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#1 レツオウガ起動
Chapter01 邂逅 04-04
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一帯を包む薄墨色の空間、そのものへと。
ぱぎん、というガラスが砕けるような音とともに、亀裂を走らせる薄墨のベール――もとい、幻燈結界。
その光景を二重の意味で呆然と見つめながら、風葉はとぼとぼと窓際に近付く。そして、同じく窓際でそれを見ていた辰巳に、風葉は聞いた。
「なに、あれ」
「だから、ウチに帰るつもりなのさ。スペクターの本体が待ってるどこかへ向かって、この幻燈結界に穴を開けてな」
「ああ、なるほど」
ぽふ、と手を叩く風葉。
「……って、えぇー!? 壊せるもんなの!? ていうか、さっき悪者はやっつけたじゃない!」
「さっき倒したのは、スペクターが自分の意識を投射した身代わりの術式――分霊ってヤツさ。だから、本体は今もどこかでピンピンしてるだろうよ」
言いつつ、辰巳は腕の中を見下ろす。人質兼霊力フィルタに利用された泉は、未だにピクリとも動かない。
「そう、なんだ」
納得いかないような、ホッとしたような。微妙な表情を浮かべながら、唇を噛む風葉。
そんな風葉の隣で、辰巳はじっとキクロプスを見据える。
違和感が、ある。
霊地から引き出した霊力を、強大な突破力を持つキクロプスへと変換。その力で幻燈結界に穴を開け、脱出させて回収。しかる後どこかに潜伏しているスペクター本体が、元の霊力へと再変換して『夢』のために利用する。
行動の筋書きとしては、概ねこんな所だろう。
「だからこそ、おかしいんだ」
仮にキクロプスがこのまま幻燈結界を破壊したとしよう。十中八九そのまま逃亡を続けるのだろうが、そうすれば間違いなく一般人に存在を知られてしまう。
おかしいのはそこだ。古今東西を問わず魔術を少しでもかじった事があるなら、『神秘は秘匿されねばならない』という不文律は嫌でも知っているはずだ。
霊力を扱う者としての常識を自ずから破り、あまつさえ衆目へ積極的にアピールしようものなら、凪守はおろか全世界の退魔組織から狙われても文句は言えなくなる。
そんな状況に陥って、果たして『夢を成す』事が出来るのだろうか。
あるいは、そうなる事自体がヤツの『夢』とやらなのか――などと考えていた辰巳の思考は、再び振り上げられたキクロプスの拳によって中断する。
「何にせよ、今は考える状況じゃないか」
ぱぎん、というガラスが砕けるような音とともに、亀裂を走らせる薄墨のベール――もとい、幻燈結界。
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「なに、あれ」
「だから、ウチに帰るつもりなのさ。スペクターの本体が待ってるどこかへ向かって、この幻燈結界に穴を開けてな」
「ああ、なるほど」
ぽふ、と手を叩く風葉。
「……って、えぇー!? 壊せるもんなの!? ていうか、さっき悪者はやっつけたじゃない!」
「さっき倒したのは、スペクターが自分の意識を投射した身代わりの術式――分霊ってヤツさ。だから、本体は今もどこかでピンピンしてるだろうよ」
言いつつ、辰巳は腕の中を見下ろす。人質兼霊力フィルタに利用された泉は、未だにピクリとも動かない。
「そう、なんだ」
納得いかないような、ホッとしたような。微妙な表情を浮かべながら、唇を噛む風葉。
そんな風葉の隣で、辰巳はじっとキクロプスを見据える。
違和感が、ある。
霊地から引き出した霊力を、強大な突破力を持つキクロプスへと変換。その力で幻燈結界に穴を開け、脱出させて回収。しかる後どこかに潜伏しているスペクター本体が、元の霊力へと再変換して『夢』のために利用する。
行動の筋書きとしては、概ねこんな所だろう。
「だからこそ、おかしいんだ」
仮にキクロプスがこのまま幻燈結界を破壊したとしよう。十中八九そのまま逃亡を続けるのだろうが、そうすれば間違いなく一般人に存在を知られてしまう。
おかしいのはそこだ。古今東西を問わず魔術を少しでもかじった事があるなら、『神秘は秘匿されねばならない』という不文律は嫌でも知っているはずだ。
霊力を扱う者としての常識を自ずから破り、あまつさえ衆目へ積極的にアピールしようものなら、凪守はおろか全世界の退魔組織から狙われても文句は言えなくなる。
そんな状況に陥って、果たして『夢を成す』事が出来るのだろうか。
あるいは、そうなる事自体がヤツの『夢』とやらなのか――などと考えていた辰巳の思考は、再び振り上げられたキクロプスの拳によって中断する。
「何にせよ、今は考える状況じゃないか」
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