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OP第一話 「異世界は思ったほど甘く無い」
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偉ぶった声が響き渡る……その声の主は貴族の様で非常にお怒りの様だ。
「居たか?まだ見つからないのか!?グズグズするな。おいお前!向こうは虱潰しにしたのか?まだなら早くしろ!全く使えない奴らだ!」
「いいかお前等!此処でアイツを逃したら、このダンジョンの秘宝が手に入らないだろうが!」
貴族の罵声に応える様に、兵士達の報告が返される。
「街の外への門へは部下をやりました!見つけ次第連行してくる手筈です。他のギルドにも人をやっています」
兵士の一人はそう言うと、一歩下がる。
「街からはもう出られません!このダンジョンであの男が手に入れた財宝が手に入るまで、後わずかです。冒険者ギルドの奴らも多数金で雇いました……行きそうな場所を片っ端から調べてるんで大丈夫です!」
そんな間の抜けた会話が、冒険者ギルドの中で大きな声でされている。
貴族の男は、手に持っていた酒の入ったコップを投げつけて兵士に怒鳴る。
「馬鹿かお前は!あのポーションを使われたりしたら元も子もないんだ!だから兵を使ってるんだろうが!それに!他の貴族どもが手に入れる前に、なんとしてでも手に入れるんだよ!」
「あのポーションを俺の名で皇帝陛下へ献上すれば、我が家名も!爵位だってもっと上がるんだ!グズグズするな早く持ってこい!このダンジョンの秘宝!噂の秘薬を!」
冒険者ギルドの中にも拘らず貴族の罵声は終わる事無く続く…。
…………
………
僕は今日、全く知らない国にある一つのダンジョンを踏破した。
そして今は?というと……そのダンジョンのシンボルとも言える財宝を狙う、鬱陶しい貴族から追われていた。
そもそもダンジョンに入った理由は、踏破や財宝が目当て等では無く薬の材料の採取が目的だった。
僕が潜ったダンジョンに自生する草花には特別な作用を持つ物が多く、その草花が世話になっている子供の母親の病を治すのに必要だったからだ。
僕は独り言をこぼす……
「参ったなぁ……薬の素材をとりにダンジョンまで来たのは良いけど、ついでに踏破なんかするもんじゃ無いな!煩くて敵わない……それに20階層で終わりなら入り口に書いておいてくれないと」
此処は、この国で一番有名なダンジョンだったが、採集する階層は浅いからソロでもいけると思ってボス部屋を覗いたのが失敗だった。
「まぁとにかく早く帰って、あの子の母親に早く薬を作って渡してあげないと!でもこの秘薬を手に入れたからこれで良いか」
と独り言を呟きつつ、何故こうなったのか、思い出しながら親子の元へ急ぐ。
手に入れた薬は、調べた限り効き目は確かだった。
そして、世話になっている家族の母親は、ダンジョン探索で怪我して片足を無くしていたのだ……非常にタイミング良くいい物を拾ったのは確かだ
ちなみに、僕は逃げた訳では無い。スラム街に住んでいる家族に、お礼の薬を作る為に戻っただけなのだ。
ダンジョンを出る時に貴族様に呼び止められたが、無視したのが問題かも知れないが……こっちにも急ぐ理由の一つくらいはある。
何がどうしてこうなったのか…ひとまず取り敢えずギルドに帰ったあたりから、自分の行動を振り返ってみる………
◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇
「おーい!ギルマス!収穫だよー。また悪いけど買い取ってくれないかな?」
そう言うと、ギルドマスターは職員との打ち合わせの最中だと言うのに、話そっちのけで向かってくる。
「おー!今日も沢山ありがとうな!お前さんのお陰で、新人冒険者の死者に重傷を負う確率もかなり減った!本当に助かるよ!それはそうと…お前さん…」
ギルマスは、言葉をためて歯切れの悪い聞き方をする……
「まさかとは思うが……ダンジョン踏破したのはお前さんじゃないよな?ダンジョンの衛兵から討伐報告がさっき来たんだ」
どうやら既に連絡が来ている様だ。
ダンジョンに変化があって、ギルドの中でも誰が討伐したのか話題になっている様だった。
ギルマスは現状のダンジョン内部を熟知しているのか、僕に説明をする。
「一番先行してたのはガルムのパーティだったが、戻ってない以上あいつらじゃ無いって話でな……帝国軍も入っていたからそこかも知れんが。まぁ半日程で主が再生するから次はあいつらだろうな」
ギルドマスターは、買取用の装備品やアイテムに目を通しながらも、それと無く僕に確認してきた。
冒険者の管理や依頼の管理をする職務上、最重要事項のダンジョン討伐に関しては、何を差し置いてでも把握しておく必要があるのだ。
僕はギルマスに説明をする事にした……それが冒険者の決まりでもあるからだ。
「そうそう!実はダンジョンアイテムの買取もあるんだけど、今日来た目的はその討伐報告に来たんだよ」
そう言った僕は、スラムの親子に衣食住の面倒みてもらってるお礼を兼ねて、薬の素材集めにダンジョンに行ったが、素材がなかなか見つからなく仕方なく深く潜った事を話す。
「素材を手に入れた場所が偶然に今日は最下層でさ。手に入れたから帰ろうとしたんだけどね……階層主の部屋みたいなのがあったから、入った迄は良かったんだけど!部屋から出られなくなっちゃったから……倒しちゃったんだ」
僕はその時の状況を詳しく説明した……若干申し訳なさそうに言う事を忘れない……
呆れ気味のギルマスに、ダンジョンボスの討伐時のその時の情報を話す……
「ボスが再生するって言ってたけど、此処は他のダンジョンと違うのかな?確かに全身が灰のようになって崩れたかと思ったら、そこに宝箱が落ちてたんだ」
そう言った僕に、呆れ果てたギルマスが…
「お前な~あれだけ俺が新人に注意してるのに、聞いてなかったのか?あのダンジョンの階層ボスの部屋は外から中が伺えるダンジョンで、最下層は20階のダンジョンだと何度も言ってるんだが?」
ギルマスは説教する様に話を続ける……
「全階層共通で、ボス部屋は雑魚共と違って部屋にさえ入らなければ襲ってはこないから、用意もしくは確認は部屋の外で!と何度も言ってるぞ!?」
ギルマスは、僕がソロであんな場所に入るとは思いもしなかったらしく説明はしなかった様だ。
ここは特殊なタイプの灰のダンジョンと呼ばれる場所で、主は今まで『完全』に討伐された事は未だかつて無いらしく、どういう訳か討伐後に全身が灰になる様だ。
しかし、一定時間でそのボスは煙状になり再誕するらしいのだ。
ちなみに、その情報を10年前に部屋で監視したパーティーの一人がギルマスだった様だ。
そう話したギルマスは難しい顔になり、現状のダンジョンの様子を説明する……
「アイツを灰にせずに完全に倒す事ができれば、ダンジョンは無くなると言われているが……倒せないのでゆっくりとだが着実に深化が進んでるという訳だ」
ギルマスが潜ってた時はこのダンジョンの最下層は17階だった……ただ10年で3階層増えた様で深化は他のダンジョンより遥かに遅い。
それは主の討伐が、優秀な冒険者や騎士団によって頻繁にされている証拠だろう。
一通り説明を聞いた後、ギルマスが僕の耳を掴んで言う……
「兎に角!お前は一人で行動するなら、それなりの自覚を持て!」
…と言う感じに踏破報告をしたら、しこたま怒られた…
今いるこの国では、踏破した冒険者はギルドへの報告義務があるが、得たアイテムの申告はその限りでは無い。
ダンジョンで手に入れた物は所有者の物と言うのが冒険者の鉄則だ。
僕は踏破を伝え義務を果たしたが、ついでにダンジョンボスから取得した秘薬の報告したのだが……まる~っと失敗した。
主のドロップ品は、腐敗貴族達が喉から手が出るほど欲しい物だった。
冒険者ギルドには、踏破情報を逃さない為に貴族達の息のかかった者が少なからず居る。
ポーションの存在が貴族に知れ渡ると、すぐさま悪辣貴族は自分の私兵がダンジョンを踏破したと言い張った………そして、彼等に雇われた僕が『秘薬』を持ち逃げしたんだと冒険者ギルドへ偽の通報をしたのだ。
しかし、悪辣貴族達の日頃の行いだろう……ギルド職員はそんな彼等の言い分をまともに取り合わない。
僕はダンジョンで手に入る物のほぼ全てを、この冒険者ギルドで買取してもらっていた。
だからこそ職員とここを利用する冒険者は、僕がそんな事をしない事を知っていた。
そもそもソロで潜っていた事を、度々此処の冒険者に目撃されていたので、『発見!即要注意』の対象だった。
僕がわざわざ買取価格の安い冒険者ギルドに持ってくるのは、この国に来た当時困っていた僕を助けてくれたからだ。
そして、それにもう一つ付け加えるとしたら…
『経験の浅い冒険者はろくな装備もせずにダンジョンに潜る……そして死んでしまう。この負の連鎖をどうにかできないか!』
……と、ほぼ毎日ギルマスが酔っ払う度に大声で叫んでいたからだ。
このギルドに出入りする冒険者が2~3日帰ってこないのはダンジョンに潜る以上当たり前だ。
新人冒険者は決まって無茶をする……
引き際が分からないせいで逃げ損ない大怪我を負う場合が多く、最悪の場合ダンジョンから永久に帰ってこれない。
それをどうにかする為に、日々ギルドマスターは悪戦苦闘していた……だからこそ、僕も出来る限り協力することにした。
具体的にはダンジョンで手に入れた装備の販売と、ダンジョンで発見した怪我人への薬の提供が主だ。
ちなみに、配布している薬の作成者が僕である事は伏せている。
今回ギルマスに見せた財宝は、奇跡のポーションと呼ばれているらしく如何なる状態異常も祓い、身体の深い部分から癒す事で、寿命までも数十年伸ばせる秘薬らしい。
その上、失った欠損部位が有れば再生までする夢の様なポーションだ。
この国に古くから語り継がれていて、このダンジョンでも滅多に見ることの無い秘薬だそうだ。
しかし、ここ暫く秘薬はダンジョンから持ち帰ったとの報告はされていないらしい。
その実物を見たギルマスは…
「とうとう踏破したのか!それもソロでだと?規格外も此処まで来ると笑えないな………」
……と言っていた。
因みにこに秘薬はギルドでは買い取れない様で、買い取り希望の場所は鑑定の上、国庫から金を支給するのがこの秘薬に対しての一連の流れの様だ。
勿論だが、ギルドに在籍する冒険者などには払うだけの金は無い。
唯一の望みは、国が認定するSクラス冒険者が買えるぐらいだが、彼等と連絡を取る手段がない。
どっかの国で依頼を受けているだろうが、大概は依頼が終わり次第すぐに出て次の場所へ行ってしまうから、前もってギルド全体へ連絡しておくしか方法がないが、まともに返事が来る確証はない。
ギルマスの秘薬買取説明は、そんな感じだった……しかしギルマスは別の注意を促す……
「性根の腐った貴族共は、この秘薬が欲しい余り食い詰め者の傭兵共を雇って襲わせるかもしれない。お前は外で十分気をつける様にな!」
真面目な顔でそう言ったが考えた顔をした後、言葉を付け足してギルマスは言い直す。
「まぁソロで20階のダンジョンの主を倒す冒険者を、襲う命知らずの馬鹿は此処のギルドにはいないけどな……しかし貴族のバカ共はお構い無しにやらかす筈だ!」
そのギルマスの言葉に、周りの冒険者達が声を合わせて言う。
「ギルマス!ここに仲間を襲う馬鹿はいない!それに彼には俺たちどれだけ助けてもらったか……」
「そうよ!そのポーションだって、どうせ誰かにあげる予定なんでしょ?既にすっとぼけたそんなツラしてるもの……」
「貴族の馬鹿どもは儂たちに任せとけ!上手く撒いとくからのぉ!」
「お前なら平気だろうが、とりあえず気をつけて渡してこいよ!だがくれぐれも俺を除け者に暴れないでくれよ?ガハハハハハ!!」
そう口々に言われて、僕はギルドから送り出された。
「居たか?まだ見つからないのか!?グズグズするな。おいお前!向こうは虱潰しにしたのか?まだなら早くしろ!全く使えない奴らだ!」
「いいかお前等!此処でアイツを逃したら、このダンジョンの秘宝が手に入らないだろうが!」
貴族の罵声に応える様に、兵士達の報告が返される。
「街の外への門へは部下をやりました!見つけ次第連行してくる手筈です。他のギルドにも人をやっています」
兵士の一人はそう言うと、一歩下がる。
「街からはもう出られません!このダンジョンであの男が手に入れた財宝が手に入るまで、後わずかです。冒険者ギルドの奴らも多数金で雇いました……行きそうな場所を片っ端から調べてるんで大丈夫です!」
そんな間の抜けた会話が、冒険者ギルドの中で大きな声でされている。
貴族の男は、手に持っていた酒の入ったコップを投げつけて兵士に怒鳴る。
「馬鹿かお前は!あのポーションを使われたりしたら元も子もないんだ!だから兵を使ってるんだろうが!それに!他の貴族どもが手に入れる前に、なんとしてでも手に入れるんだよ!」
「あのポーションを俺の名で皇帝陛下へ献上すれば、我が家名も!爵位だってもっと上がるんだ!グズグズするな早く持ってこい!このダンジョンの秘宝!噂の秘薬を!」
冒険者ギルドの中にも拘らず貴族の罵声は終わる事無く続く…。
…………
………
僕は今日、全く知らない国にある一つのダンジョンを踏破した。
そして今は?というと……そのダンジョンのシンボルとも言える財宝を狙う、鬱陶しい貴族から追われていた。
そもそもダンジョンに入った理由は、踏破や財宝が目当て等では無く薬の材料の採取が目的だった。
僕が潜ったダンジョンに自生する草花には特別な作用を持つ物が多く、その草花が世話になっている子供の母親の病を治すのに必要だったからだ。
僕は独り言をこぼす……
「参ったなぁ……薬の素材をとりにダンジョンまで来たのは良いけど、ついでに踏破なんかするもんじゃ無いな!煩くて敵わない……それに20階層で終わりなら入り口に書いておいてくれないと」
此処は、この国で一番有名なダンジョンだったが、採集する階層は浅いからソロでもいけると思ってボス部屋を覗いたのが失敗だった。
「まぁとにかく早く帰って、あの子の母親に早く薬を作って渡してあげないと!でもこの秘薬を手に入れたからこれで良いか」
と独り言を呟きつつ、何故こうなったのか、思い出しながら親子の元へ急ぐ。
手に入れた薬は、調べた限り効き目は確かだった。
そして、世話になっている家族の母親は、ダンジョン探索で怪我して片足を無くしていたのだ……非常にタイミング良くいい物を拾ったのは確かだ
ちなみに、僕は逃げた訳では無い。スラム街に住んでいる家族に、お礼の薬を作る為に戻っただけなのだ。
ダンジョンを出る時に貴族様に呼び止められたが、無視したのが問題かも知れないが……こっちにも急ぐ理由の一つくらいはある。
何がどうしてこうなったのか…ひとまず取り敢えずギルドに帰ったあたりから、自分の行動を振り返ってみる………
◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇
「おーい!ギルマス!収穫だよー。また悪いけど買い取ってくれないかな?」
そう言うと、ギルドマスターは職員との打ち合わせの最中だと言うのに、話そっちのけで向かってくる。
「おー!今日も沢山ありがとうな!お前さんのお陰で、新人冒険者の死者に重傷を負う確率もかなり減った!本当に助かるよ!それはそうと…お前さん…」
ギルマスは、言葉をためて歯切れの悪い聞き方をする……
「まさかとは思うが……ダンジョン踏破したのはお前さんじゃないよな?ダンジョンの衛兵から討伐報告がさっき来たんだ」
どうやら既に連絡が来ている様だ。
ダンジョンに変化があって、ギルドの中でも誰が討伐したのか話題になっている様だった。
ギルマスは現状のダンジョン内部を熟知しているのか、僕に説明をする。
「一番先行してたのはガルムのパーティだったが、戻ってない以上あいつらじゃ無いって話でな……帝国軍も入っていたからそこかも知れんが。まぁ半日程で主が再生するから次はあいつらだろうな」
ギルドマスターは、買取用の装備品やアイテムに目を通しながらも、それと無く僕に確認してきた。
冒険者の管理や依頼の管理をする職務上、最重要事項のダンジョン討伐に関しては、何を差し置いてでも把握しておく必要があるのだ。
僕はギルマスに説明をする事にした……それが冒険者の決まりでもあるからだ。
「そうそう!実はダンジョンアイテムの買取もあるんだけど、今日来た目的はその討伐報告に来たんだよ」
そう言った僕は、スラムの親子に衣食住の面倒みてもらってるお礼を兼ねて、薬の素材集めにダンジョンに行ったが、素材がなかなか見つからなく仕方なく深く潜った事を話す。
「素材を手に入れた場所が偶然に今日は最下層でさ。手に入れたから帰ろうとしたんだけどね……階層主の部屋みたいなのがあったから、入った迄は良かったんだけど!部屋から出られなくなっちゃったから……倒しちゃったんだ」
僕はその時の状況を詳しく説明した……若干申し訳なさそうに言う事を忘れない……
呆れ気味のギルマスに、ダンジョンボスの討伐時のその時の情報を話す……
「ボスが再生するって言ってたけど、此処は他のダンジョンと違うのかな?確かに全身が灰のようになって崩れたかと思ったら、そこに宝箱が落ちてたんだ」
そう言った僕に、呆れ果てたギルマスが…
「お前な~あれだけ俺が新人に注意してるのに、聞いてなかったのか?あのダンジョンの階層ボスの部屋は外から中が伺えるダンジョンで、最下層は20階のダンジョンだと何度も言ってるんだが?」
ギルマスは説教する様に話を続ける……
「全階層共通で、ボス部屋は雑魚共と違って部屋にさえ入らなければ襲ってはこないから、用意もしくは確認は部屋の外で!と何度も言ってるぞ!?」
ギルマスは、僕がソロであんな場所に入るとは思いもしなかったらしく説明はしなかった様だ。
ここは特殊なタイプの灰のダンジョンと呼ばれる場所で、主は今まで『完全』に討伐された事は未だかつて無いらしく、どういう訳か討伐後に全身が灰になる様だ。
しかし、一定時間でそのボスは煙状になり再誕するらしいのだ。
ちなみに、その情報を10年前に部屋で監視したパーティーの一人がギルマスだった様だ。
そう話したギルマスは難しい顔になり、現状のダンジョンの様子を説明する……
「アイツを灰にせずに完全に倒す事ができれば、ダンジョンは無くなると言われているが……倒せないのでゆっくりとだが着実に深化が進んでるという訳だ」
ギルマスが潜ってた時はこのダンジョンの最下層は17階だった……ただ10年で3階層増えた様で深化は他のダンジョンより遥かに遅い。
それは主の討伐が、優秀な冒険者や騎士団によって頻繁にされている証拠だろう。
一通り説明を聞いた後、ギルマスが僕の耳を掴んで言う……
「兎に角!お前は一人で行動するなら、それなりの自覚を持て!」
…と言う感じに踏破報告をしたら、しこたま怒られた…
今いるこの国では、踏破した冒険者はギルドへの報告義務があるが、得たアイテムの申告はその限りでは無い。
ダンジョンで手に入れた物は所有者の物と言うのが冒険者の鉄則だ。
僕は踏破を伝え義務を果たしたが、ついでにダンジョンボスから取得した秘薬の報告したのだが……まる~っと失敗した。
主のドロップ品は、腐敗貴族達が喉から手が出るほど欲しい物だった。
冒険者ギルドには、踏破情報を逃さない為に貴族達の息のかかった者が少なからず居る。
ポーションの存在が貴族に知れ渡ると、すぐさま悪辣貴族は自分の私兵がダンジョンを踏破したと言い張った………そして、彼等に雇われた僕が『秘薬』を持ち逃げしたんだと冒険者ギルドへ偽の通報をしたのだ。
しかし、悪辣貴族達の日頃の行いだろう……ギルド職員はそんな彼等の言い分をまともに取り合わない。
僕はダンジョンで手に入る物のほぼ全てを、この冒険者ギルドで買取してもらっていた。
だからこそ職員とここを利用する冒険者は、僕がそんな事をしない事を知っていた。
そもそもソロで潜っていた事を、度々此処の冒険者に目撃されていたので、『発見!即要注意』の対象だった。
僕がわざわざ買取価格の安い冒険者ギルドに持ってくるのは、この国に来た当時困っていた僕を助けてくれたからだ。
そして、それにもう一つ付け加えるとしたら…
『経験の浅い冒険者はろくな装備もせずにダンジョンに潜る……そして死んでしまう。この負の連鎖をどうにかできないか!』
……と、ほぼ毎日ギルマスが酔っ払う度に大声で叫んでいたからだ。
このギルドに出入りする冒険者が2~3日帰ってこないのはダンジョンに潜る以上当たり前だ。
新人冒険者は決まって無茶をする……
引き際が分からないせいで逃げ損ない大怪我を負う場合が多く、最悪の場合ダンジョンから永久に帰ってこれない。
それをどうにかする為に、日々ギルドマスターは悪戦苦闘していた……だからこそ、僕も出来る限り協力することにした。
具体的にはダンジョンで手に入れた装備の販売と、ダンジョンで発見した怪我人への薬の提供が主だ。
ちなみに、配布している薬の作成者が僕である事は伏せている。
今回ギルマスに見せた財宝は、奇跡のポーションと呼ばれているらしく如何なる状態異常も祓い、身体の深い部分から癒す事で、寿命までも数十年伸ばせる秘薬らしい。
その上、失った欠損部位が有れば再生までする夢の様なポーションだ。
この国に古くから語り継がれていて、このダンジョンでも滅多に見ることの無い秘薬だそうだ。
しかし、ここ暫く秘薬はダンジョンから持ち帰ったとの報告はされていないらしい。
その実物を見たギルマスは…
「とうとう踏破したのか!それもソロでだと?規格外も此処まで来ると笑えないな………」
……と言っていた。
因みにこに秘薬はギルドでは買い取れない様で、買い取り希望の場所は鑑定の上、国庫から金を支給するのがこの秘薬に対しての一連の流れの様だ。
勿論だが、ギルドに在籍する冒険者などには払うだけの金は無い。
唯一の望みは、国が認定するSクラス冒険者が買えるぐらいだが、彼等と連絡を取る手段がない。
どっかの国で依頼を受けているだろうが、大概は依頼が終わり次第すぐに出て次の場所へ行ってしまうから、前もってギルド全体へ連絡しておくしか方法がないが、まともに返事が来る確証はない。
ギルマスの秘薬買取説明は、そんな感じだった……しかしギルマスは別の注意を促す……
「性根の腐った貴族共は、この秘薬が欲しい余り食い詰め者の傭兵共を雇って襲わせるかもしれない。お前は外で十分気をつける様にな!」
真面目な顔でそう言ったが考えた顔をした後、言葉を付け足してギルマスは言い直す。
「まぁソロで20階のダンジョンの主を倒す冒険者を、襲う命知らずの馬鹿は此処のギルドにはいないけどな……しかし貴族のバカ共はお構い無しにやらかす筈だ!」
そのギルマスの言葉に、周りの冒険者達が声を合わせて言う。
「ギルマス!ここに仲間を襲う馬鹿はいない!それに彼には俺たちどれだけ助けてもらったか……」
「そうよ!そのポーションだって、どうせ誰かにあげる予定なんでしょ?既にすっとぼけたそんなツラしてるもの……」
「貴族の馬鹿どもは儂たちに任せとけ!上手く撒いとくからのぉ!」
「お前なら平気だろうが、とりあえず気をつけて渡してこいよ!だがくれぐれも俺を除け者に暴れないでくれよ?ガハハハハハ!!」
そう口々に言われて、僕はギルドから送り出された。
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