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#1 レツオウガ起動
Chapter02 凪守 04-03
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「気になるからだよ、五辻くんが」
「……どういう理由だよ」
「ん、っと。最初は、そう。五辻くんのコトを、教室のみんながあんまり……ううん、全然意識してなかったコトだね」
軽く、風葉は自分の頭を撫でた。今は見えない犬耳を、それとなく確認するように。
「最初は、凪守の仕事をする都合でそうしてるんだと思ってた。どんな話をしてたとしても、幻燈結界が開いたらその時点で無かったコトになっちゃうからね」
つい先日、身を持って知った凪守の情報隠蔽術。
それがあるために、辰巳は他人との関係を極力絶っているのだと、そう思っていた。
「けど、凪守にお邪魔した時だね。正直言って周りの人達が五辻くんを見る目、何かおかしかった。えぇと、ファン、ふぁん……ふぁんただっけ?」
「ファントム・ユニットな」
「そうそれ。それ以外の人達は、何て言うかこう、五辻くんを、怖がってたみたいな」
「……」
辰巳は風葉を見ない。ただ無表情に整頓したノート類を見ながら、うっそりとつぶやく。
「何が言いたい」
平坦で、乾ききった、小さな声。
だがその奥にある意志は、今まで辰巳が放った声よりも、戦闘中のかけ声すらよりも、明確に敵意を帯びていた。
これは最後通牒だ。これ以上は辰巳にとって触れたくない、聞きたくない領域なのだろう。
だから、ごめん、と。頭を下げて引き下がるのが、きっと正しいマナーだ。それは風葉も理解している。
だが。
「何て言うか、さ。五辻くんは、地球みたいなんだよ」
「……は?」
だからこそ風葉は、事実の真芯を貫いた。
「凄く広い、凄く暗い場所で、たったひとりで浮いてる感じ」
学校に居ても、凪守に居ても、孤独すぎるんじゃないのか、と。
つらいんじゃないのか、と。
「……」
瞬きもせず、辰巳は風葉を見据える。
風葉もまっすぐに、半ば睨むような上目遣いで、辰巳を見据える。
そのまま、過ぎる事十秒。
「、は」
脱力したように、辰巳は息を吐いた。
「そんな評価をされたのは初めてだな、実に詩的だ」
「なんか、昨日見た宇宙の景色がパッと思いついたんだよね……気に入った?」
「そうさな。まぁ、悪くは無い」
抜かれた毒気を溜息と一緒に吐き出す辰巳。
きっと風葉に悪気は無い。彼女はただ、自分の命を救ってくれた相手の事情が気になっているだけなのだろう。
だから、本当に悪くは無い。何せ悪意が無いのだ。それがトラウマを浮き彫りにする一言だったとしても、不愉快を通り越していっそ痛快だ。
「……悪くはないから、少し独り言をしようと思う」
「……どういう理由だよ」
「ん、っと。最初は、そう。五辻くんのコトを、教室のみんながあんまり……ううん、全然意識してなかったコトだね」
軽く、風葉は自分の頭を撫でた。今は見えない犬耳を、それとなく確認するように。
「最初は、凪守の仕事をする都合でそうしてるんだと思ってた。どんな話をしてたとしても、幻燈結界が開いたらその時点で無かったコトになっちゃうからね」
つい先日、身を持って知った凪守の情報隠蔽術。
それがあるために、辰巳は他人との関係を極力絶っているのだと、そう思っていた。
「けど、凪守にお邪魔した時だね。正直言って周りの人達が五辻くんを見る目、何かおかしかった。えぇと、ファン、ふぁん……ふぁんただっけ?」
「ファントム・ユニットな」
「そうそれ。それ以外の人達は、何て言うかこう、五辻くんを、怖がってたみたいな」
「……」
辰巳は風葉を見ない。ただ無表情に整頓したノート類を見ながら、うっそりとつぶやく。
「何が言いたい」
平坦で、乾ききった、小さな声。
だがその奥にある意志は、今まで辰巳が放った声よりも、戦闘中のかけ声すらよりも、明確に敵意を帯びていた。
これは最後通牒だ。これ以上は辰巳にとって触れたくない、聞きたくない領域なのだろう。
だから、ごめん、と。頭を下げて引き下がるのが、きっと正しいマナーだ。それは風葉も理解している。
だが。
「何て言うか、さ。五辻くんは、地球みたいなんだよ」
「……は?」
だからこそ風葉は、事実の真芯を貫いた。
「凄く広い、凄く暗い場所で、たったひとりで浮いてる感じ」
学校に居ても、凪守に居ても、孤独すぎるんじゃないのか、と。
つらいんじゃないのか、と。
「……」
瞬きもせず、辰巳は風葉を見据える。
風葉もまっすぐに、半ば睨むような上目遣いで、辰巳を見据える。
そのまま、過ぎる事十秒。
「、は」
脱力したように、辰巳は息を吐いた。
「そんな評価をされたのは初めてだな、実に詩的だ」
「なんか、昨日見た宇宙の景色がパッと思いついたんだよね……気に入った?」
「そうさな。まぁ、悪くは無い」
抜かれた毒気を溜息と一緒に吐き出す辰巳。
きっと風葉に悪気は無い。彼女はただ、自分の命を救ってくれた相手の事情が気になっているだけなのだろう。
だから、本当に悪くは無い。何せ悪意が無いのだ。それがトラウマを浮き彫りにする一言だったとしても、不愉快を通り越していっそ痛快だ。
「……悪くはないから、少し独り言をしようと思う」
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