昆虫食の末路

ゆっち

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4.アレルギー

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「良かったね。弁当持ちで。」


普段口数の少ない峰岸くんが私に話しかけてきた。


「あ、うん。だね。
いくら環境の為って言ってもちょっとアレ食べるの抵抗あるよねー。」


ガチャガチャ。

寸胴鍋が運搬台車で運ばれ、給食の配膳が始まった。


いつもと同じ、給食のいい匂いがする。


「峰岸くんもアレルギー持ちだっけ?」

いつも給食でエビが出る時は、ひとりでここで食べていたので不思議に思った。


「えーと。
まあ、軟体アレルギーを持ってるから交差抗原性で誘発アナフィラキシーの原因する物質は避けた方が良いと思って、弁当持ってきた。(早口)」


「へー。(よくわからない)」

峰岸くんは、難しい言葉を使うから私は内容理解できてないけど、取りあえず頷いておいた。


今日のメニューは、玄米、カレー、マカロニサラダ、牛乳、フルーツヨーグルトだ。

王道で人気のメニューに昆虫粉末を入れてくるあたり、なんかずるいなーって感じる。

しかも、カレーの中に入っているらしい。
これなら味も見かけも匂いもわからないんじゃないかな?

現に、いつも通りの食欲をそそる匂いが教室中に漂っている。


「こんなの、ふつうに言われなきゃ全然わかんないじゃん。」


「でも、入ってると思うと食べられないよ...。」


「カレーならいけるかも...。」


などパーテーションの外側から様々な声が聞こえてきた。


「翠川さんはさ、これ本当に環境の為だと思う?」

向かいに座る峰岸くんは、私に質問をしてきた。


「え?環境の為でしょ?
昆虫食はエコなんでしょ?先生そう言ってたよね。」

「僕はそう思わないんだよね。」


峰岸くんは下を向いてそう呟いた。
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