ある日、僕は全知全能になった。

暁月ライト

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全知全能と夜を照らす光

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 工場の窓から夜空まで届きそうな程の光は、不思議と私の目を焼くことは無かった。それどころか、どこか暖かくて、こんな状況だと言うのに心が落ち着くような光で……

「ッ、馬鹿な!? 呪いが……!」

「みんなッ!!」

 光と呼ばれた少女が叫んだ。同時に、手を上げていた四人が一斉に動き出した。ビリビリと青白い電気を纏う炎の鞭がこの広間を一閃するような勢いで駆け抜け、黒い服の人達を打ち据えて、一瞬で大勢を地に伏せさせた。

「おい、こいつが――――ッ!?」

 私達の背後に居た男が私にナイフを突きつけるが、飛来した黒い物が男の手を貫いて男はナイフを取り落とした。

「全員、もう動けると思うなよ」

 御岳さんが言い放つ頃には、既に倒れたものも含めて黒い服の人達の全員に地面や壁から生えた岩の尖った先端が突きつけられていた。
 そして、彼らの腕や足を岩が拘束していく。

「ん、ん……」

 喋ろうとしても、口を布で塞がれているせいで声が出なかった。

 これは、一体……何が起きてるの? あの白い光の女の子は誰? 茜さんが振るってる炎の鞭は? さっき飛んできた黒いのは? そして、この地面から急に生えて来た岩たちは……何なの!?

 冷静になるにつれて、寧ろ状況を理解して冷静さを失っていく私は、瑞樹さんに視線を向けた。瑞樹さんは柔らかく笑みを浮かべて、頷いた。

「ぁ……」

 きっと、助かったんだ。一先ず、それが分かった私は、安心したせいで全身から力が抜けていき、地面にへたり込んだ。

「あー、拘束解きますね」

 そこに黒崎さんが歩いて来て、私と瑞樹の拘束を解いていった。黒い服の男と御岳さんが何かを話しているのが見えたが、その内容は今の私の耳を通り過ぎていくばかりで、呆然としていた私は黒崎さんの言葉に答えることすら出来ていなかった。

「あ、あの、ありがとうございます……」

「うっす」

 黒崎さんは軽く頭を下げ、茜さんの方に足早に戻っていった。

「柚乃ちゃん、あの……巻き込んでごめんなさい、本当に」

「い、いえ……でも、私のせい。なんですよね……?」

「ッ! 違うよ! 私達が気を付けなきゃいけなかった話で……柚乃ちゃんに悪い所なんて、本当に一つも無いから……」

 瑞樹さんは申し訳なさそうに言うが、私は男達の話を聞いている内にこうなったのは私のせいだということを察していた。どうやら、私が瑞樹さんや茜さんの名前を呼んでいたのが原因だったらしい。詳しい話は、良く分からないけど。

「でも、何とかなったんですよね……? だったら、良かったです! 茜さんの、格好いい姿も見れましたし……?」

「あははっ、そっか。そう言って貰えると、助かるよ……ありがとう」

「こっちこそ、助けて貰ってありがとうございます!」

「いやいや! 元はと言えばこっちのせいだし、そもそも私は何もしてないし……」

 瑞樹さんはそこで、眉を顰めて廃工場の入り口側を見た。

「ッ、茜!」

「分かってる!」

 振るわれた炎の鞭は、工場の扉にぶつかって鋭い跡を残し……しかし、そこから現れた者には当たっていなかった。

「チッ、外したか……」

 舌打ちする茜さんを、現れた者は黒いローブをはためかせて見下すように見た。


「――――当たらないですよ。その程度の、愚鈍の攻撃」


 青白い肌に、赤い目。男でありながらも、芸術品の様に美しく見えるその男は、窓から差す月の光でより輝いているように見えた。

「やはり、下請けに任せて良いことなどありませんね。些事なら兎も角、これ程の大事であるにも関わらず勝手に物事を進めるとは……大方、功を急いたんでしょうが」

 忌まわし気に男が言った後、視線を向けたのは光と呼ばれた女の子だった。

「さぁ、光様。お父様がお待ちですよ……今直ぐに、帰りましょう」

 丁寧な口調とは裏腹に獰猛に笑う男の口からは、鋭い犬歯が伸びていた。

「い、いや……!」

「くッ、ふふ……そうですか。であれば、少し躾をしてあげましょう……お仲間を皆殺しにされてからでなければ、分からないようですからね」

 男を見て震え出した女の子に、男はそう答えた。男の姿が、黒いローブに包まれてその場から消える。次の瞬間には、瑞樹さんの背後に現れていた。

「さぁ、先ずは一人……」

「させねぇよ」

 茜さんが手を伸ばすと、炎の鞭が形を変えて鋭い剣になり、その刃が一瞬で真っ直ぐ伸びる。刃は男の頬を貫き、炎と電撃を迸らせた。

「おっと、危ないですね……」

 しかし、炎の刃が貫く筈だった男の頬は白い霧のように変化して避けており、男は全身を霧に変化させてその場から移動した。

「柚乃ちゃん……こっちに来て」

「ぁ、は、はぃ……!」

 瑞樹さんは私の手を掴み、さっきまで監禁されていた空間まで逃れた。男はこちらに気付いたようだったが、興味なさげに視線を外した。どうせ戦力外の私には何の関心も無いのかも知れない。

「ここに居よう。大丈夫、何かあっても私が守るから」

 瑞樹さんは扉を閉め、緊張したように息を吐き出した。
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