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全知全能と青空教室
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♦……side:ナーシャ
初めは、全くもって何を言っているのか理解できなかった。だけど、言葉が連ねられて行く度にそれが私の頭の中に直に浸透していくかのように、その魔術をいとも簡単に理解させられているということに気付いた。
「魔力線制御を緩めて、ここで締める。僅か右に。あの時の魔力線の動きを思い出して、少し止まって、休んで、もっと休め」
魔術を、教えられているのだろうか。これは、何なんだろう。だけど、指示に従うごとに、私はその魔術の体得に近付いていることを察していた。
「位相の調整が出来てない。周波がズレてる。もっと滑らかに、目を閉じて、息を吸って、吐き出すんだ。あと、三回」
「魔力が足りてない。左上辺り。もう少し上、左。近い、そう、そこだ。少し魔力を足そう」
「イメージだ。先鋭、穿撃、尖って、穿つ。あぁ、そこで良い。うん、それで、もう一回」
何なんだろう、これは。分からない。だけど、全て分かってしまう。進んで行く。これは、魔術なのか? それすらも、あやふやに溺れるようだった。
「右へ――光の線を――――冷静に、今は熱く――――今、励起させて」
目の前に立っている治が……もっと、超越した存在の様に見えた。だけど、私が伸ばした手の先には、完璧な魔法陣が浮かび……
「『魔尖弾』」
先端の鋭い魔力の弾が、魔法陣から放たれて地面を抉って消えて行った。
「す、ごい……」
それは、私の手からあの魔術が放たれたことによる感動だったのか、今行われた指南が本物だったことに対する困惑なのか、自分でも分からなかった。
「うん。まぁ、まだ完全じゃないけど使えるようになったね。あとは自分で訓練すれば出来るだろうし……大丈夫かな?」
「治……貴方は、何者なの?」
私の問いに、治は眉を顰めた。
「…………何者って、言うと?」
「どうやったら、こんな風に教えられるのか、私には分からない」
私がそう言うと、治は困ったような表情をして……
「こう、僕は……指輪のお陰で、そういう必要な言葉を引き出すことが出来るんだよね」
「嘘吐き」
私は治の手を指差して、そう言った。そこには、いつもの黄金の指輪は嵌められてなどいなかった。
「……あ、えっと……そう、普通に魔法陣とか魔力の流れを見てそれに沿ったアドバイスをしているに過ぎないよ」
「だから、そんなのがあそこまで正確に出来るなんて……そこらのウィザードには有り得ないって言ってる。それに、なんで一回誤魔化そうとしたの?」
ぐっ、と治は痛いところを突かれたような声を上げ、視線を彷徨わせた。
「……ぁ、いや、あの、えっと……アレだよ、あの、うん……」
治はしどろもどろに言葉を吐き出した後、諦めたように溜息を吐いた。
「あー……」
「ッ」
その目が、私の方を見る。私は、その時初めて治に恐怖したのかも知れない。無機質に、黒い瞳が私を見つめていた。そこにある思考は、読み取れない。もしかしたら、消されるかも知れない。きっと私は、踏み込んではいけない領域に、踏み込んでしまった。
「い、ゃ……」
「ごめん、お願いだから内緒にして下さい……!」
だから、勢いよく下げられた頭に私は呆気に取られることになった。
「ちょっと、時間無いから巻きでやろうとし過ぎて……あー、その、僕は色々と秘密があるから。だけど、その秘密については話せないんだ。それで、納得してくれるかな……?」
色々とある、秘密。それに、鉄の日と稲の日にしか働けず、魔術に極めて精通している癖に……全く知らないことも多い。
「……分かった」
いや、辿り着いたと言っても良いかも知れない。
「――――貴方は、古代より転生してきた魔導王」
そう、私は治の正体を言い当てることに成功した。
♦……side:宇尾根治
転生したら魔導王だった件。いや、違うけどね。全然違うけど。彼女の中では、そういうことになっているらしい。
「きっと、知識がちぐはぐなのは魂と器が馴染んでいなくてまだ記憶が混濁していたりするせい。魔術にぎこちなさがあるのも、そのせい」
「そうなんだ」
僕は呆然と呟いた。いや、やり過ぎた僕が悪いんだけど……こんなことになるとは思ってなかった。パーソナルな情報を使わなければ不自然にもならないと思ったんだけど、やり過ぎてしまったらしい。
「そもそも、魔族について碌に知らないなんて有り得ない。だから、魔大陸の情報が少なかった大昔の人間って可能性が高い。一部の日にしか働けないのは器と魂のバランスを取る為の調整が必要だから。そして、宿に居ないのは別の場所でその作業を行ってるから」
「そうかな……そうかも……」
ナーシャは僕の目をじっと見ると、こくりと頷いた。
「大丈夫、貴方のことは誰にも話さないから……安心して、次の魔術を教えて欲しい」
「あ、うん……」
僕が気の無い返事をすると、不安になったのかナーシャは眉を困らせた。
「……深く探ったりして……ごめん、なさい」
「いや、大丈夫だよ。誰にも話さないなら、本当に大丈夫だから」
僕が言うと、眉毛がきりっとしてその目が開いた。
「……絶対に、話さない。貴方が古代の魔導王だという、真実は」
「うん、そうしてね」
大丈夫かなぁ、この子。地球に来たらころっと詐欺に騙されそうだ。アシラにはもっとしっかり監督するように言っておこう。
初めは、全くもって何を言っているのか理解できなかった。だけど、言葉が連ねられて行く度にそれが私の頭の中に直に浸透していくかのように、その魔術をいとも簡単に理解させられているということに気付いた。
「魔力線制御を緩めて、ここで締める。僅か右に。あの時の魔力線の動きを思い出して、少し止まって、休んで、もっと休め」
魔術を、教えられているのだろうか。これは、何なんだろう。だけど、指示に従うごとに、私はその魔術の体得に近付いていることを察していた。
「位相の調整が出来てない。周波がズレてる。もっと滑らかに、目を閉じて、息を吸って、吐き出すんだ。あと、三回」
「魔力が足りてない。左上辺り。もう少し上、左。近い、そう、そこだ。少し魔力を足そう」
「イメージだ。先鋭、穿撃、尖って、穿つ。あぁ、そこで良い。うん、それで、もう一回」
何なんだろう、これは。分からない。だけど、全て分かってしまう。進んで行く。これは、魔術なのか? それすらも、あやふやに溺れるようだった。
「右へ――光の線を――――冷静に、今は熱く――――今、励起させて」
目の前に立っている治が……もっと、超越した存在の様に見えた。だけど、私が伸ばした手の先には、完璧な魔法陣が浮かび……
「『魔尖弾』」
先端の鋭い魔力の弾が、魔法陣から放たれて地面を抉って消えて行った。
「す、ごい……」
それは、私の手からあの魔術が放たれたことによる感動だったのか、今行われた指南が本物だったことに対する困惑なのか、自分でも分からなかった。
「うん。まぁ、まだ完全じゃないけど使えるようになったね。あとは自分で訓練すれば出来るだろうし……大丈夫かな?」
「治……貴方は、何者なの?」
私の問いに、治は眉を顰めた。
「…………何者って、言うと?」
「どうやったら、こんな風に教えられるのか、私には分からない」
私がそう言うと、治は困ったような表情をして……
「こう、僕は……指輪のお陰で、そういう必要な言葉を引き出すことが出来るんだよね」
「嘘吐き」
私は治の手を指差して、そう言った。そこには、いつもの黄金の指輪は嵌められてなどいなかった。
「……あ、えっと……そう、普通に魔法陣とか魔力の流れを見てそれに沿ったアドバイスをしているに過ぎないよ」
「だから、そんなのがあそこまで正確に出来るなんて……そこらのウィザードには有り得ないって言ってる。それに、なんで一回誤魔化そうとしたの?」
ぐっ、と治は痛いところを突かれたような声を上げ、視線を彷徨わせた。
「……ぁ、いや、あの、えっと……アレだよ、あの、うん……」
治はしどろもどろに言葉を吐き出した後、諦めたように溜息を吐いた。
「あー……」
「ッ」
その目が、私の方を見る。私は、その時初めて治に恐怖したのかも知れない。無機質に、黒い瞳が私を見つめていた。そこにある思考は、読み取れない。もしかしたら、消されるかも知れない。きっと私は、踏み込んではいけない領域に、踏み込んでしまった。
「い、ゃ……」
「ごめん、お願いだから内緒にして下さい……!」
だから、勢いよく下げられた頭に私は呆気に取られることになった。
「ちょっと、時間無いから巻きでやろうとし過ぎて……あー、その、僕は色々と秘密があるから。だけど、その秘密については話せないんだ。それで、納得してくれるかな……?」
色々とある、秘密。それに、鉄の日と稲の日にしか働けず、魔術に極めて精通している癖に……全く知らないことも多い。
「……分かった」
いや、辿り着いたと言っても良いかも知れない。
「――――貴方は、古代より転生してきた魔導王」
そう、私は治の正体を言い当てることに成功した。
♦……side:宇尾根治
転生したら魔導王だった件。いや、違うけどね。全然違うけど。彼女の中では、そういうことになっているらしい。
「きっと、知識がちぐはぐなのは魂と器が馴染んでいなくてまだ記憶が混濁していたりするせい。魔術にぎこちなさがあるのも、そのせい」
「そうなんだ」
僕は呆然と呟いた。いや、やり過ぎた僕が悪いんだけど……こんなことになるとは思ってなかった。パーソナルな情報を使わなければ不自然にもならないと思ったんだけど、やり過ぎてしまったらしい。
「そもそも、魔族について碌に知らないなんて有り得ない。だから、魔大陸の情報が少なかった大昔の人間って可能性が高い。一部の日にしか働けないのは器と魂のバランスを取る為の調整が必要だから。そして、宿に居ないのは別の場所でその作業を行ってるから」
「そうかな……そうかも……」
ナーシャは僕の目をじっと見ると、こくりと頷いた。
「大丈夫、貴方のことは誰にも話さないから……安心して、次の魔術を教えて欲しい」
「あ、うん……」
僕が気の無い返事をすると、不安になったのかナーシャは眉を困らせた。
「……深く探ったりして……ごめん、なさい」
「いや、大丈夫だよ。誰にも話さないなら、本当に大丈夫だから」
僕が言うと、眉毛がきりっとしてその目が開いた。
「……絶対に、話さない。貴方が古代の魔導王だという、真実は」
「うん、そうしてね」
大丈夫かなぁ、この子。地球に来たらころっと詐欺に騙されそうだ。アシラにはもっとしっかり監督するように言っておこう。
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