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第2話「魔女×(vs)無能=魔法陣」

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 そう言い放った女性が手を翳すと、足元が瞬く

 光が瞬きながら大きな魔法陣が形成されていく、その様を見た僕らは口を開けたまま誰も言葉を発することができない。

 僕も質問は沢山あるが、この状況で言葉が浮かばない。


「まったく……よく見たらこっちのもんじゃ無いじゃ無いか。あのバカ共!!今度は何やらかしたんだぃ」

 真紅の魔女は、僕たちを一瞥してぼそっと話す。

「毎度毎度、面倒押し付けやがって。まぁ良い……私の知ったことでは無いさ。ああ!!鬱陶しぃ……来れ!現世の門。誘いの扉よ母なる大地に新たなる恵みを!」

 そう言うと、足元の完成した魔法陣が淡い紫色に光りだす……

「さぁ誰から飛ぶんだい?希望者が無いならこっちが選んで適当に送るよ?」

 そう言うと、女性は僕たちを値踏みする様に見て回る。

 すると、その言葉に合わせる様にサラリーマンが女性に怒鳴り散らす。

「この女は一体何を言ってるんだ!まずここが何処かまず説明しろ!これはテレビだな!あれだ!ドッキリだな…フリップ持って隠れてるんだろう⁉︎ドッキリ大成功!とか言われても俺は笑えないぞ!」

 碌な大人でない彼は、取り乱してさらに叫ぶ……

「明日は上客の接待でコッチは忙しいんだ!もうお開きだ!下らない事に巻き込むな!バカ共が!」

 それを聞いた女性が、呆れた様に

「バカはお前だよ……もう少し異世界の奴は頭が良いと思ったが、意外とどこも変わらないモンだね……」

 そう言って真紅の魔女は何処から出したのか長い杖で、サラリーマンを指して冷たく言い放つ。

「あんたの居た世界ではどうだったか知らんが、言葉遣い一つで自分の人生は左右されるもんだ。相手を見かけで判断して、後悔する羽目になんない様にせいぜいこれから気をつけな」

 どうやら忠告だった様だ……しかし世界がどうとか言っていた気がする……

 そう考えていると、さらに話し出す真紅の魔女。

「一応説明しておいておくがね、此処は狭間さ。私にゃどう言う要件かわからんが、お前さん方は『呼ばれた』んだ、バカの相手は面倒なんだ!さっさと飛んで目の前から消えとくれ!」

 そう言うと、女性は再度手を翳し何かをしようとしたので、咄嗟に僕は……

「今『飛ぶとか異世界』と言いましたが、せめて誰が呼んだか教えて貰えませんか!これから何処かに向かわされるなら、生き抜く方法を教えて貰えませんか!」

 と僕が質問すると次に優男が、

「あと『呼ばれた』と言いましたが、わかる範囲で俺達が此処にいる理由を教えてください!」

 僕の質問にかぶせる様に優男が質問すると……目を細める様に女性が、

「あんたの質問の『生き抜く方法』は現地の奴にでも聞くんだね。此処でいくら生き抜く説明しても、そっちのえらく忙しそうなバカは聴く気がないだろうから無意味だろうさ。私の時間が勿体無いんだよ!」

 そう言って杖で床をこづいて何かを考え始める……

「しかし……あんたは見込みがありそうだ。そうだね……本来ここから送られる際は『型がリセット』されるんだが、異世界の弊害でお前達はそうはいかない様だ。」

 そう説明を始めた真紅の魔女……

 どうやら本来リセットできるはずの何かを僕等は『固定』されて受けられないらしいが、それも異世界絡みらしい。

 そして情報が欲しければ、僕達自身で『送り込んだ張本人に』聴きくしかない様だ。

 多分だが、呼んだからには向こうからアクセスしてくる可能性があるらしい。

 そう説明をくれた真紅の魔女は締め括りに、

「此処のことについて教えられる事は何も無いが、言える事はひとつだけだね。此処を含めて今から向かう場所はあんたが知ってる世界じゃ無いよ」

 真紅の魔女はそう言った後、何やら本格的な準備をする……僕は、このままでは何もわからないままじゃないか!と思い、

「どうして僕たちだったのでしょうか?僕達はなにか共通点があるんですか?何かわかりませんか?」と聴くと、

 どうやってコッチに来たのかは魔女でさえわからない様で、彼女は力強く『帰り方も、還し方も私は知らないよ』と言ってくる。

 突然変な紋様のドアが壁に出来る……すると彼女はこれからする事を説明をし始める。

「本来の私の仕事は、此処に来たやつを扉に誘って送り返すだけ……としか言えないね。」

 そう言う女性に、サラリーマンが愚かにも揚げ足を取る。

「送り返すのが仕事なら、さっさと元の世界に送り返せ!それが仕事だと今言っただろう!」

 女性は鬱陶しくも感じながら『パチン』と指を鳴らすと、サラリーマンが苦しみ悶え始めた。

 どうやら身体中を何かで締め付けられている様で、のたうち回りながらさらに怒鳴っている。

「痛い!痛い!なんなんだ!クソアマが。お前の仕業か!?俺を誰だと思っていやがる!」

 この既に異常な世界で、このサラリーマンの役職やら何かが役に立つと、本気で思っているのだろう?

「どうしたんだい?あんたの減らず口で辞めさせたらどうだい?さっきも言ったが力も無い奴が、デカい口を叩くもんじゃ無いよ!」

 そう言って彼女は更に強い力を行使した様で、失礼な言葉を使うサラリーマンに躾を行う。

「女だと思って失礼な言葉で返したり、相手を見かけで判断すると痛いだけじゃ済まないって事は身体で覚えな!特に平和な世界で育ったお前さん達には、危険の意味さえ分からない今のうちにね!」

 そう言うと女性の人差し指の指先にテニスボールほどの赤々と燃える玉が浮かぶ。

 周辺の温度が急に上がっていく……まるで溶鉱炉の間近にいる様だ。

 その光景に、誰もが恐ろしくて言葉にならない。

 しかしその火球を魔女は突然消す。

「まぁ、脅かすのはコレぐらいにしておくかね……面倒ごとはゴメンなんだ。さっさと順番を決めとくれ!さっきも言ったが暇じゃ無いんだよ。あんた達イレギュラー以外にも今日のノルマが残ってるんだ!」

 そう怒鳴ると、杖でサラリーマンを軽く小突く。

「送られたい順を言わないなら適当に送るからね!」

 真紅の魔女の興味を完全に失った様だ、既に興味もなくなった僕達に『さっさとい行け!』と言う身振りで急かす。

 サラリーマンのせいで、せっかく異世界の情報を前もって聴ける機会が不意に成った。

 しかし、このサラリーマンと異世界まで一緒にいない方が良い事だけは理解出来た。

 最悪一人だったとしても、向こうで面倒ごとを押し付けられたり理不尽な事を言う相手がいなくなると思えばやり易いだろう。

 取り敢えず、サラリーマンとは異世界で一緒に居たくなかった僕は、彼とは別に渡る為に手をあげる。

 ……とほぼ同時に、優男と看護師の女性が同じ様に手をあげた。

 その事にお互いがびっくりして顔を見合わせる。

 優男と顔を見合わせていると、看護師の女性は僕たちに意に介さずに女の子に耳打ちすると女の子も一緒に手をあげた。

 僕らが手を上げると、すぐにサラリーマンが嫌味を言う。

「お前ら頭おかしいんじゃないのか!?何があるかもわからない場所に一番最初に行くなんて、危機管理がなってないんだよ!これだから若い奴はダメなんだ!」

 そのサラリーマンの言葉につづける様にもう1人の女性もヒステリック気味に

「あなた達が先に向かって安全だったら、その女に連絡して頂戴!私は無事に帰って猫のシルビアちゃんをお披露目会に連れていかないとならないのよ!あなた達の誰でもいいから、安全な場所に着いたら連絡するのよ!」

 この2人には一言くらいは言い返す事も考えたが、万が一メンバーとして割って入られると皆が迷惑するだろうから、黙っている事にした。

 やれやれ……とした顔をして、魔法の言葉を紡ぐ女性は僕の目を見て、

「1人ずつは面倒だね……お前ら4人程度なら行けそうだね纏めちまうか」

 そう聞こえたのが、その女性と話した最後の言葉だった……

 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 …話は少し遡る…

 背中に羽の生えた生き物、ぱっと見は透明なのに確実にそこに存在する。

 それは妖精……

 透過の魔法で自分の姿を曖昧にして人目を避ける存在。

 その2匹は魔法で自分自身を不可視にして絶賛悪戯中だった。

「背中は良いとして頭が随分傷んでるね……これ大丈夫?この傷じゃ間に合わないんじゃない?」

「こっちの人間に効くかわからないけど、回復使って見れば?」

「でも流れ前に回復は副作用で受容体出来て、イレギュラー生まれるから出来ちゃうからダメだって聴いたことあるよ?」

「大丈夫だよ……回復させないと異世界で使えないし、結局アイツが回復させるだろうし!いつもの事じゃん?」

「それなら!私たちがちょっと『悪戯』しても変わらないよ!」

「それに、どうせアイツが向こうに送っちゃうんだろうし……向こうから無事に帰ってこれるとも思えないわね!」

「確かに!此処にアタイ等がいるのも気付かない異世界のお馬鹿さんを、また全て律儀に送るんだろうから!どうせ向こう行きなら……一人でも多い方が良いか」

「何より私たち的に、楽しみが増えそうだし!」

「%#$〆※・・よし!これで大丈夫!」

「あれ?なんか変じゃなかった?既になんか受容体があったような気がする?」

「うん……何の苦もなくすんなり回復したね?既に一度回復された事がある?みたいな反応だったね」

「それになんかさ、この状況で意識あるよこの子・・・・いいもの拾ったかも!」

「そろそろ目を覚ましたらどう?聞こえてるんでしょ?」

 僕の身体にそんな事が行われていた事を知らずに僕はこの後暫くして目を覚ます……異世界で。

 ………

 ……

 …
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