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#1 レツオウガ起動
Chapter03 魔狼 08-05
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太刀と長槍。各々の得物を振り抜いた体勢で、背中合わせに動きを止めるオウガとオーディン。
鉛のように重い静寂が、一帯に降りしきる。
「ぐ、ぁ」
しかしてその沈黙は、数秒も持たない。
ずん、と。オウガの右膝が、日乃栄高校のグラウンドに沈んだのだ。
更に、ばきりと。
右手に携えたブレードが、胸部を守る霊力装甲が、音を立てて砕け散った。グングニルの刃によって、まとめて一薙ぎされたのだ。
ひび割れたガラス細工のごとく、連鎖的に吹き飛ぶオウガの顔面。保護されていたコクピットが剥き出しになり、コンソール前の辰巳が姿を現す。
衝撃によりプロテクターはボロボロ、フェイスシールドは爆ぜ割れ、顔の右半分が覗いている有様だ。見るも無残な姿である。
「とったッ!」
対するオーディンは残心もそこそこに、振り向きざまグングニルを構える。
「これでぇぇっ、終わ、り――?」
後はパイロットを突き殺せば、サトウから受けた依頼は達成出来る――そう意気込んだ踏み込みを、ギノアはすんでのところで留まった。
オーディン側からフィードバックした戦闘技能が、何かの危険を嗅ぎ取ったのだ。
思考が加速する。空気が飴のように歪む。同調現象の進行により、ギノアは遂に刹那の閃きで生死を分ける達人の領域へ達したのだ。
だが、だとしてもそれは何だ。何が危険なのだ。眼前の敵は既に瀕死であり、始末するのは赤子の手を捻るよりも容易い。
そもそもオウガに武器はなく――と、そこでギノアの脳裏に電流が走る。
交錯前、オウガが携えていたもう一つの得物。
クナイが、無い。
「ッ!」
切磋にギノアは足を止め、グングニルを構え直す。敵の攻撃に備えるために。
だがまさにそのタイミングで、落下してきたクナイがオーディンを斬り裂いた。
――ラピッドブースターの発動と同時に、上空へ投擲していたクナイが、今まさに落ちてきたのである。
完全に虚を突き、グングニルの間隙をくぐり抜けたその刃は、しかし胸部装甲を僅かに掠めるに留まった。
ぴしりと、オーディンの装甲に亀裂が走る。自由落下のみならず、ラピッドブースターの加速力も上乗せされていたためである。もしもあと半歩でも踏み込んでいれば、クナイはコクピットを貫いていただろう。実に十数年ぶりに、ギノアは戦慄を覚えた。
だが、それだけだ。辰巳が放った最後の一手は、薄皮一枚を裂くだけで終わってしまった。
「ちぇ。こんなもん、か」
地面に転がり、霧散していくクナイ。でっち上げたバイパス経由でしていた無線制御を、辰巳が解いたのだ。
「そのようですね」
眼前のオウガが今度こそ動けぬ事を確認し、ギノアは改めてグングニルを構え直す。
「ですが、大したものだったと思いますよ。掛け値なしでね」
魔術師ではなく、同調した戦神オーディンとしての直感が、ギノアにそんなセリフをつぶやかせた。
「ですが、これで、終わりですねぇ!」
サトウの依頼を果たすため、己の夢を叶えるため。
ギノアは、グングニルを振りかぶった。
鉛のように重い静寂が、一帯に降りしきる。
「ぐ、ぁ」
しかしてその沈黙は、数秒も持たない。
ずん、と。オウガの右膝が、日乃栄高校のグラウンドに沈んだのだ。
更に、ばきりと。
右手に携えたブレードが、胸部を守る霊力装甲が、音を立てて砕け散った。グングニルの刃によって、まとめて一薙ぎされたのだ。
ひび割れたガラス細工のごとく、連鎖的に吹き飛ぶオウガの顔面。保護されていたコクピットが剥き出しになり、コンソール前の辰巳が姿を現す。
衝撃によりプロテクターはボロボロ、フェイスシールドは爆ぜ割れ、顔の右半分が覗いている有様だ。見るも無残な姿である。
「とったッ!」
対するオーディンは残心もそこそこに、振り向きざまグングニルを構える。
「これでぇぇっ、終わ、り――?」
後はパイロットを突き殺せば、サトウから受けた依頼は達成出来る――そう意気込んだ踏み込みを、ギノアはすんでのところで留まった。
オーディン側からフィードバックした戦闘技能が、何かの危険を嗅ぎ取ったのだ。
思考が加速する。空気が飴のように歪む。同調現象の進行により、ギノアは遂に刹那の閃きで生死を分ける達人の領域へ達したのだ。
だが、だとしてもそれは何だ。何が危険なのだ。眼前の敵は既に瀕死であり、始末するのは赤子の手を捻るよりも容易い。
そもそもオウガに武器はなく――と、そこでギノアの脳裏に電流が走る。
交錯前、オウガが携えていたもう一つの得物。
クナイが、無い。
「ッ!」
切磋にギノアは足を止め、グングニルを構え直す。敵の攻撃に備えるために。
だがまさにそのタイミングで、落下してきたクナイがオーディンを斬り裂いた。
――ラピッドブースターの発動と同時に、上空へ投擲していたクナイが、今まさに落ちてきたのである。
完全に虚を突き、グングニルの間隙をくぐり抜けたその刃は、しかし胸部装甲を僅かに掠めるに留まった。
ぴしりと、オーディンの装甲に亀裂が走る。自由落下のみならず、ラピッドブースターの加速力も上乗せされていたためである。もしもあと半歩でも踏み込んでいれば、クナイはコクピットを貫いていただろう。実に十数年ぶりに、ギノアは戦慄を覚えた。
だが、それだけだ。辰巳が放った最後の一手は、薄皮一枚を裂くだけで終わってしまった。
「ちぇ。こんなもん、か」
地面に転がり、霧散していくクナイ。でっち上げたバイパス経由でしていた無線制御を、辰巳が解いたのだ。
「そのようですね」
眼前のオウガが今度こそ動けぬ事を確認し、ギノアは改めてグングニルを構え直す。
「ですが、大したものだったと思いますよ。掛け値なしでね」
魔術師ではなく、同調した戦神オーディンとしての直感が、ギノアにそんなセリフをつぶやかせた。
「ですが、これで、終わりですねぇ!」
サトウの依頼を果たすため、己の夢を叶えるため。
ギノアは、グングニルを振りかぶった。
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