手違いで異世界に強制召喚されました!

ZOMBIE DEATH

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OP第三話 「二大精霊の制圧力と悪辣貴族」

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 どうやら彼らを助けた後、一度帰還の魔法陣で街まで戻って来たようだ。

 暫く待てばダンジョンの主が復帰するだろうが、その時の彼等には一度街まで帰ったほうが賢明だと言う結果に至った様だがそれは得策だろう。

 疲れているだろう彼等は、宿で休みもせずに僕の為に此処に来てくれていた。

 とても疲れているだろうに感謝しかない。

 そんな彼等が、コセ家の倅の様を見て呆れたようにパーティーメンバーが口々に話し始めた。


「ああ、見たぜ!そいつの戦いっぷりは異常だ!鼻唄まじりに魔物がミンチになるんだ。魔物以上のバケモンだ」


「アンタ達マジで止めときな!地下20層の魔物ってのはアタイ等が6人がかりで、やっと1匹相手に出来るんだ。ソイツはそこに鼻歌歌ってソロでいるんだよ?」


「ワシらが6人がかりで戦って、一つでも連携を間違えれば大怪我を負う階層なんじゃぞ?そんな魔物を一人で散歩する様に蹴散らすんじゃ……彼奴に喧嘩売るなら街の外でしとくれ!!帰る街が無くなるのは困るからな」


「ダンジョンならば幾ら破壊されようが翌日には元に戻ります。ですがね!街はそうは行きませんよ?その方が本気を出せば、この周辺など消し飛ぶでしょう。貴方達に本気を出す必要なんて無いでしょうが………」


「いやいや!アホ言うな!!20階層の魔物をソロで蹴散らす奴が街で暴れてみやがれ!街なんかもつはずもない!鼻唄歌いながら腕を振るうとミノタウロスがこんがり焼かれて輪切りになるんだ!此処は城どころか、草一本も残らぬ焼け野原しか残らんぞ!」


「あっしだったら、絶対に手は出しませんね。貴族の旦那……あ!いや!!この人にやられるなら宝箱の爆弾トラップの方が、手足が無くなるぐらいで、まだ命が無事でさぁ!」


 僕はダンジョンで彼らを助けた筈だが?

 酷い言われようだ!!助けたのは間違いだったのだろうか!?

 そんな思いを無視して、ギルマスが話をする。

「財宝欲しさに、彼らのパーティに声を掛けていた貴方だったら今の意味がわかるはずです。それに、貴方様にどのような権利があり、彼の得た物を接収としようとしているのですか?」

 言い聞かせるようにギルマスは話すが、聞き入れそうに無い貴族を前に今度は呆れ果てて極め付けを言う。

 話す理由は勿論、彼に『奪取』を諦めさせる為だろう……しかしその秘薬はもうないのだけども?

「そもそも、ダンジョンの主を単独討伐できる者を相手に対して、20層にさえ行けない冒険者や私兵など何ができましょう?」

 ギルマスが貴族の間違いを正すように捲し立てると、周りの街の住人も気になり集まり始める。

 それを見た貴族の倅は、焦った声で檄を飛ばす。

「う…うるさい!お前ら何をしている!早くそいつから秘薬を奪いとれ!言う事を聴かない冒険者共など!少し位痛い目を見せても構わん!」


 どうして悪役はこうなのだろうか?……と思ってしまう程、貴族の倅が聴き慣れた台詞を吐く。

 すると落ちぶれた冒険者たちと、貴族の私兵が一斉に武器を抜く。

 向こうがやる気のようだから、貴族相手だが軽く捻るぐらいなら許されるのだろうか?……っとギルマスに聞く暇もなく、貴族の私兵と金で雇われた暴漢達は一斉に襲いかかって来た。

 僕は、右手で腰に下げた水袋の口を開けてから、近くの壁に掛けられている松明に左手を翳す。


「おいで、お前たち」

 そういうと、水袋から飛沫が上がると空中に止まり人型をなす。

 次に、近くの松明は煌々と燃え上がり弾けたかと思うと、舞い上がった炎が蜥蜴のような形になり、くるんと一回転して見事に着地する。

 突然現れた、水の精霊と炎の精霊に周りは怯み騒然とするが炎の蜥蜴は、ぐぱっと口を開くと周辺の暴漢どもを炎の渦を吐き包む。

 暴漢どもを制止しようと飛び出ようとする周囲の冒険者は、ぎょっとして一斉に立ち止まる。

 周囲に熱波を及ぼす蜥蜴のその様を見て、今は全員が青ざめている。


 包まれた暴漢達は堪らず地面に転がる………だが、次の瞬間大量の水が彼らの周囲に湧き出し檻の形を作ると、今度は転げ回る彼等にぶつけて、その水の中に閉じ込める。

 突然炎に包まれた次は、酸素のない水の中だ。

 火傷に酸欠……アレはもの凄く苦しそうだ。

 それを見た他の悪漢や私兵達は巻き込まれるのを恐れて、武器を投げ捨て戦う意志が無いことを見せる。

 ギルドマスターを含め僕を庇おうとしてくれた人は全て、目を見開き口を開けたまま微動だに出来ない。

 唯一頭に手を当てて話そうとしていたのが、20層で僕とすれ違ったガルムだけだった。

 頭に手を当てて……偏頭痛だろうか?


「だから言っただろう?馬鹿共が!!見た事も無い戦い方をするんだソイツは。おい!お前も、そろそろ止めておけ。それ以上やったらアイツら全員死んじまう……」


 そんな風に言った後、ガルムが次の言葉を言いかけた時だった。


「青年よ!怒りが収まらぬのは分かるが、剣を納めてくれぬか?我が国の貴族が本当に失礼な事をした。帝国の剣の家名を持って必ずその者に裁きを加える故、今は怒りを鎮めて貰えぬか?」


 一際豪勢な鎧を来た、有力な貴族と思われる大柄な男が僕に話しかけて来た。

 怒ってる訳では無いが、力の差を見せつければこれから先面倒な事には巻き込まれない!と思ったのだが?

 貴族の倅以上の、厄介者の目に留まった気がする……

 僕は水の精霊と火の精霊を手元に呼び寄せると、精霊達はみるみるうちに掌程のサイズに大きさを変えて肩にちょこんと乗る。

「その……なんだ?その肩にいるのは……魔物なのか?君は魔物を使役できるのか?稀に冒険者の中にいると聞いた事があるが、その様な凶悪な力がある魔物を使役した冒険者の事など!!今まで聞いた事は無いのだが?」

 どうやらこの街の人も、前に居た街と同じように精霊の存在を目で見た事がないらしい。

「この子達は、水の精霊と炎の精霊ですよ。前の街でも見た事がないって言われましたが、この街も同じなんですね?」

 そう言った矢先、男の後ろに居た老婆が目をむき出しながら叫ぶように飛び出してきた。

「まさかとは思ったのじゃが!やはり精霊様の使い手か!あの冒険者の他にもおられたのか!なんと馬鹿げた方を相手にしたんじゃ!あのコセ家のバカ倅は…」

 老婆は貴族の大馬鹿倅に向き直り、説教を始める。

「ダンジョンの下層にさえ潜れない能無し貴族の抱える私兵如きが、精霊が扱う魔法の相手など出来ようもない!!馬鹿なのかお主は!!帝国領を火の海にするつもりか!この大馬鹿者の大痴れ者が!ふがふが……」

 老婆は興奮しすぎて入れ歯が外れたようだ。

「おばば様、それ程までに精霊様の魔法と言うのは脅威なものなのですか?」

 騎士の質問にお婆婆と呼ばれた人は、精霊を慈しむように見ながら答える


「精霊様の力を満足に扱えた者は、今まで知る限り今は亡きS級冒険者に一人だけじゃ!帝国の魔道士さえ使えぬよ!その後に現れた冒険者であっても、炎と水の精霊様を同時になど……亡くなった冒険者様でもあり得んかったわ!!」


 じっと水精霊を見るお婆婆に、水精霊は僕の後頭部に隠れ始める……見てるだけで食べられないから大丈夫だと説明するが後頭部に隠れて出てこない。

 しかしお婆婆は話を続ける。

「長い詠唱を元に触媒で呼び寄せると言っておった!それを『おいで』の一言で片手間に呼び出すのだあの者は!」

 見た事も無い力に騎士の男は、お婆婆様と呼ばれる人に食い気味にあれこれ質問して居るが、その男よりお婆婆は凄く興奮気味に話していた。


「お婆婆様、驚かれるお気持ちは分かりますが、今は急を要します。陛下の為に秘薬の件を聴かねばなりません!!」

 精霊魔法について話し込む二人に、割って入るように秘薬の話をしたのは2人に比べてはるかに若い。

 歳は20歳もいかないと思える位で、だいぶ若い女性で僕と年齢はそう変わらなそうだ。

「時に聴きますが……貴方様はダンジョンで得られた噂の秘薬を、皇帝陛下の為に献上される気は御座いますか?私共も、冒険者の権利を承知しておりますが……」


 そう言ったからには皇宮に関する人なのだろうと思って居ると、直ぐに説明をし始める。


「私の父は先の大遠征の際に屍のダンジョン遠征で呪詛をその身に受けてしまい、生きたまま屍人になって行くしか無いのです……秘薬を献上して戴けるなら、我がランスロット家の名を持って必ず報いますので!!何卒薬を譲っては頂けませんか?」

 皇宮関係者と思ったらどうやら、モノホンの皇女様だったようだ。


「殿下!!街の者が居る中でその様な大切な事を!」


 そして騎士から注意が飛ぶのは当然で、すぐ様発言をやめるように言われる。


「良いのです!今は何としてでも薬を手に入れねば。今の陛下の状況からすれば、私達はなりふりなど構っている場合では無いのです。」


 どうやら国王の為に王女様自らがこの場まで足を運んできたらしい。

 話の感じからして、国王は相当重症らしい。


 しかし、本当に運が悪かった……秘薬は既に世話になった親子にあげてしまい無いのだ。

 現在手元にあるのは、母親の為にこさえた『万能薬』だった。


 これならば欠損部は補えないが大概の状態異常は祓えるので、ダンジョンで素材を集めていたのだが……今日は運良く秘薬が手に入った。

 秘薬であれば、母親の欠損部位も補えるので折角なのでそっちを飲ませた訳だ。

 万能薬も無理をしがちな母親の為に今後もやらかすと思い渡そうとしたら…断られて頑として受け取ってくれなかった。

 だからこの万能薬は行き場がなくなった可哀想な薬だった。
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