泡沫

文字の大きさ
17 / 17

前へ

しおりを挟む
「潤くん、お土産は行くとき買えばいいんだよね?」

あたしがそう言うと

「うん。行くときにどっかで買えばいいよ」

そう言って荷物を詰め込む。

なんか、凄く緊張してきた。
明日行くのに今から凄く。

そう思ってると

「そんな緊張しなくても大丈夫だよ。」

そう言って潤くんは笑う。

そうこうしてるうちにあたしのお母さんから
電話が来る。

「もしもし?」

「もしもし?愛結?」

「あっ、明けましておめでとう。」

「明けましておめでとう。待ってね今お父さんに代わるから。ほら、お父さん!」

「もしもし。」

相変わらずぶっきらぼうな父。

「もしもしお父さん?明けましておめでとう。」

あたしのお父さんという言葉に潤くんが反応してるのがわかった。

「明けましておめでとう。」

父はあたしには甘い方だが

昔からぶっきらぼうで無口で

何も言わない父だった。

1回だけいつも怒らない父が怒ったことがある。

それは、高校生のとき

毎日のように遊び呆けて1週間帰らなかったら突然どこから駆けつけたのか友達の家にやってきて、あたしのことを怒鳴り散らし
挙げ句の果てに平手打ちをした。
遊ぶのは構わないけど、連絡だけは入れろと。母さんが心配するだろと。

それから、あたしは遅くなるときや泊まるときとかは絶対連絡をいれるようにしていた。

この仕事をやるときも、お父さんもお母さんも敢えて反対はしなかった。

父は新年の挨拶をしたらすぐ母に代わってしまった。

「もうおとうさんったら。あっ愛結?潤くんいるかしら?」

「あーうんいるよ。ちょっと待ってね」

潤くんに電話を代わる。

潤くんは新年の挨拶をしたあと、なにか母とはなしていた。

そしてまたあたしに代わる。

「もしもし?愛結、向こうのおうちいったらちゃんとするのよ。粗相がないようにね」

「わかってるよ。」

そう言って電話を切った。

やっぱり父は潤くんとは話さなかったんだ。

「お母さんなんて?」

あたしが言うと

「ん?俺んちに行くって聞いたから心配してるって。そんで、ゴールデンウィークにお邪魔させて貰うことも言ったりしたよ。」

「あっ、そうなんだ。」

「うん。よし、これで全部だね。」

そう言ってキャリーバッグを閉めた。

「愛結、電話なってるよ」

お雑煮を二人で食べてると潤くんが
携帯を渡してきた。

「あっごめん。ありがと。」

携帯を見ると玲奈からで

「はいはい?どーした?」

「もしもし?なんかさ…亜季と喧嘩してでてきた。」

と、電話口の向こうで泣いてる玲奈がいた。

「は?いまどこ?」

あたしは慌てる。

そんな様子に潤くんはどうした?と聞く

「潤さんちの近く…」

玲奈がそう言ったから

「待ってね今したおりるから。」

そう言って電話を切った。

「玲奈が、亜季ちゃんと喧嘩して飛び出してきたみたいで、下にいるって。」

「は?」

「ちょっと下行ってくるね。」

「家の中連れてきなよ?妊娠してるんだしこんな寒い中いたら大変だよ。」

潤くんはそう言ってあたしを送り出した。

エントランスにおりると玲奈はちょこんと座っていて、泣いていた。

「玲奈。」

あたしがそう言うとこっちをみて

「愛結…」

ボロボロと泣いててあたしは玲奈をつれて部屋まで戻った。

ホットミルクを渡して
座らせる。

「なにがあった?」

あたしがそう言うと
玲奈は唇をぐっと噛み締めて
言葉につまりながら言った。

妊娠したから、仕事を辞めろと言われて
そんなすぐには辞められないと言うことを
言ったら、亜季ちゃんは子供大事じゃねぇのかって怒り出して自分の仕事はどうなんだ昼の仕事なんてしてなくてどうするつもりなのかと怒りに任せて言ったら仕事に口出すなとやってらんねぇからでてけって言われたと。

「とりあえず、亜季さんとちゃんと話した方がいい。」

潤くんは一通り話を聞いたあと
そう言った。

「そうだね。玲奈、お雑煮食べれる?つわりとか大丈夫?」

玲奈はこくんとうなずいた。

「あたし、妊娠で自分が変わるのが凄く嫌で。なんか、食べてないと気持ちが悪くて凄く食べちゃうし…それが怖くて。しかもなんか無駄に悲しくなったり…。」

そう言ってポロポロまた泣く。

「愛結ごめん、ちょっと電話」

そう言ってお雑煮を用意してたら潤くんが携帯を見せて言ってきた。

そこには亜季さんってうつってた。

あたしは頷いてお雑煮を玲奈へ持っていく。

玲奈は妊娠したことが嫌なんじゃない。
ただ、今までとはがらりと変わったこの状況が受け入れられないだけで。

まだ、心が追い付いていないだけ。

暫くすると潤くんが戻ってきて

「玲奈ちゃん、今から亜季さんが迎えに来るから。ちゃんとはなそう?」

そう言った。

「…。亜季が悪いわけじゃないの。それはわかってるんだけど…」

お雑煮を口の中に入れながらまたポロポロと泣く。

「わかったから。ちゃんと噛んで食べてね」

あたしは玲奈の背中をさすった。

暫くしてから、下まで潤くんが亜季ちゃんを迎えに行く。

部屋へ入ってきた亜季ちゃんは息をきらしながら慌てていて

「玲奈。ごめん。」

そう言って玲奈の事を抱き締めた。

「俺、夜の仕事代表辞めるから。昼間の仕事見つけるから。」

「辞めてほしいわけじゃ…」

「いや、そろそろケジメつけたいし。」

玲奈たちが話してる間あたしたちはそっとその場を離れベランダへと出た。

「さむっ!」

「ほんとだねー笑でもなぜか気持ちいい」

「俺も…そろそろ夜を上がろうかな」

「え…?」

元旦の空は美しくてそんな言葉を投げた潤くんをあたしは息を飲んで見る。

「いや、そろそろ身を固めるかなと。」

嬉しい…嬉しいんだけど。

あたし今どんな顔をしてる?

怖い。またあの時みたいになるのが。

「俺は、あいつとは違うよ。」

そう言って悲しそうに笑った。

あ、まただ。比べたことわかってて

潤くんを傷つけてる。

「ごめん。違うよいや違わないけど…」

あたしがそう言うと

「ん」

とあたしの頭をくしゃくしゃっとした。

「潤、帰るわ」

亜季ちゃんはベランダのドアをあけ、あたしたちに言った。

「ごめんね愛結と潤くん」

そう言って、玲奈はあたしに抱きつく。

「玲奈、身体無理しないでね」

あたしがそう言うと

「愛結もね。」

と、あたしに可愛い笑顔を見せる。

玲奈と亜季ちゃんは揃って帰っていった。

潤くんは、あたしの前からいなくならない。

そう思ってもどこかであたしはきっと

その恐怖から抜け出せないでいて。

そんな中途半端な気持ちがあったからこそ

あんな酷いことができたんだと思う。

しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

私に告白してきたはずの先輩が、私の友人とキスをしてました。黙って退散して食事をしていたら、ハイスペックなイケメン彼氏ができちゃったのですが。

石河 翠
恋愛
飲み会の最中に席を立った主人公。化粧室に向かった彼女は、自分に告白してきた先輩と自分の友人がキスをしている現場を目撃する。 自分への告白は、何だったのか。あまりの出来事に衝撃を受けた彼女は、そのまま行きつけの喫茶店に退散する。 そこでやけ食いをする予定が、美味しいものに満足してご機嫌に。ちょっとしてネタとして先ほどのできごとを話したところ、ずっと片想いをしていた相手に押し倒されて……。 好きなひとは高嶺の花だからと諦めつつそばにいたい主人公と、アピールし過ぎているせいで冗談だと思われている愛が重たいヒーローの恋物語。 この作品は、小説家になろう及びエブリスタでも投稿しております。 扉絵は、写真ACよりチョコラテさまの作品をお借りしております。

【完結】離縁されたので実家には戻らずに自由にさせて貰います!

山葵
恋愛
「キリア、俺と離縁してくれ。ライラの御腹には俺の子が居る。産まれてくる子を庶子としたくない。お前に子供が授からなかったのも悪いのだ。慰謝料は払うから、離婚届にサインをして出て行ってくれ!」 夫のカイロは、自分の横にライラさんを座らせ、向かいに座る私に離婚届を差し出した。

メリザンドの幸福

下菊みこと
恋愛
ドアマット系ヒロインが避難先で甘やかされるだけ。 メリザンドはとある公爵家に嫁入りする。そのメリザンドのあまりの様子に、悪女だとの噂を聞いて警戒していた使用人たちは大慌てでパン粥を作って食べさせる。なんか聞いてたのと違うと思っていたら、当主でありメリザンドの旦那である公爵から事の次第を聞いてちゃんと保護しないとと庇護欲剥き出しになる使用人たち。 メリザンドは公爵家で幸せになれるのか? 小説家になろう様でも投稿しています。 蛇足かもしれませんが追加シナリオ投稿しました。よろしければお付き合いください。

私だけが赤の他人

有沢真尋
恋愛
 私は母の不倫により、愛人との間に生まれた不義の子だ。  この家で、私だけが赤の他人。そんな私に、家族は優しくしてくれるけれど……。 (他サイトにも公開しています)

せっかく傾国級の美人に生まれたのですから、ホントにやらなきゃ損ですよ?

志波 連
恋愛
病弱な父親とまだ学生の弟を抱えた没落寸前のオースティン伯爵家令嬢であるルシアに縁談が来た。相手は学生時代、一方的に憧れていた上級生であるエルランド伯爵家の嫡男ルイス。 父の看病と伯爵家業務で忙しく、結婚は諦めていたルシアだったが、結婚すれば多額の資金援助を受けられるという条件に、嫁ぐ決意を固める。 多忙を理由に顔合わせにも婚約式にも出てこないルイス。不信感を抱くが、弟のためには絶対に援助が必要だと考えるルシアは、黙って全てを受け入れた。 オースティン伯爵の健康状態を考慮して半年後に結婚式をあげることになり、ルイスが住んでいるエルランド伯爵家のタウンハウスに同居するためにやってきたルシア。 それでも帰ってこない夫に泣くことも怒ることも縋ることもせず、非道な夫を庇い続けるルシアの姿に深く同情した使用人たちは遂に立ち上がる。 この作品は小説家になろう及びpixivでも掲載しています ホットランキング1位!ありがとうございます!皆様のおかげです!感謝します!

【完結】どくはく

春風由実
恋愛
捨てたつもりが捨てられてしまった家族たちは語る。 あなたのためだったの。 そんなつもりはなかった。 だってみんながそう言うから。 言ってくれたら良かったのに。 話せば分かる。 あなたも覚えているでしょう? 好き勝手なことを言うのね。 それなら私も語るわ。 私も語っていいだろうか? 君が大好きだ。 ※2025.09.22完結 ※小説家になろうにも掲載中です。

神託の聖女様~偽義妹を置き去りにすることにしました

青の雀
恋愛
半年前に両親を亡くした公爵令嬢のバレンシアは、相続権を王位から認められ、晴れて公爵位を叙勲されることになった。 それから半年後、突如現れた義妹と称する女に王太子殿下との婚約まで奪われることになったため、怒りに任せて家出をするはずが、公爵家の使用人もろとも家を出ることに……。

【完結】20年後の真実

ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。 マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。 それから20年。 マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。 そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。 おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。 全4話書き上げ済み。

処理中です...