぞ。
「そうそう、忘れるところだった。フェイ、ちょっと」
「え?」
 支部長に呼ばれてフェイが別室へ行った。拉致してきたパイロットさんは、お疲れかちょっと仮眠中だ。ルイは支部のお姉さん達に囲まれてニコニコしながらお食事タイム。
「かわいいわねぇ」
「やーん、でもショックぅ。ウォレスさんに子供いたなんて。密かに狙ってたのにっ」
「しかもそっくりだし。くやしい~! 見ると思い出すから眼鏡はずしちゃえ」
 ホントにモテ男だったんだな。こんな離れた支部の女の子まで。ちょいジェラシー。そういや北米支部にいた時も、支部長にやたら絡まれてたしな。でも本人にまったく自覚が無かったのが不思議でたまらない。
 とりあえずオレも補給。だ~れも構ってくれないしぃと、ちょっぴり卑屈になりつつオレが一人寂しく用意してもらったツナサンドを頬張っていると、フェイが帰って来た。
「何の用だった?」
「……ここにもカードが届いてた。ササキさんからだって」
 またカード。今度のはデジタルカードじゃなく、紙のようだ。
 またミカさんからか? ってか、何でここに来ることがわかったんだ? 監視のカメラはもう無かったはずだ。それにササキさんって誰だよ。日本でも確か同じ名前だったよな。普通のおじさんだったって。日系人も多いところだけど、地球の裏側だぜ?
「それと、これ」
 フェイがもう一つ見せたもの。
「あ、それは……」
 貝殻を繋げたネックレス。ロンが首に掛けていたやつとよく似てる。
「何か意味あるのかな、このネックレス」
「ものすごく手作り感あるよね。可愛いけど」
 か、可愛いか、これ? まさか仕掛けは無いよな? 爆発するとかカメラや盗聴器ついてるとか。隅々まで調べてみたが別段怪しいところも無さそうなので保留にした。
「カードの中身は?」
 尋ねると、フェイは首を傾げただけだった。
「それが……何も書いてない」
「え?」
 渡されて、オレが開いてみると確かに白紙だった。
「う~ん、何か仕掛けでも?」
 透かして見ても斜めから見ても何もなさそうだ。
「なになに~みせて~」
 ルイがオレの手からカードを取り上げた。
「こら、返せよ。まだ字も読めないくせに」
 お前まだ三歳にもなってないだろうが。大体、眼鏡外してるじゃん、今。
「よめるよぉ~。うんとぉ、わ、あ、ってる……って?」
「はぁ? 白紙……ってか、今、音出した? 字書いてある?」
「うん」
 もしかすると……。
「支部長、あっちの水槽借りますね」
「いいけど」
 水棲A・Hを保護した際に使う水槽が部屋の奥にある。幸い今は空だったのでそこにカードを沈めてみる。
「フェイ、顔つけて反響測定やってみて」
「いいけど……」
 う~ん、変な眺め。水槽に顔だけつけてカード見てるって。この可愛いお尻。後ろから押したくなる衝動に駆られたが、平手が怖いのでぐっと我慢。
 しばらくして顔を上げたフェイが驚いた様に声をあげた。
「文字、書いてあった。『私はアークで待ってる。荒野で王冠を探して』」
「おおっ、すごいな。超音波当てると文字が浮かぶのか」
 例の印と同じ技術を使ってるんだな。なるほど、これなら特定の者にしか読めない。
「……水は平気だからいいけどさ、支部長ならこんな事しなくても読めたんじゃ……」
 顔を拭き拭きフェイのツッコミが入った。ははは~。そうだったな。いいじゃん、濡れた髪も色っぽいぞってことにしといて。
「私ってのはミカさんかな。アークにいるってか。でも王冠探せって……確かに解除コードにも王冠って言葉があったけど。荒野ってどこだろ?」
 オレが言うと、思いがけない言葉がフェイから聞こえた。
「アークか。ここからだと近いけど……先にドームの方に行くよね?」
「え? アークの場所わからないんじゃ……」
「詳しくはね。でもディーンを拾ったのはガラパゴス諸島の北の端のほう。ピンタ島の近くだよ。だからその辺りではあるはずだよ」
「海の下だよぉ」
 ルイの間の抜けた声。
「そういや、お前のおうちって……」
 ああ……ホントにオレ、鈍すぎるわな。ここにまさにそこから来た奴いるじゃん。
 だがルーは危険だからルイを逃がしたはずだ。そこに連れてくわけにはいかない。
「とりあえずドームを目指そう。荒野はたぶんその近くだと思う。勘だけど。どうやってるか知らないがオレ達の行動はお見通しみたいだ」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

サイレント・サブマリン ―虚構の海―

来栖とむ
SF
彼女が追った真実は、国家が仕組んだ最大の嘘だった。 科学技術雑誌の記者・前田香里奈は、謎の科学者失踪事件を追っていた。 電磁推進システムの研究者・水嶋総。彼の技術は、完全無音で航行できる革命的な潜水艦を可能にする。 小与島の秘密施設、広島の地下工事、呉の巨大な格納庫—— 断片的な情報を繋ぎ合わせ、前田は確信する。 「日本政府は、秘密裏に新型潜水艦を開発している」 しかし、その真実を暴こうとする前田に、次々と圧力がかかる。 謎の男・安藤。突然現れた協力者・森川。 彼らは敵か、味方か—— そして8月の夜、前田は目撃する。 海に下ろされる巨大な「何か」を。 記者が追った真実は、国家が仕組んだ壮大な虚構だった。 疑念こそが武器となり、嘘が現実を変える—— これは、情報戦の時代に問う、現代SF政治サスペンス。 【全17話完結】

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

さようなら婚約者

あんど もあ
ファンタジー
アンジュは、五年間虐げられた婚約者から婚約破棄を告げられる。翌日、カバン一つを持って五年住んだ婚約者の家を去るアンジュ。一方、婚約者は…。

大東亜戦争を有利に

ゆみすけ
歴史・時代
 日本は大東亜戦争に負けた、完敗であった。 そこから架空戦記なるものが増殖する。 しかしおもしろくない、つまらない。 であるから自分なりに無双日本軍を架空戦記に参戦させました。 主観満載のラノベ戦記ですから、ご感弁を

大絶滅 2億年後 -原付でエルフの村にやって来た勇者たち-

半道海豚
SF
200万年後の姉妹編です。2億年後への移住は、誰もが思いもよらない結果になってしまいました。推定2億人の移住者は、1年2カ月の間に2億年後へと旅立ちました。移住者2億人は11万6666年という長い期間にばらまかれてしまいます。結果、移住者個々が独自に生き残りを目指さなくてはならなくなります。本稿は、移住最終期に2億年後へと旅だった5人の少年少女の奮闘を描きます。彼らはなんと、2億年後の移動手段に原付を選びます。

アガルタ・クライシス ―接点―

来栖とむ
SF
神話や物語で語られる異世界は、空想上の世界ではなかった。 九州で発見され盗難された古代の石板には、異世界につながる何かが記されていた。 同時に発見された古い指輪に偶然触れた瞬間、平凡な高校生・結衣は不思議な力に目覚める。 不審な動きをする他国の艦船と怪しい組織。そんな中、異世界からの来訪者が現れる。政府の秘密組織も行動を開始する。 古代から権力者たちによって秘密にされてきた異世界との関係。地球とアガルタ、二つの世界を巻き込む陰謀の渦中で、古代の謎が解き明かされていく。

処理中です...