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#1 レツオウガ起動
Chapter02 凪守 02-07
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「うん、二年前に壊滅してるハズだよねー。ま、これ以上考えても答えは出ない。調査の継続は当然として、当面はどっか余所の組織が神影鎧装計画を嗅ぎ付けてやっかんでるコトにしとこう」
「良いんですか、それで」
あまりにあんまりなテキトーぶりに思わず心配してしまう風葉だったが、巌は毎度の調子ではっはと笑う。
「今までも何とかなって来たし、これからもどうにかなるさ……さて」
唐突に笑いを打ち消し、巌は脇のブリーフケースにもう一度手を伸ばす。
「キリが良いとこだし、次の話に移ろうか。霧宮くんに憑依した方のフェンリルについてだ」
「!」
反射的に姿勢を正してしまう風葉に微笑みながら、巌はブリーフケースから小さな箱を取り出した。淡い白色をした、眼鏡ケースよりも一回り小ぶりな箱だ。
巌はそれを風葉に手渡す。
「まずはそれを開けてくれ」
「あ、はい……なんだろ」
少しわくわくしながら、風葉は堅い手触りの箱を開ける。
中には、二十センチくらいの革紐が一本入っていた。焦げ茶色で、幅は三ミリくらいで、中々に柔らかい。
それを風葉はつまみ上げ、たっぷり一分ほどしげしげと眺める。
「……あの、なんなんですか、これ」
「グレイプニルのレプリカだねー。北欧神話の中でフェンリルを押さえつけてた魔法の紐の模造品さ。取りあえず、それで髪を結んでみたら良いんじゃ無いかな。霊力を押さえられるハズなんだよねー」
「!」
巌の説明を聞くや否や、風葉は電光石火の速度でポニーテールを結んでいたヘアバンドを外し、代わりに件のグレイプニル・レプリカを結わえる。
「ほれ鏡」
間髪入れずに手鏡を向ける雷蔵。
鏡に映る風葉の髪は、ようやくいつもの黒髪に戻っていた。犬耳も綺麗サッパリ消えている。
念のため前髪を一筋つまむが、やはりどう見ても黒にしか見えない。
たった二日。それでも二日。遂に戻った自分の髪に、風葉は快哉を叫ぶ。
「や……やった! ありがとうございます!」
「はっは。どういたしましてー、と、素直に返せたら綺麗に終わったんだけどねー」
え、と硬直する風葉。
「何か、問題が?」
「良いんですか、それで」
あまりにあんまりなテキトーぶりに思わず心配してしまう風葉だったが、巌は毎度の調子ではっはと笑う。
「今までも何とかなって来たし、これからもどうにかなるさ……さて」
唐突に笑いを打ち消し、巌は脇のブリーフケースにもう一度手を伸ばす。
「キリが良いとこだし、次の話に移ろうか。霧宮くんに憑依した方のフェンリルについてだ」
「!」
反射的に姿勢を正してしまう風葉に微笑みながら、巌はブリーフケースから小さな箱を取り出した。淡い白色をした、眼鏡ケースよりも一回り小ぶりな箱だ。
巌はそれを風葉に手渡す。
「まずはそれを開けてくれ」
「あ、はい……なんだろ」
少しわくわくしながら、風葉は堅い手触りの箱を開ける。
中には、二十センチくらいの革紐が一本入っていた。焦げ茶色で、幅は三ミリくらいで、中々に柔らかい。
それを風葉はつまみ上げ、たっぷり一分ほどしげしげと眺める。
「……あの、なんなんですか、これ」
「グレイプニルのレプリカだねー。北欧神話の中でフェンリルを押さえつけてた魔法の紐の模造品さ。取りあえず、それで髪を結んでみたら良いんじゃ無いかな。霊力を押さえられるハズなんだよねー」
「!」
巌の説明を聞くや否や、風葉は電光石火の速度でポニーテールを結んでいたヘアバンドを外し、代わりに件のグレイプニル・レプリカを結わえる。
「ほれ鏡」
間髪入れずに手鏡を向ける雷蔵。
鏡に映る風葉の髪は、ようやくいつもの黒髪に戻っていた。犬耳も綺麗サッパリ消えている。
念のため前髪を一筋つまむが、やはりどう見ても黒にしか見えない。
たった二日。それでも二日。遂に戻った自分の髪に、風葉は快哉を叫ぶ。
「や……やった! ありがとうございます!」
「はっは。どういたしましてー、と、素直に返せたら綺麗に終わったんだけどねー」
え、と硬直する風葉。
「何か、問題が?」
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