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1章
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掃いても掃いてもどこからか出てくる砂埃を見ていると、ため息も無限に出てくる。
「なあ。下駄箱と玄関の掃除って、やる意味あんの?」
叶太が独り言のようにつぶやくと、傘立ての隅を箒で掃いていた寺嶋が「俺に聞くな」とずれた眼鏡を直しながら答えた。眼鏡をかけていて一見頭が良さそうに見える寺嶋だが、視力低下の原因はゲームのやりすぎらしい。
「だってさー、さっきから帰る人が通るたびに砂が落ちてんじゃん。そもそも放課後なんて、一番人が玄関使う時間じゃん。なのにその時間に被せて掃除っておかしくね?」
「じゃあ朝のホームルーム前にやれって言われたら?」
「それは無理すぎ。朝起きれん」
「じゃあいつ掃除するんだよ」
「うーん、全校生徒が帰ったタイミングとか?」
「掃除当番になったらその時間まで残んの? 帰宅部辛くね?」
「そういえばオレ帰宅部だったわ……」
寺嶋が「オレもだ」と言い、生産性のないこの話は終わった。
スノコの下まで先生のチェックが入らないとはいえ、スノコの下までちゃんと箒で掃かないと砂埃は永遠に出てくる気がする。まあ、自分には関係ないことだけど。
ちょうど帰宅する生徒が途切れたタイミングがあったので、掃除当番の寺嶋とせっせと手を動かした。三和土の掃き掃除が終わり、それは下駄箱を雑巾がけしているときだった。
ギシッ……とスノコを踏む音がして、叶太は振り返った。そこにいたのは、叶太が乗っているスノコに恐る恐る片足を乗せている男子生徒だった。叶太の視線に気づくと、男子生徒は申し訳なさそうに頭をペコッと下げた。
「あ、すみません」
学年によって色分けされているネクタイの色が赤……ということは、あの可愛くない幼なじみと同じ二年生か。そういえば青と一緒にいるところを見たことがある気がする。
細見の体に、下がった眉と目尻は気の弱そうな小型犬をちらつかせる。実際は自分より目線が高く、背も高いのだろう。けれど青に見慣れているせいか、背が低く見えた。
「あの……玄関通りたいんですけど、靴取ってもいいですか?」
二年男子はビクビクしながら叶太の様子を窺ってきた。叶太は部活にも入っていないし、最高学年になったところで先輩面できる相手がいない。唯一見知った顔の後輩は青だし、急に現れた年下に敬語を使われて悪い気はしなかった。
「もちろん。ここ玄関よ?」
思いのほか気のいい先輩っぽい声が出てしまう。余裕のある先輩風な笑顔も一緒に添えると、二年男子は「え、あ、でも」と目を左右に動かして口ごもった。
「い、今掃除してましたよね。せっかくきれいにしたばかりなのに申し訳ないです……」
「なに言ってんの! 玄関がきれいな方が気持ちいいっしょ?」
「は、はあ」
「いいからいいから、気にしないで堂々と通りな~」
二年男子はもう一度「すみません」と腰を低くして断ると、自身の下駄箱からローファーを取り出した。スノコの脇にちょこんと置いた靴に足を入れてから、もう一度こちらを振り返ってペコッと頭を下げた。
白い目でこちらを見てくる寺嶋を無視し、
「気をつけて帰れよ~」
と手を振る。
掃いても掃いてもどこからか出てくる砂埃を見ていると、ため息も無限に出てくる。
「なあ。下駄箱と玄関の掃除って、やる意味あんの?」
叶太が独り言のようにつぶやくと、傘立ての隅を箒で掃いていた寺嶋が「俺に聞くな」とずれた眼鏡を直しながら答えた。眼鏡をかけていて一見頭が良さそうに見える寺嶋だが、視力低下の原因はゲームのやりすぎらしい。
「だってさー、さっきから帰る人が通るたびに砂が落ちてんじゃん。そもそも放課後なんて、一番人が玄関使う時間じゃん。なのにその時間に被せて掃除っておかしくね?」
「じゃあ朝のホームルーム前にやれって言われたら?」
「それは無理すぎ。朝起きれん」
「じゃあいつ掃除するんだよ」
「うーん、全校生徒が帰ったタイミングとか?」
「掃除当番になったらその時間まで残んの? 帰宅部辛くね?」
「そういえばオレ帰宅部だったわ……」
寺嶋が「オレもだ」と言い、生産性のないこの話は終わった。
スノコの下まで先生のチェックが入らないとはいえ、スノコの下までちゃんと箒で掃かないと砂埃は永遠に出てくる気がする。まあ、自分には関係ないことだけど。
ちょうど帰宅する生徒が途切れたタイミングがあったので、掃除当番の寺嶋とせっせと手を動かした。三和土の掃き掃除が終わり、それは下駄箱を雑巾がけしているときだった。
ギシッ……とスノコを踏む音がして、叶太は振り返った。そこにいたのは、叶太が乗っているスノコに恐る恐る片足を乗せている男子生徒だった。叶太の視線に気づくと、男子生徒は申し訳なさそうに頭をペコッと下げた。
「あ、すみません」
学年によって色分けされているネクタイの色が赤……ということは、あの可愛くない幼なじみと同じ二年生か。そういえば青と一緒にいるところを見たことがある気がする。
細見の体に、下がった眉と目尻は気の弱そうな小型犬をちらつかせる。実際は自分より目線が高く、背も高いのだろう。けれど青に見慣れているせいか、背が低く見えた。
「あの……玄関通りたいんですけど、靴取ってもいいですか?」
二年男子はビクビクしながら叶太の様子を窺ってきた。叶太は部活にも入っていないし、最高学年になったところで先輩面できる相手がいない。唯一見知った顔の後輩は青だし、急に現れた年下に敬語を使われて悪い気はしなかった。
「もちろん。ここ玄関よ?」
思いのほか気のいい先輩っぽい声が出てしまう。余裕のある先輩風な笑顔も一緒に添えると、二年男子は「え、あ、でも」と目を左右に動かして口ごもった。
「い、今掃除してましたよね。せっかくきれいにしたばかりなのに申し訳ないです……」
「なに言ってんの! 玄関がきれいな方が気持ちいいっしょ?」
「は、はあ」
「いいからいいから、気にしないで堂々と通りな~」
二年男子はもう一度「すみません」と腰を低くして断ると、自身の下駄箱からローファーを取り出した。スノコの脇にちょこんと置いた靴に足を入れてから、もう一度こちらを振り返ってペコッと頭を下げた。
白い目でこちらを見てくる寺嶋を無視し、
「気をつけて帰れよ~」
と手を振る。
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