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全知全能は眠らない
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あれから夜遅くまでゲームの試合を重ねてしまった僕は、若干の寝不足で一時間目の授業を迎えていた。ペンを持ち、あたかもノートと教科書に意識を向けているかのように偽装して目を瞑る。こうすれば、頭の角度的に僕の顔は教卓からは見えない筈だ。
「……」
「治君、起きてますか? ここ、読んでみなさい」
「……与へざらんと欲すれば、秦の強きを畏れ、与へんと欲すれば、欺かるるを恐る」
「凄く眠そうですが?」
「すみません、集中していただけです」
飽くまでも完璧に書き下し文を読んで見せた僕に、先生はそれでも訝し気な視線を向けていた。
「では、この文の意味を話して下さい」
「恵文王は秦にこの宝を渡さないと言えば秦が攻めてくると恐れ、渡すと言えば騙されることになると恐れていました」
「……座って構いません」
納得しかねている様子の先生を見て、流石に申し訳なさを感じた僕だが、今から寝てましたと話すのもなので、責めてここからの授業は起きておくことにした。
休み時間になり、僕は教科書とノートとをリュックに戻し、満を持して机に突っ伏した。
「なぁなぁ、治。寝る前に良いか?」
「ん……どうしたの?」
僕は仕方なさげに体を起こし、隣の席の西岡に顔を向けた。学校の外で遊んだことは無いが、まぁ隣の席なので話はするくらいの仲だ。
「お前って、いっつも授業聞いてないのにどうやって答えてるんだ? そんなに頭良い訳でも無いだろ? もしかして、寝てるフリしてんのか?」
「いや……意外と僕、予習とかするタイプだからさ。授業の内容も既に全部家でやったところなんだよね。あと、授業聞いてないのはいつもじゃないから」
「嘘吐けよ。お前、いっつもテストギリギリじゃん」
「だからこそ、最近は勉強するようにしたんだってば」
僕が平気な顔で嘘を答えると、西岡は眉を顰めた。
「だったら、授業も起きとけよお前」
「全くその通りだ」
余りの正論を食らった僕は、再び机に突っ伏した。
♢
昼休みを迎えた僕は、珍しくお母さんが用意してくれていた弁当を屋上で食べていた。これこそ、全知全能特権である。僕以外には誰も入れないからね。
「ん」
唐揚げが美味い。姉も褒めていたけど、作り方を変えてから本当に変わった。別に、元から美味しくは合ったんだけどね。
さて、唐揚げの話よりも重要なことがある。それを考える為に僕は一人で屋上に来たと言っても良い。いつもは善斗や絵空と食うことが多いんだけど、今日は誘われる前にこっそりと抜け出してきた。
重要なことと言うのは、僕、頭良く見られ始めている問題だ。最近、寝惚けていても正答率百パーセントで答えを返してしまう僕は一目置かれるようになっていた。お陰で、ちょっとやりづらい。
実は頭良いんじゃないか説が出ている僕なんだが、当然そんなことは無い。というか、前に聞かれた時も家で予習してるからと答えたので、その説が順調に信じられ始めている筈だ。多分。
ただ、全知全能で答えを知ることは僕にとって抵抗の無いことでも、全知全能で知識を定着させることは僕にとってはちょっと怖いことだ。故に、勉強をスキップしていきなり高校で習う知識の全てを記憶してやろうという気は無い。
でも、まぁ僕としてもそろそろ勉強しておいた方が健全だし自然では無いかと思い始めていた。そもそも授業中にボーっとしてんじゃねえよという話もあるが、それは無理な話である。僕は僕のペースから外れた話を聞いたりするのが大苦手だ。最初は聞いていても何か気になることがあればそれについて考えてしまうし、興味を失えば右から左へと話が通り抜けて行く。
そんな中でも、自習はまだ出来ない訳じゃない部類だ。一応は自分のペースで出来ることではあるからだ。問題は集中力だが、そこは頑張れば何とかなるだろう。それに、図書館に勉強しに行くというイベントも達成しておかないと家族にいつか嘘がバレる可能性がある。
……あれ、僕って結構ろくでもない人間だな。知ってたけど。
僕は弁当を食べ終わると、全知全能のエア椅子から立ち上がり、エア机と合わせて消し去ってから屋上を去った、因みに、外から僕のことは見えないようにもしていた。安心安全だ。
歩いて教室まで戻った僕は、リュックに弁当箱を戻して席に座った。良かった。偶に陽キャグループに席を取られる大事件が発生するが、今日はセーフだったらしい。僕はそのまま机に突っ伏し、和気藹々としたクラスの話し声をBGMにしながら眠りに入った。
「……」
「治君、起きてますか? ここ、読んでみなさい」
「……与へざらんと欲すれば、秦の強きを畏れ、与へんと欲すれば、欺かるるを恐る」
「凄く眠そうですが?」
「すみません、集中していただけです」
飽くまでも完璧に書き下し文を読んで見せた僕に、先生はそれでも訝し気な視線を向けていた。
「では、この文の意味を話して下さい」
「恵文王は秦にこの宝を渡さないと言えば秦が攻めてくると恐れ、渡すと言えば騙されることになると恐れていました」
「……座って構いません」
納得しかねている様子の先生を見て、流石に申し訳なさを感じた僕だが、今から寝てましたと話すのもなので、責めてここからの授業は起きておくことにした。
休み時間になり、僕は教科書とノートとをリュックに戻し、満を持して机に突っ伏した。
「なぁなぁ、治。寝る前に良いか?」
「ん……どうしたの?」
僕は仕方なさげに体を起こし、隣の席の西岡に顔を向けた。学校の外で遊んだことは無いが、まぁ隣の席なので話はするくらいの仲だ。
「お前って、いっつも授業聞いてないのにどうやって答えてるんだ? そんなに頭良い訳でも無いだろ? もしかして、寝てるフリしてんのか?」
「いや……意外と僕、予習とかするタイプだからさ。授業の内容も既に全部家でやったところなんだよね。あと、授業聞いてないのはいつもじゃないから」
「嘘吐けよ。お前、いっつもテストギリギリじゃん」
「だからこそ、最近は勉強するようにしたんだってば」
僕が平気な顔で嘘を答えると、西岡は眉を顰めた。
「だったら、授業も起きとけよお前」
「全くその通りだ」
余りの正論を食らった僕は、再び机に突っ伏した。
♢
昼休みを迎えた僕は、珍しくお母さんが用意してくれていた弁当を屋上で食べていた。これこそ、全知全能特権である。僕以外には誰も入れないからね。
「ん」
唐揚げが美味い。姉も褒めていたけど、作り方を変えてから本当に変わった。別に、元から美味しくは合ったんだけどね。
さて、唐揚げの話よりも重要なことがある。それを考える為に僕は一人で屋上に来たと言っても良い。いつもは善斗や絵空と食うことが多いんだけど、今日は誘われる前にこっそりと抜け出してきた。
重要なことと言うのは、僕、頭良く見られ始めている問題だ。最近、寝惚けていても正答率百パーセントで答えを返してしまう僕は一目置かれるようになっていた。お陰で、ちょっとやりづらい。
実は頭良いんじゃないか説が出ている僕なんだが、当然そんなことは無い。というか、前に聞かれた時も家で予習してるからと答えたので、その説が順調に信じられ始めている筈だ。多分。
ただ、全知全能で答えを知ることは僕にとって抵抗の無いことでも、全知全能で知識を定着させることは僕にとってはちょっと怖いことだ。故に、勉強をスキップしていきなり高校で習う知識の全てを記憶してやろうという気は無い。
でも、まぁ僕としてもそろそろ勉強しておいた方が健全だし自然では無いかと思い始めていた。そもそも授業中にボーっとしてんじゃねえよという話もあるが、それは無理な話である。僕は僕のペースから外れた話を聞いたりするのが大苦手だ。最初は聞いていても何か気になることがあればそれについて考えてしまうし、興味を失えば右から左へと話が通り抜けて行く。
そんな中でも、自習はまだ出来ない訳じゃない部類だ。一応は自分のペースで出来ることではあるからだ。問題は集中力だが、そこは頑張れば何とかなるだろう。それに、図書館に勉強しに行くというイベントも達成しておかないと家族にいつか嘘がバレる可能性がある。
……あれ、僕って結構ろくでもない人間だな。知ってたけど。
僕は弁当を食べ終わると、全知全能のエア椅子から立ち上がり、エア机と合わせて消し去ってから屋上を去った、因みに、外から僕のことは見えないようにもしていた。安心安全だ。
歩いて教室まで戻った僕は、リュックに弁当箱を戻して席に座った。良かった。偶に陽キャグループに席を取られる大事件が発生するが、今日はセーフだったらしい。僕はそのまま机に突っ伏し、和気藹々としたクラスの話し声をBGMにしながら眠りに入った。
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